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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第ニ部 武装法人拡大 - 有力都市買収編

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第105章 旧ギルドの盟友 ― 炭鉱都市の縁を結ぶ者

交易路を切り拓き、湖上都市ラクリアを再生させた武装法人二階堂商会。

だが商会の資金基盤は万全ではなく、次なる一手が求められていた。

彼らが向かうのは、ダンジョン化により衰退した

炭鉱都市オルテリア――眠れる資源の地。

失われた街を再生し、商会と大陸の未来を繋ぐ、新たな挑戦が始まる。

 オルテリア東端――

 街の息が途切れるその境界に、ひっそりと佇む石造りの建物があった。


 かつて炭鉱都市の中枢を担い、富と情報が行き交った商人ギルド旧館。

 今は時に削られ、壁は黒ずみ、窓ガラスは蜘蛛の巣のようにひび割れている。

 扉には錆びた鎖が垂れ下がり、廃墟と呼ぶに相応しい姿だった――

 だが。その隙間から、確かに“人の営み”を示す灯りが、細く漏れている。


「……間違いないな」


 漣司を先頭に、二階堂商会の役員たちは足音を殺して中へ入った。

 扉が押し開かれると同時に――

 ギィ……と軋む音。空気は乾ききり、古い紙と油の匂いが混じって鼻を刺す。


「ここが旧ギルド……随分荒れてるわね」


 ミナが壁の埃を指でなぞり、眉をしかめる。


「ただ、人が寄りつかなくなって長い。手入れは最低限だな」


 ロイが梁と床を一瞥して言う。

 そのとき、淡い光がふわりと広がった。

 ルーチェが杖を掲げ、周囲を照らす。

 光は柔らかく、しかし確かな輪郭をもって闇を押し退けた。


「……不思議なことに、この建物には流れが残っております」


 その言葉通り、天井の梁に吊るされた古い振り子時計が、

 ――コツ、……コツ、と、ゆっくり時を刻んでいた。

 そのとき――奥の階段の上から、低い声が響いた。


「……誰だ」


 低く、擦れた声が、奥から落ちてくる。

 一同が一斉に視線を向けた。薄暗い階段の上、光の届かぬ影の中。


「よそ者か?」


 姿を現したのは、白髪交じりの壮年の男だった。

 擦り切れた外套に革手袋、腰には小さな魔導具。

 その瞳は長年の鉱山暮らしで研ぎ澄まされたような灰色の光を宿していた。

 ロイが一歩前に出ようとしたが、漣司が手で制した。


「こちらは、ラクリア議長殿からの紹介で来た者だ。

 あなたがギルド元締めのガラート氏で間違いないか?」


 男――ガラートは鋭く目を細めた。


「……ラクリアの議長? あのじじい、まだ生きてやがったのか」

「元気そのものです。あなたの名を挙げ、必ず力になってくれると」

「ふん……そいつは余計なお世話だな」


 ガラートは階段を降りながら、深くため息をついた。


「それで? お前ら、こんな死にかけの街に何しに来た。

 炭鉱がダンジョン化してから、戻ったやつはいねぇ。

 命が惜しけりゃ、さっさとこの街から離れな。」

 

 その言葉にミナが一歩前に出る。


「へぇ……ご忠告ありがとう。でもね、私たちは儲け話で来たわけじゃないの。」

「……ほう?」

 

 漣司が静かに懐から封筒を取り出した。

 厚手の封蝋には、ラクリア議会の紋章が刻まれている。


「これを。――ラクリア議長からあなたに託された書簡だ」

 

 ガラートは一瞬、目を細め、躊躇いがちにそれを受け取った。

 そして封を切り、古びた机にランプを近づけながら読み始める。

 

 沈黙。

 

 ページをめくる音と、紙の擦れる音だけが部屋に響いた。

 長い時間が過ぎたように思えたあと、ガラートは静かに息を吐いた。


「まったく……昔からおせっかいな奴なんだよ、あいつは。」

 

 だがその顔には、どこか懐かしさと温かさが混じっていた。


「どうやら本気らしいな。お前ら、ただの商人じゃねぇ」

「武装法人、二階堂商会」

 

 漣司の言葉に、ガラートの口角がわずかに上がった。


「なるほどな。街の立て直しか――大したもんだ」

「俺たちは金のためじゃない。この街を根本から立て直し、再び交易の輪を繋げるために来た」

「……根本から、ね」

 

 ガラートは書簡を指で挟み、ランプの光にかざした。


「議長の言葉を信じるなら、お前らの誠意も本物ってとこだな…

 よし――わかった。俺も協力しよう。」


 

 張り詰めていた空気が、ふっと緩んだ。

 リュシアが胸の前で手を組み、静かに息を吐く。


「助かるます。あなたが味方になってくれたら心強い」


 その声音は素直で、飾り気がない。

 だが、向かいの男――ガラートは肩をすくめるだけだった。


「期待するなよ。俺は十年、この街で生き残ってきただけだ。

 裏も表も見尽くした。今のオルテリアはな……人が諦めちまった街だ」


 だが、その濁った目に、わずかな火が灯る。


「……けどよ。まだ諦めてねぇ奴がいるなら、そいつを支えるって選択肢も、悪くねぇ」

 

 その言葉を、ロイが真正面から受け止めた。

 真っ直ぐで、誠実な眼差しのまま、静かに頷く。


「人の意志が残ってる限り、街はまだ死んでいない。

 俺は、そう信じてる」


「……ふん」


 ガラートは鼻で笑いながらも、口元だけは緩めた。


「言葉だけは立派だな。だが嫌いじゃねぇ」

 

 彼は椅子を引き、机の引き出しを開ける。

 埃をかぶった一枚の地図が広げられた。

 炭鉱の詳細な構造図――そこかしこに引かれた赤い印が、不穏に浮かび上がる。


「ここが崩落区画だ。

 ダンジョン化したのは、この一帯。正規ルートは全部潰れてる」

「……道は、完全に断たれているの?」


 ミナの問いに、ガラートは首を横に振る。


「一本だけ、残ってる。炭鉱夫が非常時に使ってた緊急坑道だ。

 知ってるのは俺と、もう数人だけだが――案内ならできる」

「抜け道、というわけだな」


 漣司が短く息を吐き、地図を見下ろす。その表情に、迷いはない。


「助かる。内部への深入りは避ける。

 外周の安全を確保しつつ、段階的に進むつもりだ」

「安全確保、ね……」


 ガラートは意味ありげに呟き、視線を横へ滑らせた。

 そこに立っていたのは、静かに杖を携えるルーチェ。


「さっきから気になってたが……あんたの魔力、妙に澄んでやがる。

 この街の淀んだ空気じゃ、まず見ねぇ質だ」

 

 ルーチェは一歩進み、軽く頭を下げる。

 声は落ち着いていて、凛としていた。


「我が光は、穢れを鎮め、道を正すためのもの。

 炭鉱に巣食う魔性にも、相応の効き目はありましょう」


「なるほどな……」


 ガラートは腕を組み、低く笑う。


「中に潜る前に、外の瘴気も掃除しておくってわけか。合理的だ。理屈は嫌いじゃねぇ」

 

 ガラートが笑う。彼は地図を畳み、立ち上がった。


「よし。俺もまだ、この街で顔は利く。議会には話を通してやる。

 お前らが動きやすいように、道を整えておく」


 その言葉に、漣司は深く頭を下げた。


「感謝する。あなたの協力なくして、この街の再建は成り立たない」

「礼なんざ要らねぇ」


 ガラートは背を向けかけ、振り返る。


「――その代わり、約束しろ。途中で、投げ出さねぇってな」

「当然だ」


 漣司の声は低く、しかし揺るぎなかった。


「俺たちはこの街を救う。そのために来た。」


 静寂の中、その言葉だけが、確かに未来へと響いていた。


  

 古いギルドの扉を押し開けると、ひやりとした風が流れ出し、頬を撫でた。

 夜気を含んだその冷たさは、現実へと引き戻すようで――同時に、目を覚まさせる。

 見上げれば、廃墟の屋根々を覆う薄雲が、ゆっくりと流れている。

 その隙間の向こう、炭鉱のある方角からは、淡く、しかし不穏な光が立ち昇っていた。

 まるで街の奥底が、まだ何かを訴えているかのように。


 ミナが、そっと声を落とす。


「ねえ、社長。……やっと少しだけ、光が見えてきた気がする」


 不安と期待が混じった、その横顔。

 隣でリュシアが眼鏡を指先で押し上げ、炭鉱の方角に視線を送った。


「見えてきたというより……条件が揃い始めた、が正確かしらね。

 情報、人脈、導線。ようやく盤面に駒が並び始めた段階よ」


 淡々とした口調だが、その声音には確かな手応えが滲んでいる。

 漣司は答える代わりに、空を仰いだ。

 

「そうだな」

 

 漣司は静かに続ける。


「だが、その光はまだ弱い。

 ――ここからだ。これは再生の、ほんの第一歩にすぎない」

 

 その言葉に、ロイが自然と笑みを浮かべる。

 拳を握り、前を見据えた。


「任せてください。俺たちの仕事は……ここからですね」


 迷いのない声。それを受け、ルーチェが小さく頷く。

 

「闇がどれほど深くとも、光は失われませぬ。

 必ずや、この地を照らしてみせましょう」

「燃えてきたゼ!」


 ガロウが拳同士を打ち鳴らし、豪快に笑う。

 その音が、静まり返った街路に力強く響いた。

 

 こうして――二階堂商会は、オルテリアの深淵へと踏み出した。

お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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