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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第ニ部 武装法人拡大 - 有力都市買収編

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第128章 再興の街 ― オルテリアに朝が来た

それは、長い長い眠りのあとだった。まぶたの裏にまだ光の残像がちらつく。ルーチェの最後の浄化の閃光――そして崩れゆく炭鉱。

 

――あれから、二日。

 

漣司が目を覚ました時、部屋の窓から差し込む朝の光が、心地よい熱を帯びていた。ここは、オルテリアの宿舎。商会の臨時拠点として借りた古い石造りの建物だ。隣のベッドではロイが静かに眠っていた、床の脇には、リシュアが薬瓶と包帯を並べたまま、椅子に突っ伏して寝ていた。


「……俺が起きるまで、離れなかったってわけか」

 

漣司が苦笑しながら、上体を起こす。動かした瞬間、全身に鈍い痛みが走った。だが、その痛みが生きている証に思えた。ドアがコン、コンと叩かれる。



「――起きておられるか、社長さんよ」

 

聞き慣れた、少ししゃがれた声。


「入れ」

 

扉を開けて入ってきたのは、黒いコートに短剣を下げた男――元盗賊団長、ザハードだった。今では森の監視員という肩書きで、オルテリアとラクリアの間の交易路を整備している。


「整備の進捗を報告に来た。……見た目よりは元気そうだな」

「見た目だけはな。どうだ、道の方は」

 

ザハードは腰の地図筒を外し、簡易の地図を広げる。


「ラクリアとの間の街道、ほぼ通行可能だ。崩れた橋は修繕済み。荷車も問題なく通せる」

「早かったな」

「優秀な人手が多いからな。……あんたの功績だ。二階堂商会の社員が良く動いてくれた」

 

漣司は軽く息を吐いた。


「ま、商売は信頼があってこそだ」

 

その言葉にザハードは鼻を鳴らす。


「信頼ってのは、得るまでが地獄だ。失えば終わりだが……あんたは違うらしいな」

 

その時、階段の下からどたどたっと賑やかな足音。


「社長ー! 起きた!? あっ! ほんとに起きてる!」

 

扉を勢いよく開けたのはミナ。頬には絆創膏、手には肉まんを三つも持っている。


「動けるじゃん! すごいじゃん! さすがうちの社長!」

「……まだ全快じゃない。音量は半分で頼む」

「へいへい。まったく、休んでる暇もないね」

 

ミナの後ろから、ルーチェも現れる。ルーチェの肩には、あの小さなホーリードラゴンが乗っており、ちょこんと首を傾げて鳴いた。


「お目覚めにござるか……ご無事にて、何よりでござる」

「おはようございます、社長。体調は?」


ミナの声で起きたリシュアが微笑む。


「痛みはあるが、仕事はできそうだ」

「ならよかったです。市の方では、炭鉱の再建が本格的に始まっております」

 

漣司は立ち上がり、外の窓を開けた。


 ――街が、動いていた。

 

瓦礫だらけだったオルテリアの通りに、人々の声が戻っていた。荷車が往来し、商人が叫び、子どもたちが走り回る。遠くでは鍛冶屋の金槌の音が響き、露店には食材と鉱石が並んでいる。


「炭鉱の魔物も消えた。これで市場は安定するでしょう」


リシュアが言う。


「炭鉱の方は?」

「ガラート殿の指揮のもと、復旧班が動いております」

 

その言葉を聞いた瞬間、外からまた別の声が響いた。


「おい! 運ぶぞ! その梁は右だ、右!」

 

怒鳴り声に混じって、笑い声。見ると、炭鉱の入口では、ガラートが頭に鉢巻を巻き、腕まくりをして指揮を執っていた。


「よし、そこの支柱! おい、ロープ緩めんな! ……ったく、若ぇのは元気がありすぎだ!」

「ガラートさん、完全に現場監督ですね」


ロイが笑う。


「似合ってるじゃんか」


ミナも頷く。ルーチェの肩の小竜が、ぴぃと鳴き、炭鉱の方を見た。


「こやつも、懐かしい匂いを感じておるのでござろう」

「この子が、瘴竜だったなんて、信じられないな……」


ロイが小さく呟いた。その声が届いたのか、ガラートの動きがふと止まった。


 梁を担ぐ男たちに手で合図を出し、いったん作業を止める。

 巻き上げ機の音が遠のき、朝の風に混じって人の気配だけが残った。

 ガラートはゆっくりと顔を上げる。

 粉塵で曇った空気越しに、宿舎の窓が見えた。


 ――生きてやがるな。


 確信するには、それで十分だった。

 一瞬だけ、視線が重なる。距離はある。言葉は届かない。それでも、分かった。口元を吊り上げ、鼻で笑う。


「……あんたらが来るまでは、この街はもう終わりだと思ってた。だが今は違う。人が働いて、笑って、もう一度生きる気になってる。まったく……頭があがらねぇが、礼は言っとく」

「礼はいらない。街が動けば、商売も回る。互いに得だ」


漣司は短く返す。


「相変わらず現実的だな、あんたは」

 

そのやり取りに、ルーチェがくすりと笑った。


「しかし、こうして皆が笑う姿を見られるのは……悪くないでござる」

「そうだね。地獄の後に来る朝って、格別だ」


ミナが窓際で空を見上げた。オルテリアの空は晴れ渡り、炭鉱から立ち上る煙の代わりに、朝霧がやさしく漂っていた。


「……以前の街の雰囲気が、嘘みたいだね」

 

その声に誰も言葉を返さなかった。ただ、それぞれが同じ思いを抱いていた――生き延びた、という実感。ルーチェの肩の小竜が翼を広げ、ひときわ明るい声で鳴いた。その音はまるで、街そのものの鼓動と重なっているようだった。漣司はその光景を眺めながら、静かに言った。


「……これで、ひとまず第一段階は完了だな」

 

その背後で、仲間たちの笑い声が広がっていく。

 

――オルテリア再興。

 

闇の炭鉱は光を取り戻し、人々は再び未来へ歩き出した。

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