合同見学会①
学園都市に入学して3週間ほどが経過した。
騎士としての座学などもこなしつつ、来る太陽剣舞祭の予選に向けて絋人は準備に余念がなかった。
上級生とも戦える良い機会だとかなり楽しみに思いながら日々を過ごしていた。
そんなある日、朝のホームルームで担任の東からこんな話が出てきた。
「お前達、急遽ではあるが2日後に騎士協会本部の見学会が決まった。魔導、機動ともに参加となる。今回は第四学園も合同となるので他校の同期との交流も深めて欲しい。詳細は放課後までにトークルームにファイルを送るので確認するように」
昼休憩の時間になり絋人、凛、刀士、小夜子という今やお馴染みの面々で食事を共にする。
話題は当然ながら今朝聞いたばかりの合同見学についてである。
「第四学園と合同見学なんて珍しいこともあるね。焔からは何か連絡来てた?」
「ちょっと待てよ?……お、来てる」
「何て来てる?て言うか見ても良い?」
一通り目を通して他人に見られても差し支えはなさそうだったので凛と小夜子に見せる。
ちなみに刀士はそれほど興味はないようでやんわりと断りをいれた。
『おはよう絋人くん。2日後に第三学園と合同で協会本部見学なんてビックリしたよ。今度は授業だけどまた絋人くんと会えるのを楽しみにしてるね』
文面を見ると凛と小夜子はニンマリして絋人を見る。
「ほほう?随分と親しげな文面だね」
「火神さんと連絡はちゃんと取ってるの?」
「何だかんだほぼ毎日かな。主にトレーニングとかのアドバイスが多いけど普通にプライベートな部分の話もしてる」
「順調なようで何よりだわ。でもあれから焔には会ってはないんでしょ?」
「お互い太陽剣舞祭の予選に向けて忙しいからな」
「え、焔も出場するつもりなんだ。あの子の性格的に嫌がると思ったけど」
「色々俺とやり取りするなかで決心が着いたとか何とか言ってたな。めちゃめちゃ離れてる訳じゃないから合同のトレーニングも誘ってみたけど、まだ俺らのトレーニングに着いていけないと思うって断られた」
「あー、焔は割りとちゃんと月島くんの実力を知っているもんね。そう思うのも無理はないか。あ、所でこの間言ってた合同トレーニングだけど今週末にどうかな?先生に聞いたら地下修練場が借りれそうなの」
「俺は良いぞ。真田は?」
「問題ない。準備しておこう」
「今週末なら私も暇だから色々サポートしようか?どんなトレーニングするのか気になるし」
「別に一緒にトレーニング参加してくれていいんだけどな?」
「いや、火神さんと一緒で私も月島くん達に着いていける自信がないから。ひょっとしたら自覚ないのかもだけど君たち明らかに上振れ側の人間だからね?凛も含めて」
「月島くん達は兎も角私は平凡だよ?小夜子とは相性的に有利に進められるだけで。出きる範囲で良いし参加してくれると助かるかな?」
ケロっとした表情で言う凛に対して若干納得はしないが小夜子は一度飲み込む。
「まぁ……出来る範囲で良いなら」
何となく丸め込まれて小夜子のトレーニング参加が決まってしまった。
「あ、て言うか火神さんに返信しないとじゃない?文面考えてあげようか?」
「荒川は絶対要らないことするだろ?」
「まぁまぁここは私に任せなさいな」
「……」
渋々と言った様子でメッセージアプリを開いた端末を渡す。
数十秒考えた後凄まじい早さで文字を打ち込み送信した。
一方その頃、第四学園の食堂では一人焔は悶えていた。
(絋人くんには送ったけど、2日後にまた会えるの嬉しいけどどうしよう。というか折角のトレーニングも思わず断っちゃったし行けば良かったかな?)
そんな様子を正面から見守る人物が一人。
「焔~?さっきから百面相してどうしたの?」
「か、奏ちゃん?いつの間に?」
的場奏。
焔とは対照的に黒髪を腰まで伸ばし身長も170cmオーバーと高身長な美人と言う言葉が似合う焔の親友だ。
「ちょっと前から。何々?愛しのヒロトくんとやらに何か送ってたの?」
「い、愛しのって!?」
「いや、最近の焔って結構ちゃんと恋する乙女の顔してメッセージアプリを使ってるから勝手に男子共が撃沈してるんだよ。お陰で私が焔に近づく連中を退けないで済むから助かるんだけどね」
「そんなことしてたの?」
「だって焔優しいからビシッと断れないでしょ?だから第三学園行ったときだってトラブルに巻き込まれたんじゃない。そのヒロトくんが助けてくれなかったらどうするつもりだったの?」
「そ、それは……」
「もしかしたら大きなトラウマ抱えさせられた可能性だってあるんだから焔はもっと強気に行くこと!分かった?」
「それは……うん、そうだね。ありがとう」
「全く、焔は可愛いんだから気を付けないとよ?それで何か進展でもあった?」
「今日教えて貰った合同見学会楽しみだねって送っただけだよ」
「その割りには表情が豊かだったけど?」
「よくよく考えたらこの間誘ってくれたトレーニングを断ってしまったから都合の良いことしかしてないなぁとか思って」
「ふぅん?ちなみに何で断ったの?」
「流石に今の私じゃ絋人くんのトレーニングに着いていくのは大分厳しいと思ったから。ましてや太陽剣舞祭に向けてのトレーニングで足手まといじゃ悪いし」
「焔らしいと言えば焔らしいけど、そんなこと彼が気にするのかな?」
「え?」
「いや、だって誘ってくれたのってそのヒロトくんからなんでしょ?じゃあ別に一緒にやる分には問題ないんじゃないかな?それに強くなるなら同世代で実力ある人と一緒にするのは悪くないよ?」
「そう言うものかな?」
「そう言うものだよ。そ・れ・に~……色々分からない体で手取り足取り指導して貰って距離を縮めるチャンスかもだよ?」
「!?か、奏ちゃん!?」
「まぁ半分冗談として、焔なら大丈夫だとは思うけど学内予選の5枠に入るためには強くなるに越したことはないでしょ?そう言うチャンスが巡ってきてるなら無駄にする理由はないと思うな。何なら私が参加したいくらいだもん、焔が言うくらい強い人なら」
「……うん、じゃあ次会った時にお願いしてみるね」
「それでよろしい」
暫く食事をしつつ雑談をしているとピロンとメッセージアプリの通知が来る。
「誰から?彼から返信来た?」
「そうだね。えーっと………ッ!?ゴホッ……ゴホッゴホ……!!」
思わず焔は飲んでいたジュースをむせ混んでしまう。
「ちょっと大丈夫焔?」
「ゴ、ゴレ……見て」
そう言ってメッセージアプリのトークを奏に見せる。
『焔とまた会えるなんて嬉しいな。この間誘ったトレーニングの事俺はまだ諦めてないからな。俺は他ならない焔とだからトレーニングをしたいんだ。今度は良い返事が聞きたいな』
「……え、こんな気障なタイプなの?随分と聞いてた話と印象が違うけど」
「……多分絋人くんじゃない。あの時一緒にいた荒川さんって人だと思う」
「それが察しておきながら何でそんな反応よ?」
「だって!ワンチャン絋人くんから本気のメッセージかも知れないって過ったら思わず」
「あ~焔これは重症だね」
「ど、どんな返信したら……」
「こう言う時は明確な言及は避けてスタンプでも送っときな。グッド系とかそう言う感じの」
「そんなので良いのかな?」
「だってそもそもトレーニング参加したくなったんでしょ?なら直接言った方がいいから」
奏のアドバイスもあり焔は無難なスタンプを送りそのやり取りは幕を閉じた。
━━━ほぼ同時刻、第三学園。
「おい荒川、何でこんな気障な文章送ってるんだ?」
「え?まぁ……イメチェン?」
悪びれる様子もなくケロッとしている小夜子。
「チェンジするほどイメージが着いてないと思うんだがな?て言うか数分返事ないから多分困り果ててるだろ」
「まぁまぁそれも含めてコミュニケーションだよ」
「いや、それを今比較的壊されそうになっているんだが?」
「安心しなさいな、いざとなれば私がちゃんとアテンドしてあげるから」
などと話していると焔から返信が。
確認すると文章ではなくウサギのキャラクターが会釈をしているスタンプが返ってくる。
「焔にしては無難な返事だな」
「……これは、多分向こうにも軍師がいるわね」
「軍師?」
「これは火神さんが考えた返信じゃなく、別の人のアドバイスだと思う。なるほど、向こうにも私の同類がいるようだね」
「……なんか知らないけど、良かったな?」
不適な笑みを浮かべる小夜子はスルーし弁当を食べ終えて昼休憩は終了した。
━━━そして2日後。
第四学園の焔は緊張しながら専用バスに揺られていた。
隣に座る奏はまたか、と言ったような視線を送る。
「焔、その調子で大丈夫?もうそろそろ着くんだけど」
「だ!大丈夫……多分」
バスで揺られること凡そ1時間だが、焔に関しては学園を出発する前から緊張マックスと言った様相であった。
そしてバスは協会本部の駐車場に到着し順々にバスから降車していく。
幸いと言うかまだ第三学園の面々はいない様子。
と思ったのも束の間、焔達が乗ってきたバスのとなりに同じ型の車両が到着する。
正面には第三学園の文字が刻まれており、そこから学生が次々降りてくる。
その中には勿論彼の姿もあり。
「いや~専用バスだと早くて良いな」
「そりゃ一番近いし余計なところに停まらないからね。……あ、おーい焔」
いち早く気付いた凛は焔に呼び掛ける。
「凛ちゃん、久しぶり」
二人は駆け寄ると再開を喜ぶ。
そんな凛の後から絋人も焔の前にやってくる。
「久しぶり焔。思ったより早い再会で嬉しいよ」
「ひ、絋人くん……久しぶり」
ほほを赤らめながら挨拶を交わす。
本当は伝えたいことは幾つかあったが全て飛んでしまった。
若干フリーズしてしまう焔。
見かねた奏がフォローをするつもりで後ろからやって来たのだが初めて絋人の姿を確認し少し驚きの顔を浮かべる。
「いやーこの子ったら君と会うのに緊張しちゃって……って、アレ?もしかして絋人?」
「……え、もしかして奏?第四学園だったのか?」
「奏ちゃん?絋人くんのこと知ってるの?」
恐る恐ると言った様子で質問する焔。
「あー、焔の話を聞いてもしかしたらって思ってたんだけどその通りだったわ。知ってるどころか幼馴染みだし。私、絋人と同郷だから」
「そ、そうだったの!?」
田舎の方の出身とは本人も以前話していたがまさか想い人と同郷とは思っておらず驚きが隠せない。
一方の奏は色々合点がいったといういうな表情を浮かべる。
「なるほどね、ヒロトくんは絋人の事だったんだ。なら焔の言ってた話は納得だわ」
「話って、もしかしてこの間の件か?」
「そうよ。て言うか絋人、おばさんから聞いてなかったの?私が第四学園に入学したって」
「何にも。というか奏は中等部で出ていってから一度たりとも帰ってきてないから情報も仕入れること出来てないわけだし。だから驚いてるんだろ」
同郷であり久々の再会もあり話が盛り上がる二人。
どこか少し親しげな雰囲気があり若干ヤキモキする焔だったが見かねた奏が一瞬話を遮ると、耳元でこっそり告げる。
(安心しな、別に狙ってる訳じゃないから)
(!?)
(ちゃんとサポートもしてあげるから)
どうやら奏も二人の行く末を楽しみたいタイプらしい。
再会も束の間、第三第四学園の面々は協会本部の中に案内され見学会がスタートするのだった。




