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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第一部 武装法人誕生 - 都市買収編

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第47章 模擬戦 ― 中盤戦

夕日が赤々と訓練場を染め、模擬戦は佳境に差しかかろうとしていた。

候補者チームは序盤の勢いで木箱に迫ったものの、守備側の反撃は熾烈を極めた。


「押し込むゼ!一気に突破するゾォ!」


大柄な体躯を揺らし、ガロウが拳を振り上げて叫ぶ。

その存在感だけで周囲の空気が震え、仲間たちの士気を押し上げる。

木箱を守る先輩社員たちは重い盾を構え、土嚢や簡易の柵を前線に並べて防御を固める。

候補者たちの魔法攻撃も、物理的な障害物に阻まれ思うように進まない。


「ぐっ……! せっかく崩した壁が元に戻っちまう!」


風術師は焦り、出力を上げすぎた。

突風が吹き荒れ、味方の炎まで散らし、ルーチェの髪を大きく揺らす。


「な、何をしておる! 拙者の光が乱れ……っ!」


ガロウは大柄な体を揺らし、歯を見せて笑った。


「おおっとォ! 混乱してるナァ! その隙、もらッたゼェ! 前に出ろォォォ!」


彼の声が響き、盾兵たちの前進が一気に加速する。

狙いを定めかねる候補者たちの様子を、ガロウは満足げに見下ろしていた。

眩しい光が拡散し、狙いが定まらなくなる。敵の投石が飛び、土埃が舞い上がる。

候補者たちは一瞬の隙を突かれて、後退を余儀なくされた。



観覧席から、ざわめきが波のように広がった。

先ほどまでの勢いは削がれ、候補者チームは盾の壁に押し戻されている。


「……押し返されたぞ……!」

「やっぱり先輩社員の方が一枚も二枚も上か……?」


期待と不安が入り混じった声が、秋の空気を震わせる。


高台に立つ漣司は、腕を組んだまま微動だにせず戦況を見下ろしていた。

視線は個々の魔法や動きではなく、隊全体の流れを追っている。


「……勢いだけでは突破できんか」


低く、しかし確信を帯びた声。


「だが、それでいい。順調な時に見えるものなど、たかが知れている」


盾兵の壁に阻まれ、足並みが乱れ始めた候補者たち。

誰が前に出るのか、誰が支えるのか、一瞬の迷いが連携の隙となって現れていた。

その様子を見つめながら、リュシアが静かに言葉を添える。


リュシアが視線を候補者チームに向ける。


「逆境に置かれてこそ、人の本質は露わになります。指示を待つだけか、自ら判断するか。仲間を信じるか、己だけを守るか……」


彼女の視線は、混乱の中でも必死に声を掛け合う候補者たちに注がれていた。


「ここでバラバラになるなら、それまで。ですが――混乱の中でも、組織としてまとまれるかが見極めどころですね。協力の精度と判断力が試されます」


漣司が言葉を継ぐ。


「そうだ。ここからが試験の本質だ。力ではなく、調整と連携を示すこと――それこそが真の評価対象となる」


盾の壁の前で立ち止まり、息を荒げる候補者たち。

追い詰められたその瞬間こそが、試験の核心だった。


――順風では測れない価値が、今まさに試されている。



候補者チームの陣形は乱れていた。青年魔導士は息を荒げ、炎術師は消耗で膝をつく。

風術師と土術師は言い争いを始めていた。


「お前の風が強すぎるんだ!」

「違う、お前の土が遅いから……!」


その最中、敵の盾兵が前進し、さらに押し返そうとする。ルーチェは眉を寄せ、掌を掲げた。


「――沈まれ!」


光が弾け、仲間たちの顔を一瞬照らす。眩さではなく、心を落ち着かせる温かな灯火のような光。

それは、乱れかけた心を繋ぎ直す合図だった。


「風よ、左の隙を突け。土よ、その後に足場を崩すのじゃ」


ルーチェが指先で合図を送り、光を点滅させる。

風術師は深く息を吸い、力を絞り込むように風を操る。

盾兵の左脇が揺れ、そこへ土術師が力を重ねて足場を崩す。盾兵がぐらりと傾き、青年魔導士が叫んだ。


「今だ!」


炎術師が力を振り絞り、燃え尽きる寸前の火球を狙い撃つ。

崩れた盾の隙間を通り、守備兵を後退させることに成功した。



歓声が観客席から波のように湧き上がった。

子供たちが肩車され、手を叩き、ざわめきが訓練場全体を包む。


「繋がったぞ! 見ろ、この連携!」

「光が目印か! あれで動きを合わせたんだな!」


高台に立つ漣司の視線は鋭くも穏やかで、彼はわずかに頷いた。


「……力を抑え、仲間を繋ぎ直したか。光は派手さではなく、組織の糸になる。魔法とは個の力ではなく、集団を纏めるための道具でもあるのだな」


リュシアも冷静に記録をつけながら呟く。


「調整力、協調性、士気の維持……ただ単に攻撃力が高いだけでは、組織を前に進めることはできません。この瞬間、彼女はその本質を体現しました」


訓練場の空気が一瞬静まり、光と影の余韻が残る中、ルーチェは仲間たちに目配せを送る。その瞳には迷いがなく、落ち着いた決意が映っていた。

風術師は深呼吸をして微調整、土術師も足元を確認し、炎術師は燃え尽きかけの火球を握り直す。

全員の呼吸がぴたりと合い、まるで一つの意思で動くようになった瞬間、観客から再び歓声が巻き起こった。


「これが、組織としての力か」


漣司は小さく微笑み、目の端でルーチェを見やった。

彼女の静かな掌から発せられた光――それは単なる魔法の一閃ではなく、戦場における「信号」として、仲間の心を繋ぐ架け橋になったのだった。



しかし戦いはまだ終わらなかった。先輩社員チームは退いたように見せかけ、左右に部隊を展開。候補者たちは徐々に挟み込まれ、前進の道を阻まれる。


「挟撃だ、気をつけろ!」


呼び声と同時に、盾を構える先輩社員が隙間なく前線を固める。

投石の衝撃が土埃を巻き上げ、風が渦を巻き、候補者たちは混乱する。ルーチェは唇を噛みしめ、掌に光を集めた。


「拙者の光で道を示す……皆、後に続け!」


掌から放たれた光は、狭い通路を一直線に貫く。

眩さではなく温かさを帯び、仲間の目に「進むべき道」を明確に示した。

その光は単なる魔法の効果ではない。

仲間の心をひとつに結び、混乱を抑え、士気を奮い立たせる合図だった。

候補者たちは瞬時に息を合わせ、再び集結。

盾兵の間を縫うように突撃し、挟み込みの壁を突破せんと前へと進む。



戦況は拮抗し、双方の汗と声が交錯する。

候補者チームは一度崩れかけながらも、光を頼りに再び立ち上がった。

疲労の色が濃く、息も荒いが、互いの視線が交わるたびに意志は途切れない。

漣司は高台で静かに観察し、唇を引き締める。


「――ここからが、勝負だ」


夕日が訓練場をさらに赤く染め、土埃や煙が黄金色に光る。

盾を構えるガロウを始め、二階堂商会の先輩社員達、魔力を絞る候補者、それぞれの手に宿る力と覚悟が、場の空気を重く、鋭く切り裂いていく。


ルーチェの光が仲間たちを導き、風と土が軌道を描く。次の一瞬で、戦局は大きく動く――そんな予感が、観覧席のざわめきにも滲み出ていた。


――決着の時は、もう間もなく。

お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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