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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第一部 武装法人誕生 - 都市買収編

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第20章 信用攻防 ― 都市を揺るがす通貨戦

農村防衛戦の勝利から数日。二階堂商会の名は、まるで新しい時代の風に乗ったかのように都市中へ広がっていた。農村から届いた新鮮な食材は倉庫街に山積みとなり、配給を求めて市民が列を成す。手に握られるのは金貨ではなく、二階堂商会が発行する商会手形。それは瞬く間に街の市場へ浸透し、金貨より確かな価値として扱われ始めていた。

漣司は執務室の窓辺に立ち、その賑わいを静かに眺めていた。市民のざわめきは勝利の余韻のように聞こえる。しかし、彼の眼差しには緊張が宿っていた。


「……だが、これは嵐の前の静けさだ」


扉が開き、帳簿を抱えたリュシアが入ってくる。冷徹で、感情ではなく数字だけを信じる彼女の声が室内に落ちた。


「ギルドは軍事での報復に失敗しました。彼らの次の手は――“信用戦”。資金力で我々を圧倒するはずです」


漣司は短く息を吐き、指先で窓を軽く叩いた。


「つまり……通貨戦か」


その言葉に、リュシアが無言で頷く。漣司の瞳が細められ、まるで遠い昔の記憶を呼び起こすように微かな笑みが浮かぶ。


「日本で言う市場介入、為替操作……投資ファンド同士の空売り合戦と同じ構図だ。奴らは商会手形を市場にばら撒き、価値を暴落させに来るだろう。信用を殺すつもりだ」


その低い声は、戦場とは別のもう一つの戦争の始まりを告げていた。剣と魔法の残響が消えていく代わりに、貨幣と信用の冷たい匂いが満ちていく。


二階堂商会の次の戦場は――市場そのものだった。



その頃、都市の酒場では、湿った空気の中で不穏な声が渦を巻いていた。


「二階堂商会の手形、危ないらしいぞ。もうすぐ紙屑になるって噂だ」

「ギルドの保証がないんだろ? あんなの抱えてたら破産一直線だ」


木製のカウンターに置かれた手形を、市民たちはまるで毒物でも見るかのように扱う。怯え、ざわめき、互いに顔色を伺う。だが――この騒ぎの火種が誰かは分かりきっていた。ギルドが流した工作だ。目に見えない刃が、静かに市民の不安を切り裂いていく。

その頃、二階堂商会の会議室。漣司は円卓の中央に立ち、全員を見渡した。窓の外から噂のざわめきが、遠雷のように伝わってくる。漣司は全員に告げた。


「信用は数字ではなく信念で守るものだ。だが、信念だけでは市場は動かない。数字という武器で裏付けなければならない」


低く、だが迷いのない言葉だった。リュシアが静かに頷き、帳簿を開いて言う。


「そこで提案します。――公開会計です」

「公開会計?」


ロイが首を傾げる。


「はい。二階堂商会の資産、負債、収支、すべて市民に公開するのです。数字を隠さず示すことで、噂よりも強い信用を築けます」


ミナが肩を竦めて笑う。


「へぇ、そんなもん出したら、逆にスケスケで狙われるんじゃないの?ここに弱点ありますって看板掲げるようなもんでしょ」


しかし、リュシアは微動だにせず、冷たい刃のような声で返した。


「狙われてもいいのです」


リュシアは冷徹に言った。


「数字は嘘をつきません。虚言を打ち砕けるのは、誤魔化しのきかない事実だけです」


その言葉の重さに、部屋の空気が一段引き締まった。


 漣司は腕を組み、リュシアを見据えた。


「…噂は風だが、数字は地面だ。地面を見せてやれば、市民は何を信じるべきか分かる」


ロイは不安そうに、それでも力強く拳を握った。


「だったら……俺たちの本気、全部見せてやりましょう。この商会が何で成り立ってるのか、堂々と証明すればいい」


ミナがにやりと笑う。


「いいじゃん。派手なのは嫌いじゃないよ」


そこでガロウが拳を鳴らしながら言った。


「いいじゃねェカ。どうせ隠すほどの汚れ仕事はしてねェ。なら堂々と見せテ、ギルドのクソどもを黙らせてやりゃあいイ!」


リュシアの瞳が淡く光った。


「では準備を始めます。――信用戦の幕を開けましょう」


その瞬間、会議室は戦場を前にした軍議の緊張感に満ちた。剣ではなく、数字で闘う戦争が始まろうとしていた。



数日後、倉庫街の広場に特設舞台が設けられた。漣司、リュシア、そしてロイが立ち、市民を前に大帳簿を広げる。リュシアが冷ややかに宣言する。


「これが我が二階堂商会の収支です。食料在庫は一万俵、保険積立金は銀貨二千枚。市議会からの徴税実績も公開します」


群衆がざわめく。


「本当にある……!」

「嘘じゃなかったのか!」


その時、ロイが前に進み出た。


「みんな! 俺は農村の出だ。ギルドに搾取され続け、未来なんて見えなかった。だが、この商会は違う! 俺たちと契約を交わし、守ってくれた!」


彼の爽やかな声は、群衆の心を掴んだ。


「数字はリュシアさんが保証してくれる! そして、俺が保証する! 二階堂商会は、庶民の味方だ!」


歓声が広場に響き渡る。



しかしその直後、群衆のざわめきを切り裂くように、男が声を上げた。


「嘘だ! 見せかけの帳簿だ!」


ギルドの工作員だ。目つきは鋭く、群衆の不安を狙って挑発する。瞬間、一部の人々の顔に動揺が走った。


だがロイが前に一歩踏み出した。


「みんな、落ち着け! 焦る必要はない!」


その声には、ただの呼びかけではない、力強い安心感が宿っていた。群衆の視線が、自然と彼に向かう。


「この帳簿は俺たちが確認した、事実だけだ!」


両手を大きく広げ、帳簿を指し示す。真摯な笑顔と、農村で培った誠実さが人々の胸を打つ。


「疑うなら、自分の目で見てくれ!」


子どもたちも手を止め、大人たちは顔を近づけ、帳簿に目を凝らす。男の挑発は徐々にかき消され、群衆の中にざわめきが戻ってくる。


「俺が保証する! 二階堂商会は庶民の味方だ!」


その声に、群衆は歓声を上げ、男を取り囲んで疑念の声を消した。人々の視線は再び商会へと向き、信頼が固まっていく。


「ならば公開で検証しろ! 誰でもこの帳簿を閲覧できる! 数字は誰の目にも明らかだ!」


漣司の言葉が響くと、群衆は完全に納得し、商会への信頼は揺るぎないものとなった。



夜、執務室に戻るとリュシアが静かに言った。


「……見事でしたね、社長。ロイの演説後、市民の反応は予想以上です。皆、彼を庶民の英雄として称えています」


漣司は窓の外の広場を見やった。演説の熱狂はすでに落ち着き、群衆は談笑しながら互いに感想を語り合っている。彼は最後まで丁寧に頭を下げていて、周囲の市民一人ひとりの目を見て声をかけていた。その真摯な姿勢からは、演説で見せた言葉の力が、確かに人々の心に届いたことが伝わってきた。


「彼の力は数字や理屈では測れない。言葉と行動で人の心を動かす力だ。人気は信用を支える。だが……過信すれば、同時にリスクにもなる」


リュシアは黙り込み、漣司とともに窓の外を見つめた。夜の広場にはまだ、市民たちが小声でロイの名を呼び、感謝や希望を語り合っていた。その光景が、彼の存在がもたらした揺るぎない信頼を如実に示していた。



その頃、ギルドの会館では、老練な幹部たちが暗い顔をしていた。


「手形の信用は逆に強まったぞ……」

「このままでは市場支配を失う」


長机の奥で、ギルド長マルコが低く呟いた。


「ならば次は……資金を吸い上げる。商会の流通を奪い、銀貨を枯渇させる。都市経済を飲み込むのは、我々だ」


新たな策謀が蠢いていた。夜風の中で、漣司は独り言のように呟いた。


「戦いはまだ都市の中だ。世界の経済から見れば、この都市の規模は一%にも満たない。だが、この一%を制すれば、残り九九%に挑む力が生まれる」


剣と天秤の旗が月光に揺れる。二階堂商会の経済戦争は、さらに深い局面へと突入しようとしていた。



お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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