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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第一部 武装法人誕生 - 都市買収編

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第48章 模擬戦・終盤戦 ― 決着

木箱を巡る攻防は、夕闇が迫る中で最高潮に達していた。

候補者チームは何度も突撃を試み、先輩社員の陣をかいくぐり、あと一歩で木箱に触れられるところまで迫った。


「もうひと押しだ!」


ルーチェの光を合図に、炎術師が最後の力を振り絞り火球を放つ。

風術師と土術師も息を合わせ、盾兵の間に隙間を作ろうと奔走した。


「フンッ、甘いなァ! その程度で抜けると思うなヨォ!」


ガロウが大声で叫び、盾兵たちを鼓舞する。

前線で笑みを浮かべ、敵の動きを冷静に読みながら、候補者たちの突撃に的確に対応していた。


「いいゼェ、その力を出し切ってこイ! だが俺たちの壁を破るのは無理ダゾォ!」


声は響き渡り、候補者たちの集中を一瞬乱す。

だがルーチェは微動だにせず、次の指示を送ろうと掌を掲げた。

だが――守備側の先輩社員たちは、経験と練度の差を見せつける。

土の壁は瞬時に立ち上がり、風が突風となって候補者の足元をすくう。

火球は砂袋に吸い込まれ、思い描いた攻撃はことごとく無効化された。


鐘が鳴る。


――日没、試合終了。


場内に重苦しい沈黙が流れる。木箱は守り抜かれ、候補者チームは惜しくも敗北した。



 高台で、漣司が静かに立ち上がった。

 ざわめきに満ちていた訓練場が、彼の動きひとつで息をひそめる。


「結果は――防衛側の勝ちだ」


 その宣告に、観客席の一角から落胆の声がこぼれ落ちた。


「やっぱり新入りじゃ無理だったか……」

「いや、あの娘の光がなければ、あそこまで攻め込めなかったぞ」


 評価が割れる中、漣司は片手を上げ、場を制した。その仕草には迷いがなく、次に放たれる言葉の重みを誰もが悟る。


「だが――試験は、勝敗だけで決まらない」


 漣司の声が、訓練場全体に静かに染み渡る。


「候補者チームは、力任せの突撃から、戦略的な連携と精密な調整へと戦い方を変え、士気を立て直し、最後まで戦い抜いた」


 一人ひとりの顔を見渡し、漣司は断言する。


「法人に必要なのは、その姿勢と資質だ。よって――合格とする」


 一瞬、世界が止まったかのような静寂が落ちた。

 次の瞬間、理解と驚きが重なり合った拍手が、堰を切ったように訓練場を包み込む。

 拍手は長く鳴り止まず、候補者たちは互いに視線を交わし、ようやく安堵の息を漏らした。


 笑顔が広がる中で――ただ一人、ルーチェだけが違っていた。


 光を宿した手を強く握りしめ、彼女は遠く一点を見据えている。

 勝敗の結果には一切の安堵を見せず、その背筋には何か重く、鋭い覚悟が刻まれていた。



 ルーチェが、すっと一歩前へ出た。


 ざわめきに満ちていた訓練場が、不意に静まり返る。

 彼女は琥珀色の瞳を伏せ、深く息を整えると、厳粛そのものの面持ちで胸に手を当てた。


「――拙者の光、未だ至らず。箱を奪えなんだは、すべて拙者の責にござる」


 一語一語、逃げ場を断つように言い切り、顔を上げる。


「ここに――切腹いたす!」


会場が凍りついた。


「はああああ!?!?!?」


最初に破裂したのは、ミナの悲鳴だった。両手で頭を抱え、信じられないものを見る目で叫ぶ。


「ちょ、ちょっと待ちなさいってば! なに言ってんのよアンタ! いきなり何の芝居よ!?」


ロイは青ざめて駆け寄り、両手を大きく振り回す。


「ま、待って待って! 模擬戦だよ!?試験だよ!?責任とかじゃないから!」


 一方――

 ガロウは、腹を押さえたまま地面に転げ落ちていた。


「ハハハ!やべェよ社長! この娘ァ本気だ! 本気で腹ァ切る気だゾォ!」


 だがルーチェは、微動だにしない。

 真顔のまま、腰の短剣へと手を伸ばす。その所作は、迷いがなく、あまりにも様式ばっていて――逆に怖い。


「社長殿、拙者、潔く――」


「やめろ!」


 鋭い声が、空気を叩き割った。

 漣司が一歩踏み出し、手を振り下ろす。声には威圧がありながらも、どこか呆れと苦笑が混じっていた。


「模擬戦ごときで命を絶つ者など、法人に必要ない。むしろ笑い者だ、短気も甚だしい」


 ピタリ、と。


 ルーチェの動きが止まる。訓練場に落ちた静寂は、さきほどの喧騒よりも重かった。

 全員の視線が、短剣を握る彼女の手と、漣司の背中に集まる。


「……社長殿?」


 琥珀の瞳が、わずかに揺れた。短剣を握る指先に、かすかな震えが走る。


「お前が自分の未熟を悔いる気持ちは理解できる。だがな――」


 漣司は歩み寄り、その手を包み込むように押さえた。


「命を賭して示す覚悟は、ここでは違う。生きて積み上げろ。失敗も、後悔も、その全部をな」


 場にいた全員が緊張から一気に笑いへと転じ、騒然とした歓声が上がった。


「そ、そういうことなら……」


ルーチェは頬を赤らめ、しゅんと短剣を収めた。


「か、かたじけない……」


 観客席からも安堵の笑いが漏れる。漣司は軽く頭を振り、しかし満足げに息をついた。


「……これでいい。覚悟は立派だが、行動は制御せねばな。命あってこその挑戦だ」


 ミナは腹を抱えて笑い、ロイはようやく呼吸を整える。

 ガロウに至っては、床に転がったまま涙を流し、腹筋崩壊寸前だった。


 こうして――

 後に語り草となる「伝説の切腹未遂事件」は、血を見ることなく幕を下ろしたのである。



 模擬戦は、ついに終幕を迎えた。

 激しい攻防の余熱がまだ訓練場に残る中、候補者五人は整列し、正式に「合格者」として迎えられることが告げられる。


 安堵と達成感が広がる――その直後、漣司は一歩前に出て、静かに、しかしはっきりと付け加えた。


「ただし、評価は一律ではない。実力主義だ」


 その言葉に、空気が引き締まる。


「――ルーチェ=ヴァルノア。お前は特別だ」


 名を呼ばれ、ルーチェの背筋がわずかに伸びる。


「光で仲間を繋ぎ、混乱の中でも連携を維持し、戦局そのものを導いた。単なる支援ではない。指揮と判断、両方を担っていた。よって――役員待遇で迎え入れる」


一瞬の静寂。

 次の瞬間、観客席がどよめいた。


「役員……!?」

「いきなりそんな評価が出るのか……!」


 候補者たちも思わず息を呑む。

 残る四人には平社員としての採用が告げられたが、その表情に不満はない。

 むしろ、納得と誇りが浮かんでいた。


「当然だよな……あの光がなきゃ、俺たち途中で崩れてた」

「戦ってる最中、何度も助けられた。あれはもう指揮官だった」


 称賛の声が重なる中――

 当のルーチェだけは、微笑まなかった。

 琥珀色の瞳は静かに光を宿し、表情は引き締まったまま。

 そこにあるのは喜びよりも、評価を受け止める覚悟だった。

 箱を奪えなかったという事実。

 そして、自ら切腹を覚悟した、あの一瞬の厳粛さ。

 敗北の責を一身に背負う覚悟は、まだ彼女の胸に残っている。

 だからこそ、この評価は甘美な褒美ではなく――次の責務として、彼女に刻まれていた。

 その背筋から伝わる張り詰めた気配に、気づく者は少ない。

 観客席と仲間たちは、笑いと驚きに包まれている。


 ――光の導き手

 ――そして、伝説の「切腹少女」


 その二つの顔を併せ持つ存在として、

「ルーチェ=ヴァルノア」の名は、この日の記憶と共に深く刻み込まれた。

 笑いと驚き、そして一抹の緊張を残したまま。

 武装法人は、新たな一歩を――静かに、だが確実に踏み出す。


笑いと驚き、そして一抹の緊張を残して、新たな武装法人の一歩が静かに、しかし確実に踏み出された。

お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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