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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第ニ部 武装法人拡大 - 有力都市買収編

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第97章 山越えの誘い ― 炭鉱都市オルテリア

都市バルメリアを再生させた二階堂商会は、次なる都市の可能性として、湖と水の魔力に抱かれたラクリアへと目を向ける。

水と聖性に閉ざされた湖上都市ラクリア。

森の盗賊を打ち負かし、バルメリアと結ぶ交易路を整えた。

 ラクリアの祝宴から、数日が経った。


 湖の街はすっかり平穏を取り戻し、二階堂商会の旗印が再び掲げられる。

 朝霧が晴れる頃、街の通りには馬車の音が戻り、

 湖面を渡る光が新しい一日の始まりを告げていた。


「やっと……静かになりましたね」


 リュシアが帳簿を抱えながら、まだ疲れの残る顔で笑う。


「静かって言っても、ミナがまた酒場の改装を頼んでたぞ」


 ロイが呆れ顔で言う。


「営業戦略ってやつよ。街の景気も上がるでしょ?」

「まぁ確かにな……俺たちの旅は、いつも騒がしすぎる…」

「賑やかさこそ、生命の証でござる」

「ハッ! 静かなんざ商会には似合わねェ!」


 そんな掛け合いを聞きながら、ガロウは馬車の荷をまとめ、ルーチェは朝の魔力測定を終える。

 すっかり馴染んだ彼らの姿を見て、漣司は小さく頷いた。


「……笑う余裕があるなら、次の仕事に移るぞ」


 その言葉に、一同の動きが一瞬で止まる。


「ま、またですか……?」


 ミナが呻くように言う。


「働くうちが華ってヤツだ。ガッハッハ!」


ガロウの豪快な声が返る。


「本当に華なら、たまには休ませてほしいんですけど」


ミナが小声でつぶやいた。



 その日の昼――。

 ラクリア議会の議長が、二階堂商会本部を訪れた。


 湖面を思わせる蒼の外套。

 年輪を刻んだ穏やかな眼差しは、権威よりも理知と誠実さを感じさせる。


「社長殿。この数日間の働き――まことに見事でした」


 応接室に柔らかな声が満ちる。


 「実は、お伝えしたい事がありましてな……」


 議長はそう前置きすると、懐から一枚の古地図を取り出し、机の上に広げた。

 羊皮紙の縁はすり切れ、時の重みを物語っている。

 彼の指が、山脈の向こう――黒く塗り潰された一点をなぞった。


「――ここです。オルテリア」


 その名に、室内の空気がわずかに引き締まる。


「山を二つ越えた先にある都市でしてな。かつては鉱石と魔石の採掘で栄えた、実に豊かな街でした。しかし……」


 議長は一拍置き、言葉を選ぶ。


「……数年前、坑道の最深部が突如“ダンジョン化”し、魔獣が溢れ出したのです」


 静かな説明の裏に、深い無念が滲んでいた。


「私の古い友人からの話ではそれ以来、採掘も止まり……人々は散っていってしまった…」

 

 リュシアが地図に身を乗り出し、冷静に呟く。


「つまり――資源そのものは、今も地下に眠っているということですね」


 議長は小さく頷いた。


「その通り。手付かずのままです」 

「それってさ」


 間髪入れず、ミナが口角を上げる。


「まさにお宝の山ってやつじゃない」


 場の空気が、ほんの少し明るくなる。


「急ぎではありません」


 議長は静かに続けた。


「ですが、もし余力があるなら……一度、訪ねてみていただけないでしょうか。

 あの街が再び息を吹き返せば、ラクリアにとっても大きな希望となります」


 そう言って、彼は封筒を一通、机の上に置いた。

 赤い封蝋。刻まれたのは、ラクリア議会の紋章。


「私の古い友人が、今もオルテリアに残っております。

 これを見せれば……きっと、話を聞いてくれるでしょう」


 漣司は封筒を受け取り、しばし視線を落とす。

 頭の中で、商会の現状、資金、戦力、そして未来を計算しているのがわかった。


「……商会の資金は、決して余裕があるとは言えない」


 静かな声で、しかし迷いなく続ける。


「だが、地下資源を押さえられれば――商会の基盤は、もう一段強くなる」


 顔を上げ、はっきりと言った。


「――行こう、オルテリアへ。」

「決まりね!」


 ミナが勢いよく拳を突き上げる。


「次はダンジョン攻略ってわけダ。腕が鳴るナ」


 ガロウが豪快に笑う。


 ロイは苦笑しながらも、すでに荷の算段を始め、

 リュシアは机に帳簿を並べ、調査項目を書き込んでいく。

 窓辺では、ルーチェが差し込む昼の光を見つめ、ぽつりと呟いた。


「光なき場所に、光を灯す旅……。風情があるでござるな」


 こうして――

 二階堂商会は次なる舞台へと歩みを進める。


 廃れた鉱山都市・オルテリア

 そこに眠るのは、資源か、魔獣か――それとも、新たな時代の火種か。


 

 出立の準備が整った、その夜。

 本部の外は静まり返り、湖面には月が細く揺れていた。


 ――その静寂を割るように、気配がひとつ、近づく。


「……山越えの道を行くつもりか?」


 低く、擦れた声。

 振り向くまでもない。森の番人――ザハードだった。


「そのつもりだ」


 漣司は短く答える。ザハードは顎で夜の闇を示した。


「あの山道は、もう使えねぇ。雪解けと崩落で、道そのものが消えてる。

 地図に残ってるのは……昔の影だ」

「じゃあ、別ルートを探すしかないか……」


 ロイが眉をひそめ、地図を見下ろす。

 ザハードは鼻で笑った。


「無駄だ。この辺りの山は、見た目以上に食わせ者だ。

 霧、落石、魔獣……知らずに踏み込めば、一晩で迷って終わる」


 空気が、重くなる。

 その沈黙を裂くように、彼は続けた。


「だが――抜け道がある」


 全員の視線が、一斉に集まった。


「森の裏手、峡谷沿いの古い獣道だ。人間が使う道じゃねぇが、

 うまく抜けりゃ、山を一つ分は短縮できる」

「そんな道、地図に載ってないわよ?」


 ミナが目を細める。


「載せられるわけがねぇ。潮の満ち引きみてぇに、通れる日と通れねぇ日がある。

 ……知ってるのは、この森で生きてきた連中だけだ」


 その言葉が、事実であることを全員が察した。


「ふーん、信用できるのかしら?」


 ミナの問いは、警戒というより、確認だった。


「お前らを出し抜こうとして森で負けた奴らだぞ」


 ザハードは肩をすくめる。


「二度と、同じ恥はかかねぇさ」


 言い切りだった。誇張も、虚勢もない。ただの現実。

 その言葉に、漣司は静かに笑った。


「なら、頼む」 


 迷いはなかった。


「――森を知る者の力を、借りよう」

「……社長、あんたも不思議な人だな」


 ザハードは呟く。


「敵だった相手を、平然と仲間にする」

「敵かどうかは関係ない」


 漣司は穏やかに答えた。


「誰でも、道を歩く限り――商会の一員になれる」


 一瞬。

 ザハードは視線を落とし、月明かりを踏みしめる。

 そして、ほんのわずかに口元を緩めた。


「……いいだろう」


 低い声に、確かな覚悟が宿る。


「その道――俺が案内してやる。

 俺抜きじゃ、簡単にはオルテリアには辿り着けねぇ」



 翌朝。


 湖畔の街に再び出立の号令が響いた。市民たちが通りに集まり、手を振る。

 ラクリアの子供がロイの服の裾を掴んで離さない。


「また来てね!」

「ああ、約束する」


 ロイは笑い、帽子を軽く掲げた。

 ガロウは兵たちと固い握手を交わし、ミナは商人たちと契約書をまとめ、

 リュシアは最後まで計算を続けていた。

 ルーチェは湖面を見つめ、


「この街はもう、大丈夫でござるな」


 と呟いた。


「次は……ダンジョン、ですか」


 とリシュア。


「今度はちゃんと危険手当つけてよね〜!」


 ミナが叫ぶ。漣司が馬車に乗り込み、静かに一言。


「――行くぞ。次の道は、地の底にある。」


 車輪が軋み、ゆっくりと街を離れていく。

 ラクリアの白い建物が遠ざかり、背後には湖面の輝き。

 

 そして、その先には――


 山を二つ越えた、炭鉱都市オルテリア。

 地の底に眠る、新たな運命が、彼らを待っていた。

お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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