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相談

三人が待ち合わせ場所に向かったときには既に二人は戻っており待っている状態だった。

一向に気付いた小夜子は手を振って場所をアピールする。

「おーい、遅いぞお二人さん。あれ、その人は?」

「火神焔ちゃん。第四学園の一年生で私の幼馴染みよ。トラブルに巻き込まれたところを月島くんに助けて貰ったようよ」

「え、大丈夫だったの?」

「まぁなんてことない相手だよ」

「いや正直月島くんの心配はしてないから。私が心配してるのはそっちじゃなくて巻き込まれた火神さんと、月島くんにボコボコにされたであろう人なんだけど。大丈夫だった?火神さん」

「私はお陰さまで何事もなく無事です」

「えーっと、全員一撃ずつで沈めたから過剰な攻撃はしてないな。あ、一人は壁にめり込んだけど死んではない。今のところは。ていうか何故俺自身の心配はないんだ荒川」

「え、だって真田くんとのあんな激戦みたらその辺のゴロツキとの小競り合いなんてどう考えたって余裕でしょ?」

「いやいや以外と大変なんだぞ、殺さないように打ちのめすのって。だよな真田」

「月島の言う通りだ。実力差があればあるほど手加減って難しいものだ」

「え、あれでも手加減してたの?」

少なくとも焔の認識では人を壁にめり込ませる攻撃が加減しているとは思わなかったので驚きはさらに強い。

「それよりアイツら何だったんだろうな。改造デバイスとか言うヤツ使ってたけど。地元にいなかったから知らないんだけど機動騎士ってやつか?」

「うーんあの凄惨な現場しか見てないから断言できないけど多分違うと思う。確かに私たち魔導騎士と機動騎士は確執と言うか仲良くはないけど、それでもいきなり学生に因縁を着けるなんて事はあり得ないよ。第一協会の関わらないデバイスの改造は騎士法に反するからね。その改造デバイスっていうのはどんな感じのものだったの?」

「どんな感じって………あった、こんな感じ」

鞄をごそごそして先程回収したデバイスを取り出した。

「え、持ってきたの?何で?」

「何となく流れで。まずいなら返してくるけど」

「………いや、協会に行くしそこで預けたらいいよ」

証拠品を持ち去っているのは正直よくないがこうなった以上協会に助けて貰えば良い。

結論が出た所で協会に向かうことになる。


道中自然と絋人と焔の二人と残り三人という構図が生まれる。

三人の少し前を歩く二人。

その中で焔は絋人に対して積極的に声をかける様子があった。

「月島くんって太陽剣舞祭には出るつもりがあるんですか?」

「一応ね。あと火神さん、俺たち同い年だから敬語はないほうが俺も楽で良いんだけど」

「わ、分かりまし……分かったよ月島くん。その代わり火神って呼ばずに名前の方で呼んで欲しいかな。苗字で呼ばれるの慣れてないから」

「なら焔さんで良いか?」

「うーん、思ったよりよそよそしいから呼び捨てで良いよ」

「じゃあ焔、俺の事も名前呼びで良いよ。じゃないとフェアじゃない」

「そっか、ありがとう絋人くん」

後方でやり取りを見ている三人は二人の雰囲気━━━特に焔の様子が気になるようだった。

(凛、あれってどう思う?)

(少なくとも焔ちゃんからの矢印は脈ありでしょ。多分怖いところを助けてくれたのも相まって余計に。真田くんはどう思う?)

(いや俺に振るな。……だが、普通以上に意識をしているのは間違いないな)

(凛も真田くんも邪魔しちゃダメだからね?アレはじっくり育んでこそ美しいんだから。でもじれったかったらアシストはしていいから)

(了解よ)

(いや、だから俺を巻き込むな)

「て言うか何でちょっと離れて歩いてるんだ?」

「何でもないよ。あ、そこの信号を右に曲がって真っ直ぐ行ったら協会の正門が見えるはずだよ」

言われるまま先に道を進むと正門らしきものが姿を見せる。

その奥には高層ビルが一棟建っている。

「「おぉ~」」

思わず絋人と焔は簡単の声をユニゾンさせてしまう。

遅れること数秒三人も追い付く。

「さぁここが騎士協会です。あ、月島くんは例のデバイス預けないといけないし中まで行くよ」

「了解。えーっと焔はどうする?」

「私も当事者だし同行するよ。何か言われたら私が証言もするし」

「うん、その方がいいかもね。小夜子と真田くんは?」

「じゃあ書物庫に行ってようかな。真田くんも用事がないならどう?」

「なら同行させて貰おうか」

「じゃあ終わったらメッセージ飛ばすけど待ち合わせはエントランスにしようか」

各々の行動が決まったところで一時解散する。

協会本部と言うだけあり内装はドラマで見るような広い作りで警備員やスーツを着た職員達が多くいるようだ。

入口正面にある受付に向かう。

「ようこそ日本騎士協会本部へ。本日はどのようなご用件でございましょうか?」

「第三学園一年の水戸部凛と申します。実は友人がトラブルに巻き込まれ一旦解決はしたんですが、その事後処理の相談がしたくて」

「でしたら6階特務課に向かわれると良いかと思われます。こちらから連絡を入れておきますので向かってください。水戸部様お一人ですか?」

「いえ、私含めて3人です」

「かしこまりました。あちら右手のエレベーターに乗っていただき出て右に進んで下さい。突き当たりを曲がったところにありますので。一応案内板もございますので万が一迷われたらそちらを参考にしてください」

「ありがとうございます」

「代表者様のお名前は水戸部様をお伝えしておきますので特務課の受付で名乗っていただければスムーズにご案内できると思います」

「分かりました、お願いします」

受付にお礼をのべると後ろで待っていた二人のもとに戻る。

「6階の特務課ってところに行ったらいいんだって。あそこのエレベーターで昇ったら良いらしいよ」

凛の誘導でエレベーターに乗り込み特務課を目指す。

「なぁ水戸部はここに何度か来たことあるのか?」

「うん一応ね。実は私のお兄ちゃんがここで働いてるから」

「そうなのか?」

「アレ?そう言えば凛のお兄さんは特務課って言ってなかった?」

「良く覚えてるね焔。だから、結構融通と言うか事後処理は心配いらないよ」

言われた通りの道を進むと特務課の受付が見えた。

凛は先導し自身の名前を告げて対応を求める。

そこまで混雑もしてないようで意外にも三人はスムーズに小会議室に案内された。

部屋自体は十人くらいなら話し合いが出来るくらいの広さで人数のことを考えれば十分な広さだ。

凛、絋人、焔の順に長机の前の椅子に座る。

待つこと数分担当者が入ってくる。

スーツを着た少し髪が紺色の長身の美男子が入ってくる。

「失礼します。本日担当します水戸部切嗣です」

「……水戸部?もしかして?」

「そうだよ。時間を取ってくれてありがとうお兄ちゃん」

「偶然こっちで仕事中だったから俺が請け負っただけだよ。それで、そこの二人は?」

「第三学園一年の月島絋人です」

「第四学園一年の火神焔です」

「月島くんに火神さんね、よろしく。凛が受付で言ってたトラブルに巻き込まれたのはどっちかな?」

「私です」

「じゃあ議事録取るし話してくれるかな?」

「つい30分くらい前なんですが協会本部を探して歩いていたら急に知らない男の人3人が近付いてきて私にぶつかってきたんです。そしたら服が汚れたとか何とか因縁を付けられたんです。ただ、その三人は改造デバイスっていう知らないナイフ型の武器を取って私を襲おうとしたところを絋……月島くんに助けて貰ったんです」

「なるほどね。その改造デバイスってどんな感じだったか写真とか残ってないかな?」

「それなら連中を倒した後俺が回収しちゃったんで今持ってます」

そう言って机の上に例のデバイスを置く。

「これは………最近各都市で出回っている物に似ているな。月島くんが助けたとあるけど怪我とかは?」

「全く。そもそもデバイスの使い方を理解できてなかったっぽいんで多分騎士とかそう言うのに触れてないゴロツキの類いじゃないかと思いますが」

「そうか。ただ今回は何もなかったがあまり一人で無茶はしないように。見たところ君は相当強いと思うけど今回は偶々素人だった可能性が高い。あまり無茶はしないように」

「はい、以後気を付けます」

「それとこのデバイスは鑑識に回したいので回収しても良いかな?月島くんの事はなるべく伏せて被害者の火神さんが防衛のために被疑者から奪って逃げてきたという事にしておく。それと防犯カメラの方もこちらでどうにかするので原則君たちに不利益は講じないように動くつもりだ」

「あ、ありがとうございます」

「他に伝えておきたいこととかあるかな?もしなければこれで帰って貰って構わない」

「ありがとうお兄ちゃん。二人とも大丈夫?」

「俺は特段。焔は?」

「私も大丈夫です」

「なら気を付けて帰るんだよ。何か進展があれば凛に連絡するし待ってて欲しい。それでは失礼させて貰うよ」

そう言うと足早に切嗣は部屋を後にする。

「じゃあ私たちも帰ろうか」

遅れること数分三人も部屋から出て待ち合わせ場所に向かう。

解散してから30分程度経過していたが二人の姿は待ち合わせ場所にはなかった。

「二人ともいないな」

「書物庫って言ってたし色々見て時間がかかってるんじゃないか?」

「それもそうか。小夜子に連絡いれとくしすこしここで待ってようか」

携帯端末で小夜子にメッセージを送る凛。

その横で焔は一つ決心を固めた。

「絋人くん。もし良かったら私と連絡先交換してくれない?」

「いいのか?ありがとう、実はまだ全然こっちで友人とかいないから是非とも」

「あ、ありがとう!えーっとこのコード読んでくれる?」

少しドギマギしながら焔は無事絋人との連絡先交換に成功した。

丁度そのやり取りが終わったと同時に凛も声をかける。

「小夜子達もう少しで戻ってくるって。それと月島くんの連絡先は私も知りたいけど良いかな?」

「勿論」

凛との交換も終えて数分後書物庫に行ってた二人がやってくる。

「いやー待たせてごめんね。思ったより面白い本が多くて」

「いいよこっちも思ったより早く終わったんだし。それじゃあもういい時間だしそろそろ帰る?焔はどうやって来たの?」

「直通の電車だけど」

「じゃあ月島くん、火神さんを駅まで送ってきたらいいよ」

「━━━!そうだね、また何かあっても嫌だし月島くんなら何とかしてくれるでしょ?」

小夜子の意図を汲んだ凛も同調する。

「え、だったら皆で行った方が……て言うか場所知らな━━」

「━━はい!これがマップだよ。丁度良い機会だし道を把握しておくと良いよ。私と小夜子は用事思い出したし先に帰るから。じゃあね焔また今度。ほら真田くんも」

「え、ええ?あ、ありがとう凛ちゃん。またね」

別れの挨拶をするとそそくさと三人はこの場を離れる。

何で俺まで、という刀士の小言は絋人には届かなかった。

ポツンと二人きりになり少し困るのは焔。

焔からすれば思わぬタイミングで気になってきた人と二人きりという状況。

しばしの沈黙の後絋人から切り出す。

「じゃああんまり遅くなってもいけないし駅に向かうか」

「へっ?あーそうだね。道案内よろしくね」

凛から貰ったマップを元に駅まで二人で歩き出す。

「今日はごめんね絋人くん」

「……?何がだ?」

「私のトラブルに巻き込んで余計な時間とか取らせちゃったし危ない目にも逢わすところだったから」

「気にしないで良いって。それにアレくらいなら危険でも何でもないし本当にヤバいなら焔を連れて逃げたし」

「……ちょっとだけ相談しても良いかな?ちょっと重めの話なんだけど」

「いいよ、聞くよ」

「ありがとう。

━━━私ね所謂【エレメンツ】って言われる家系の出なんだ」


━━━【エレメンツ】日本古来より続く騎士の家系の中でも陰陽道に通ずる五行のうち一つの適正が高い家系を指す。各属性ごとに特徴など異なるがどの時代でも最前線に関わる。十二神将創設以来エレメンツが途絶えたことはない。


「でも火神家はここ数十年没落していると言ってもいい状況なの。何故かここ数世代魔導騎士としては不十分な魔力量や適性の低いものばかりが生まれていたの。でも何故か私だけは十分すぎる魔力、適性をもって生まれてきたの。でも今のところ私はそれに見合うだけの実力とかがなくて」

「まだ焦る必要はないんじゃないか?」

「ありがとう。でもね本音を言えば私は戦いとかそう言うのはしたくないんだ。争わずに平和なんて綺麗事だけじゃダメだよね?ましてや古い騎士の家系に生まれてそんな情けないこと言ってたら」

苦笑いしながら口にする焔。

しかし絋人は依然真剣な表情で話を聞き自分なりの回答を伝える。

「そんなことはないと思う。その優しさって言うのは焔の強さだと思うし、俺には無い部分だ」

「そう言ってくれる絋人くんは優しいよ」

「……そうだな、今日初めて会った子にこんなことを言うのは気が引けるけど━━━俺は必要とあらば命を取る覚悟がある」

「い、命を……」

「あぁ。騎士というものを目指す以上命のやり取りはついて回る。俺は霊禍を祓った経験もあるし皆より実戦経験はちゃんと積んでいる。その上で優しさだけじゃ救えないことも痛感している。勿論焔の考えを否定する訳じゃないしその考え方はとても大事だ」

「どうやったら絋人くんみたいに強くなれるの?」

「それは分からない。でもまずは焔がどうしたいかを考えるべきだ」

「私がどうしたいか?」

「そうだ。まず焔は争いとかを無くしたいと考えている。それを実現するためには相応の説得力が必要だ。じゃあ何があればいいかと言えば、やっぱり実力だ。焔の場合俺のように命を取る覚悟まで無くても、理想を実現させるためっていう目標があれば自ずと強くなれると思う」

「そう……だね。うん、ありがとう絋人くん。ちょっと気持ちが軽くなったかも。……また何かあれば相談とかしてもいいかな?」

「勿論。俺でよればいつでも」

その後も二人は他愛ない話をしながら駅までの道を少しゆっくり歩いた。

「お、ここが駅か。結構立派な建物なんだな」

着いた駅は所謂都市部にあるお店なども複合するような大型の駅という作りになっている。

「焔電車の時間は?」

「あ、多分10分後だね。……遅れない内に行くね」

「うん、気を付けて」

「ありがとう。今日は絋人くんと出会えて良かったよ。じゃあまたね」

「またな」

焔は少し名残惜しそうにしながら改札をくぐりホームに向かった。

焔を見送った絋人は寮に向かい帰った。



電車に乗り込んだ焔は先ほどまでのやり取りを反芻し少し顔を紅くする。

(あ~いくら舞い上がってたとはいえあんな重めの話を聞かせちゃった。ちゃんと後で謝らないとだけど……真剣に聞いてくれて優しかったな)

端末に追加された『月島絋人』の文字を見ては少しにやけてしまう。

(また会えると良いな)

そんな想いを胸に無事帰宅した。

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