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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第ニ部 武装法人拡大 - 有力都市買収編

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第54章 数字は嘘をつかない ― リュシア編

城壁都市バルメリア。


カストリアの北西にあるオランティア地方の有力都市。人口はカストリアの約五倍と言われる。周辺の肥沃な土地を背景に、豊かな市場と厚い城壁を持ち、城壁都市として名を馳せていた。

 バルメリアの朝。漣司の命を受けた役員たちは、それぞれ街へ散っていった。

 その中で、リュシアは商人組合の記録庫へと向かっていた。彼女の任務は任務は明白だ。

 ――この都市の繁栄が本物かどうか、数字に問いただすことだ。

________________________________________


……私は、リュシア=アークライト。武装法人二階堂商会の副社長。数字にしか心を許しません。


誰がどんな美辞麗句を語ろうと、どれほど立派な理念を掲げようと、言葉は飾れる。嘘もつける。

取り繕うこともできる。

ですが、数字は違う。数字は逃げない。数字は隠れない。

数字は、必ず真実を吐き出す――残酷なほどに。

机に置いた分厚い帳簿を開き、指でなぞっていく。

ページがめくられるたびに、都市の鼓動が聞こえる気がします。

羊皮紙、インク、寄付金の香りに混じる、誰にも知られたくない秘密の匂い。

私は好きだ、この匂いが。数字が嘘をつく時に立ち上がる熱が感じられるからだ。


「……ここが公開されている取引記録ですか」


最初の数ページは、美しい。

収入と支出はほぼ完璧な均整を保ち、商人たちの税納は規則正しく並んでいる。

優等生のノートみたいだ……いや、それ以上に整いすぎている。私は眉をひそめた。


――おかしい。


売上が異様に揃いすぎている。季節の揺らぎすら反映されない均一な増加率。

まるで数字そのものが、そろえられた兵士のように横並びで行進している。

実際の市場を歩けば分かる。こんな均一な伸びなど、ありえない。私は小さく笑った。


「ふふ……やはり、粉飾ね」


見栄えのいい売上の裏で、借金による補填がちらつく。

記録の隙間に滲む赤黒い影――それは数字の出血だ。私の目には、それがはっきりと見える。



さらに奥へと記録をめくる。

古びた羊皮紙の匂いが鼻を刺し、インクの跡が幾度も重ねられた痕跡が指先にざらつく。

私は息を殺し、数字の並ぶ支出欄へと目を滑らせた。


――ここにも、歪み。


公共事業費と名がつけられた莫大な支出。

その額面は都市一つを建て替えられるほど膨張しているのに、付随する明細は――無い。

街路の補修にしては高すぎ、港湾整備にしては記録が曖昧すぎる。


まるで存在しない工事に金を注ぎ込んだようだ。


私は無意識に笑みを漏らしていた。


「……隠すなら、もっと巧妙に隠しなさい。帳簿はあなたたちの欲望を隠してはくれない」


ペンを取り、羊皮紙の端に鋭い文字で走り書きを残す。


(ここ――支出と収入の差額。粉飾のために未来の財政を切り売りしている)


数字の上では黒字に見える。だが実態は、借金で膨らんだ風船にすぎない。

いずれ破裂するのは確定事項だ。


だが――まだ足りない。議会やギルドの重鎮たちを沈黙させるには、この程度の齟齬では弱い。

必要なのは、誰がどこに金を流したか。

あるいは――都市そのものを揺るがす規模の証拠だ。



記録庫を出て市場を歩く。人々の笑顔は賑わっているように見える。

だが、目の奥は疲れている。繁栄を演じるために、誰もが背伸びをしているのね。

私は足を止め、空を仰いだ。


「この都市は、虚飾に満ちている……」


数字は確かにそれを示している。あとは証拠を積み上げればいい。

冷静に、丹念に、私はそれを成すだけだ。



夜。


宿に戻ったリュシアは、机に広げた記録の写しを前にしていた。

冷たい瞳は、確かな確信を宿している。

漣司が抱いた直感――「繁栄は偽り」という予感。

夜闇は静かだった。窓の外では灯火が揺れ、遠くの通りで馬車が石畳を叩く音が律動のように響いている。

だが、リュシアの世界は、机の上だけで完結していた。羊皮紙の束、インクの匂い、数字の列――それらが彼女にとっての戦場であり、武器であり、真実そのものだった。


薄い蝋燭の光が揺れ、帳簿の影が長く伸びる。

リュシアは一枚、また一枚と写しをめくり、そこに潜む嘘の痕跡を拾い集めていく。

増えすぎた支出。不自然に揃った取引高。実体のない投資収益。

そこに流れる数字の癖は、誰よりも数字を愛してきた彼女にだけ見える、蜘蛛の巣のような構造を形作っていた。その答えに、彼女は一歩近づいていた。

帳簿の写しをすべて重ね、リュシアは椅子に背を預けた。夜の冷気が背筋を撫でる。

だが彼女は震えなかった。むしろ――胸の奥で熱が静かに灯り始めていた。


(社長の直感は、やはり正しかった……。この都市の繁栄は張りぼて。数字の表皮を剥げば――腐敗が現れる)


だが、それはまだ予兆でしかない。

都市を揺るがせるには、決定的な証拠、逃れようのない真実が必要だ。彼女は手帳を閉じ、静かに立ち上がった。


「……明日から、さらに深く潜る。隠し金庫。裏帳簿。議会の裏付け。この都市の本当の顔を暴くのは――私の役目」


仄暗い室内で、蝋燭の炎が揺れる。その光が彼女の銀髪を照らし、まるで薄い刃のように輝いた。

リュシアは息を吸い込み、まっすぐと前を見据えた。


「覚悟しておきなさい、バルメリア。あなたを覆う虚飾は――すべて、この手で剥ぎ取る」


その宣言は誰に聞かれることもなく、しかし確かに夜を裂いた。

こうして、二階堂商会と都市バルメリアの信用戦争は、静かに幕を開けた。

お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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