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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第ニ部 武装法人拡大 - 有力都市買収編

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第140章 焚き火の夜 ― 光と影のはざまで

 

 夜の風が、草原を渡っていく。


 昼間の砂塵が嘘のように、世界は静まり返っていた。焚き火の火が、赤く揺れている。小さな野営地の中央――そこに、二階堂商会の面々が腰を下ろしていた。


「ふぅ~……やっと落ち着けるね」


 ミナが背伸びをしながら、火に手をかざす。


「今日も荷物運びに修理に、肉体労働ばっか!」

「お主、ほとんど喋っていただけでござるが」


 ルーチェが微笑みながら茶を差し出す。


「文句を言う体力があるのは、良きことでござる」


 ミナがむっとして顔を赤らめた。


「う、うるさいなぁもう! あたしだって、ほら、士気を上げる係!」


 隣ではガロウが、串を返しながら鼻を鳴らしていた。


「士気より先に腹だロ。ほラ、ミナの分も焼いてやったゾ」


 無造作に差し出された肉を見て、ミナが一瞬だけ目を瞬かせる。


「……なにそれ。気が利くじゃん」

「うるさイ。余っただけダ」


 むぐ、と噛みついたミナが、満足そうに目を細める。


「……やっぱり、あたしガロウ好き」

「やめロ! 気持ち悪イ!」


 即座に突き放す声に、焚き火の周りで笑いが弾けた。そのやり取りに、ロイが思わず吹き出す。


「本当に……この商会は騒がしいですね。だが、それが心地いい」



 ◇



 リュシアは帳簿を閉じ、焚き火の光を反射させながら言った。


「バルメリアを出てからの経費は、予想より三割低いですね」


 リュシアは帳簿の端を指で揃え、焚き火に照らされた数字を一度だけ確かめる。満足でも安堵でもない、淡々とした横顔だった。


「けれど――油断は禁物です」


 眼鏡の奥で、視線がわずかに鋭くなる。炎が揺れ、その光が冷たいレンズに走った。


「次の都市は、貿易の渦ですから」

「セレヴァリア、か」


 漣司は焚き火から目を離さず、赤く崩れる薪を見つめたまま呟いた。火の粉がひとつ、夜空へ舞い上がる。


「そこで俺たちは、数字と剣の両立を試されるだろうな」


 その言葉に、ミナがくいっと顔を上げる。


「また難しい話~」


 そう言いつつも、焚き火の向こうで漣司の表情を確かめるように見てから、にっと笑った。


「でもさ、社長。さっき助けた商人さん、めっちゃ喜んでたよ? あれで商会の信頼ってやつ、上がったんじゃない?」


 漣司は少しだけ間を置き、静かに答える。


「信頼は積み上げるものだ。一つの善行で得ても、次の怠慢で崩れる」


「はいはい、名言モード入りました~」


 ミナは茶を啜りながら、わざとらしく肩をすくめた。ロイが笑ってフォローする。


「ですが、その通りですね。数字よりも、姿勢を見ている人間がいる。」


 リュシアが静かに言葉を重ねる。


「……経済が拡大すれば、対立も増えます。利益を求める者の影に、必ず搾取が生まれる。その循環を断ち切るのは、理念だけ」


 ルーチェが頷いた。


「理念を忘れぬ者こそ、光を保てるでござる」


 その一言に、漣司は少し目を細めた。焚き火の火が彼の瞳に映り、赤い光が揺れる。


「理念、か……」


 焚き火から目を離さず、低く息を吐いた。


「俺たちの理念は、不条理を撤廃することだ。数字を使って、剣より速く、世界を変える」



 ◇



 風が少し冷たくなる。ガロウが焚き火に薪を投げ入れた。


「社長、オレは剣で勝つ派だけどナ。殴る方が早イ」

「……だからこそ、お前が必要なんだ。剣を振る役目を担う者がいるから、俺たちは武装法人を名乗れる」


 漣司が苦笑する。


「ハッハッハ! 名言きタ!」

「名言じゃなくて、事実だ」


 そのやりとりに、笑いが広がる。火花が夜空に散り、テリアが小さく翼を震わせた。ルーチェが優しく撫でる。


「今日もよく働いたのう、テリア。そなたの光が、道を照らしてくれたでござる」


 テリアが「キュルル」と鳴く。その小さな声が、夜気に溶けた。



 ◇



 やがて話し声も途切れ、野営地には焚き火の爆ぜる音だけが残った。


 皆がそれぞれの寝具に潜り込み、夜がゆっくりと場を覆っていく。毛布にくるまったミナが、闇に向かってぽつりとこぼす。


「ねぇ……社長。あたしたち、いつか大陸一の商会になれると思う?」


 漣司は少し考えてから答えた。


「なれるさ」


 毛布の中で、漣司は天幕の暗がりを見つめたまま、短く息を吐いた。焚き火の爆ぜる音が、ひとつ遅れて耳に届く。


「ただし――人の心を売らない商会である限りな」


 ミナは一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。


「……それ、ずるいくらいカッコいい」


 帳簿を閉じる音がして、リシュアが淡々と呟く。


「名言モードですか?」

「いいや」


 漣司は肩をすくめる。


「いつも通りだ」


 笑い声がまた一つ、夜空へと消えた。草原の風が吹き抜ける。焚き火の残り火が、まるで小さな星のように瞬いていた。


 その光は確かに――未来へ続く航路を照らしていた。

 その光は確かに――未来へ続く航路を照らしていた。

お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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