入学式①
こっちの方がアイデア的には先にありました
色々広げたい予定なので頑張ります
━━━第三学園都市。
関東に拠点を起き設立され日本国内ではかなり古い歴史を持つ。元々が比較的都会ということもあり今や都市全体の発展度合いは他の都市と比べても目を見張るものがある。当然そこに位置する第三学園は国内トップ水準の騎士養成学校である。最大の特徴として中等部から騎士学科の受験が可能であるということ。
どこよりも早い段階で教育を行っている賜物か日本国内で独自に制定された【十二神将】という国内最高の騎士を何人も排出している名門中の名門だ。
当然ながらその分入学、転入倍率は他の学園を凌ぐものがある。
巨大な学舎を臨む校門付近には多くの学生が次々と門をくぐっていく。
特にこの日は入学式ともあり、新入生たちも期待や緊張を胸に登校していた。
短く清潔感のある黒髪に、学年首席の証である腕章を着けた青年━━━月島絋人もその一人である。
(ここが母さんと父さんが通っていた第三学園か。まさか高等部から転入の俺が学年首席とは驚いたが)
恐らく同学年であろう他の生徒達は絋人の腕章を見てザワザワとし始める。
━━━あれが水戸部さんから首席を奪ったって噂の
━━━何者なんだ?見たこと無い顔と名前だが
皆思い思いに絋人に対する興味を持っているようだ。
ただ生憎というべきが、絋人はそれほど他人からの評価というものに固執してない。そのため噂話は全て聞き流し教室へと向かった。
教室に着くや否や好奇の目は更に増える。
聞き流すつもりも否応なしに耳には入ってくる。その中には学園側と癒着しているだの何だの根も葉もない噂話が主であった。
何となく面倒くさいと思っているなか、教室の後方にいた黒髪ロングの女子生徒が声を上げる。
第一印象で言えばとても清楚で真面目そう、と言う感じだった。
「みんな、何をいつまで噂話で盛り上がっているの?彼はこの学年の首席で私たちの仲間になる人よ。いつまでも失礼だと思わない?」
「ご、ごめん凛。でも本当なら貴女が首席だったはずなのに」
(━━━!ってことはこの人が、昨年の首席か)
「ありがとう、でもそんなことは気にしてないわ。私は将来騎士になってこの国の平和さえ守れればいいのだから。首席じゃなくてもちゃんと成績を修めれば騎士になれる。何もそれが全てじゃないだから」
クラスメイトを諭すと入り口で固まっている絋人の元に向かう。
「ごめんなさいね、皆が。知ってると思うけど中等部がこの学園にはあるから結構転入生とか気にしちゃう人も多くて」
「え、いやいや気にしてないですよ。それよりも貴女が昨年の?」
「初めまして月島絋人くん。私は水戸部凛。これから宜しくね?」
差し伸べられた手を握り固く握手をした。
「こちらこそ宜しくお願いします。結構知らないことあるから色々教えてもらえると助かります」
「敬語はいいわよ。もっと砕けた話し方して頂戴。もう他人じゃなく仲間なんだから」
凛の尽力もあり、クラスメイト達から謝罪をされた上で自己紹介も出来た。
思ったよりも早くある程度打ち解けられたのは僥倖だったろう。いくら他人を気にしないタイプの絋人でも完全アウェーの中で首席挨拶はしたくなかったからだ。
それにクラスメイト達は良くも悪くも素直なようでこちらに対するある種警戒感がなくなればフランクに接してくれる人が多いらしい。
また仲介を担ってくれた水戸部凛という存在は目を見張るものがある。
佇まいや、昨年の首席という情報を踏まえても実力が十分にあるだろうと考えられる。
それ以上に驚いたのがコミュニケーションスキルだ。
懐に入るのが上手いというか何というべきか。
暫くクラスメイト達と話をしているとガラガラっと扉が開き教師が入ってくる。
「おはよう、全員揃っているか?」
「先生、真田くんがまだです」
「あ~、まぁアイツは仕方ない。真田以外は居るんだな?っと、君が月島くんか?」
「はい、月島絋人です。えっと先生のお名前は?」
「あぁ悪かった。何せ殆どのヤツが去年からの受け持ちだから自己紹介忘れてた。
高等部1年A組を担当する東冬樹だ。近代騎士学が専門だ。
っと俺の自己紹介はこれくらいで、お前らそろそろ入学式だ。講堂に向かうぞ」
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第三学園は少し特殊な作りをしている。特徴としては学舎自体が円形になっており、その中央に講堂や体育館、実議場などが建てられている。
学園自体の敷地面積もずば抜けており、ドーム球場10個分は優に越す。
おおよそ5分程度歩き講堂に到着する。
やはり国内最高峰の学園という事もあり講堂も十分に広い。ちょっとしたライブやイベントくらいなら余裕で開けるほどの広さを誇っている。
「よし、ここから出席番号順に座っていけ。あ、それと月島は首席の挨拶があるから裏に行くぞ」
「あ、はい」
「頑張ってね月島くん」
「ありがとう水戸部」
凛以外からも応援の声をかけられながら東について行く。
道中東から不意にこう声をかけられる。
「なぁ月島よ。お前さん、父親か母親が騎士だったか?」
「?………えぇ、そうですが。何かありましたか?」
「あー、いや気にするな。ちょっと知り合いに似てたから聞いてみただけだ。マジで他意はない」
「?」
そんなこんな話していると生徒会役員が待機する部屋に案内される。
「じゃあここで待機だ。まぁ先輩の生徒会役員がいるが悪いやつらじゃない。世間話でもしながら待ってるといい」
それだけ伝えると東は離れてしまう。
ノックをして扉を開ける。
「失礼します」
扉を開けると4人ほどの生徒が席についていた。
一番手前に座っていたメガネを掛けたショートカットの女子生徒がこちらに気付き声をかけてくる。
「えっと、君が新入生代表挨拶をする子かな?」
「はい。月島絋人です」
「おお~君か。色々噂は聞いてるよ。何せ水戸部ちゃんを押し退けて首席になったなんて凄いことなんだから。あ、私は生徒会会計の時雨綾よ」
綾に続いて美形の男子生徒もこちらに来る。
「初めまして月島くん。僕は小金井僚祐、生徒会書記をしている。君のような優秀な人材がウチに来てくれるとは嬉しい限りだ。ほら、2人も挨拶しなよ」
「生徒会副会長、天海昴だ。何れお前の実力は試させてもらうぞ月島」
「また戦闘狂が出てるよ昴くん。ごめんね月島くん、彼は強そうな人をみるとついつい吹っ掛ける癖があって」
「い、いえ大丈夫です。それに、俺を認めてくれてるって事ですよね?何れ俺からもお願いします」
昴のある種冷たいとも言える瞳を見ても全くたじろぐことはなく毅然として見つめ返してきた。
「フッ、面白い男だ」
「━━━ええ、本当に。天海くんに睨まれて怯まない人は早々いないもの」
奥の机に座っていた金髪の女子生徒が立ち上がりこちらに向かう。
「ッ!?」
思わず緊張した。
それはその生徒の佇まい、僅かに漏れている魔力の質がこの部屋にいるものの中でも圧倒的に抜けている。
「私は更木梢。第三学園の生徒会長です。よろしくね月島くん」
「宜しくお願いします」
「……………」
梢は金色の瞳を見開きじっとこちらを捉えている。
「あ、あの?」
「あぁごめんなさい。少し気になってね。結構抜けているようで隙がない。昴くんじゃないけど、貴方とは本戦で手合わせしたいわね」
「本戦?って何の事ですか」
「いえ、忘れて頂戴。そのうち意味は分かると思うから」
少し歯切れは悪いがここでこれ以上追求してもあまり意味はないだろうと察し会話を切り上げる。
それからは席に案内され綾がお茶を淹れ主に僚祐と綾から色々な説明や質問を受ける事となった。




