入寮
並行して掲載してると時間の割き方難しいけど、どっちも週一くらいで新作出せたらいいなぁ~、とか思ってます
前回も記載してますが、ちょいちょい掲載済みの加筆はします。たまに前書きで宣伝予定です
入学式、オリエンテーションと一通りの出来事が終わりあっという間に放課後となる。
荷物をまとめて教室を出ようとすると凛に声をかけられる。
「月島くん、よかったらこの後みんなでお茶でもしない?親睦を深める意味でも」
「ありがとう水戸部。でも今日寮に荷物が来る予定で」
「あ、そうか今日から編入だもんね。ならまた来週でも行きましょう?」
「悪いな。じゃあまた明日」
「うん、また明日~」
凛と別れ、事前にもらった地図をアプリで確認する。
日本全国全ての学園都市には絋人のように都市外から入学したものに向けて学生寮と言うものが定められている。第三学園都市の場合人口も多いことがあり、大まかに東西南北の位置に計4つの寮が建設されている。また、どこに入るかはランダムらしい。聞くところによれば寮自体は男女ともにいるとの事であった。一部の特例を除けば同性同士で相部屋らしいが、首席特権として2人分の部屋を1人で宛がわれていると事前に聞いていた。
元々収集癖などもないが、同室者が居ないのであれば修練なども集中して行えるのでありがたいと思っている。
学舎から10分程度歩いたところに絋人が入る【東都寮】が見えた。
コンクリート製で3階建てのアパートのような作りをしており、エントランスにはツナギを着て煙草を吹かしている白髪の男性がいた。恐らく守衛だろうと思い声をかける。
「すみません、今日から入寮させてもらう月島絋人ですが」
「ん?あぁ君が月島くんか。儂は藤原、東都寮の管理人兼守衛さ。まぁまずは寮のルールと寮長を案内する。着いてくるといい」
藤原と名乗った男はすぐに煙草の火を消し、ポケットに忍ばせた灰皿に吸い殻をしまいこむ。
藤原に着いていくと、客間に通される。
「じゃあ寮長を呼んでくる。少し待っていてくれ」
そう言うとスマホを取り出し廊下に出ていった。
寮の客間とは言え、流石は学園都市管轄と言うべきかちょっとした会合なら開けそうなくらい立派な広さと備品の数々だ。実際今座っているソファーもかなり座り心地は良いと言える。
部屋中を見渡していると藤原が入ってくる。
「待たせたな、すぐに来るそうだ」
「ありがとうございます。所で俺以外で入ってくる人は居ないんですか?」
「いるのはいるが、大抵3月半ばには入ってることが多いから説明済みだ」
「すみません、俺一人のために」
「いやいや気にするな。皆事情がある。それに説明するって言っても大したことはない。それほど時間もかからんし問題はない」
そう言うと藤原は煙草に火をつけだす。
ふぅーっと煙を吐き出すと絋人を改めて一瞥する。
「しかしこのタイミングで入寮とは珍しいな。確か今日は入学式のハズだろう?今日は実家から来たのか?」
「はい。都市自体に6時くらいには到着して、少しだけ街を見てから登校してきました」
「そうかい。まぁそれほど見れてないだろうが、中々悪くないだろう?」
「ええ、それはもう。俺の実家は結構山の中にあるんでここまで色々ある街と言うのが新鮮です」
するとコンコンとノックがする。
そして入室した人物を見て絋人は少し驚いた。
「失礼します。お、月島くんじゃないか」
「え、小金井さん?ってことは小金井さんが寮長を?」
「そうだよ。ここでもキミと会えるのは嬉しいね」
「何だお前達もう面識あるのか」
「あれ藤原さん知らない?彼は高等部1年の首席だよ。だから今日既に顔合わせ済みなんだよ」
「そうかい、なら話は早い。じゃあ寮のルールについて説明しようか」
説明が終わったところで鍵を渡された。
「それがお前さんの部屋の鍵だ。失くすんじゃないぞ。それと荷物は部屋に置いてあるから確認してくれ。万一何か無かったり不備があれば部屋にある電話から管理人室に電話してくれたらいい」
「ありがとうございます」
どうやら絋人の部屋は3階の角部屋らしい。
解錠し扉を開く。
元々2人で入る前提であるためか玄関から広目の設計になっているようだ。
リビングルームは10畳ほどと寮にしてはかなり大きいと言えよう。その上洋室が1つにロフトもある。
バスルームもシャワーだけでなく1人用ではあるが浴槽も設置されている。
一学生が住むには十分すぎる豪華な部屋であった。
そしてリビングの中央には絋人が送っていた段ボールが積まれている。
とは言えそれほど多くは持ってきておらず段ボール5個分程度だ。中身としては衣類や食器類など日常生活に必要なものばかりである。
「さて、荷解きするか」
クローゼット、食器棚と設置してあるため荷解きは比較的早く終了した。
「じゃあ、買い物にでも行くか」
食堂はあるが、自炊などもするため買い物に向かうことにした。
先ほど藤原から都市で買い物をするなら制服を着てと学生証を持っていくといいと言われていたのを思いだし、脱いでいたブレザーを再度羽織る。
寮から都市内の商店街までは学園とは逆方向に10分ほど歩いた位置に存在する。
今朝は早すぎたこともあり街の活気はそれほど無かったが、夕方ともなれば人々はかなり活動している。
商店街の入り口の地図を確認していると入り口のすぐそばにある精肉店のおじさんから声をかけられる。
「おーい兄ちゃん、見ない顔だが新入生かい?」
「え?あ、はいそうです」
「おーそうかそうか。ん?兄ちゃん、その腕章はもしかして学年首席かい?」
「一応、そうですね」
「悪いが兄ちゃん、一応学生証見せてくれるかい?」
言われるまま学生証を差し出すと、精肉店のおじさんは驚いた顔をする。
「間違いねぇな。兄ちゃん、ちょっと待ってな」
学生証を絋人に返すや否や、バックヤードに足早に向かう。そして2分ほど待つと、袋に大量の肉を入れてやって来た。
「兄ちゃんお代はいらねぇ、これやるよ」
「え、こんな大量に?何でですか?」
「何たって、もしかして兄ちゃん聞いてないのかい?学園都市内の商店街に置いては騎士及び第三学園生徒はサービスを受けられるんだよ。中でもランクA以上の騎士と高等部の学年首席・次席は特別な待遇があるんだ。店によって違うが、ウチの場合は力をつけて欲しいってことで肉をサービスしてる。だから持っていってくれ」
「そ、そう言うことでしたら。ありがたく頂戴します」
「良いってことよ」
その後、商店街を歩いていると次々と声を掛けられ首席の腕章がバレると先ほどの精肉店のように色々な品のサービスを受け続けることとなった。
肉や野菜や魚で両手が塞がってしまったためこの日は寮に戻ることにした。ありがたいことではあるが、何となく申し訳なさが募ってしまう。その道中、次からは制服を脱いで行こうと静かに決意を固めた。
夕飯は食堂でも良かったが、折角大量に食材を頂いたこともあり部屋に備えてあるキッチンで自炊することにした。間違いなく高級な肉に、新鮮な野菜、そして米とふんだんに用いて豪華なディナーとなった。
片付け、シャワーも終わり後は寝るだけと言う状態にしてベッドに寝そべる。
そして日中梢に言われたことについて考える
(しかし、生徒会か。水戸部は自分の事は気にしなくていいとは言ってくれてたしどうするべきか)
経験としてはしておくに越したことはないだろうが、もしかすれば反発もあるかもしれない。自分はいいが生徒会に迷惑はかけられない。
少なくとも今日のスピーチをした感じでは、バチバチに絋人に対して対抗心を燃やしているものが多いのは明白だった。
「まぁ、何事も経験かな。そう言う組織に属してみるのも案外悪くない」
生徒会と言う絋人にとって未知の組織に加わる決意は何となくついた。
ただ、初日と言うこともあり疲れも溜まっているのか瞼が重たくなってくるのを感じる。
本当ならもう少し荷解きもしたかったが、ここは抗うことなくゆっくりと眠りにつくのだった。




