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武装法人二階堂商会 ―― 転生社長は異世界を株式買収で武力制圧する!  作者: InnocentBlue
第ニ部 武装法人拡大 - 有力都市買収編

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第104章 役員会議 ― オルテリア再興の兆し

交易路を切り拓き、湖上都市ラクリアを再生させた武装法人二階堂商会。

だが商会の資金基盤は万全ではなく、次なる一手が求められていた。

彼らが向かうのは、ダンジョン化により衰退した

炭鉱都市オルテリア――眠れる資源の地。

失われた街を再生し、商会と大陸の未来を繋ぐ、新たな挑戦が始まる。

 オルテリアの空は、この日も重たい雲に覆われていた。


 街全体を押し潰すような灰色――

 だが、二階堂商会の宿舎二階だけは、どこか違っていた。

 簡素な木机の上には、広げられた街の地図、書き込みだらけの帳簿、魔力測定具。

 そして、湯気を立てるカップがいくつも並び、室内にはほのかな温もりが満ちている。

 即席の会議室。そこに、役員たちが次々と集まってきていた。

 漣司は机の端に腰を下ろし、全員が揃うのを確認してから、ゆっくりと視線を巡らせる。

 炭鉱都市オルテリアに到着してから数日――

 それぞれが街を歩き、見て、聞き、感じてきた。


 今日は、その成果を束ねる日だ。


「――それでは、各自の報告を聞こう」


 静かな声。だが、その一言で場が引き締まる。


「まずは……ロイとミナだ」


 その瞬間。

 

「はーいはーいっ!」


 ミナが勢いよく手を挙げ、椅子から半分立ち上がった。


「わたしたちね、けっこう――いや、かなり大きな情報を掴んだのよ!」

「また大げさな言い方を……」


 隣でロイが小さくため息をつく。だが、ミナは気にも留めず、胸を張った。


「聞いて驚きなさい。ラクリア議長の古い友人――

 その人、見つけたかもしれないの」


 室内が一瞬、静まる。


「……ほう。それは早いな」


 漣司が感心したように頷く。ミナは満足そうに指を立てた。


「情報源は酒場のマスターよ。

 炭鉱が封鎖されたあとも、ひとりだけギルドに残った人物がいるんですって」


「ギルドに……?」


「そう。その人、ラクリアと書簡をやり取りしてたらしいの。

 で、今も住んでる場所が――旧ギルドの建物」

「旧ギルドか……」


 漣司が軽く指を鳴らす。その音に、自然と視線が集まった。


「なるほどな。ギルド跡なら、過去の資料も残っているはずだ。信憑性は高いな」

 

 その分析に、ロイが静かに頷いた。


「昨夜、実際に確認にも行きました。

 鍵は閉まっていましたが……灯りと生活の痕跡は確かにありました」


 無駄のない報告。庶民的で、誠実な口調。


「今は不在でしたが、誰かが住んでいるのは間違いありません」


 漣司は満足そうに目を細める。


「お前たちがすぐに見つけてくれると思っていた。さすがだ」

「――え? 予想通り?」


 ミナが頬を膨らませる。


「それ、なんか気に入らないんですけど~」

「こら」


 ロイがすかさず割って入る。


「社長に生意気言うな」

「せっかく評価してもらってるんだ。素直に受け取ればいいだろ」

「……はーいはい。ちょっとだけありがと~」


 ミナはそう言って、照れ隠しのようにそっぽを向いた。

 会議室に笑いが広がる。漣司は微笑を浮かべながら書簡を閉じた。

 その軽妙なやり取りに、場の空気が柔らかくなる。

 漣司は口元をほころばせながら、書き留めた。


「よし――」


 低く、しかし確かな声。


「旧ギルド。ここが、この街を動かす次の足掛かりになる」


 曇天の下。オルテリア再興へ向けた歯車が、確かに回り始めていた。



「では次――ガロウとルーチェだ」


 漣司の指名に、ガロウが椅子にどっかと背を預け、肩をぐるりと回した。


「オウ。俺たちハ、街中でちょいとひと悶着あったナ」

 

 その言い方があまりにも軽く、周囲が一瞬だけ訝しむ。


「ま、俺とこの魔導士の嬢ちゃンの連携デ、簡単に片づけタけどヨ」

 

 親指で隣を示すと、ルーチェは胸の前で手を揃え、にこりと微笑んだ。


「拙者の光魔法が、少しばかりお役に立てたようでござる」


 ガロウが即座に言い切る。


「前ェに出て殴るのは俺の役目ダ。

 だが、後ろから光で道を整えてくれルやつがいねェと、話にならねェ」

「……役割分担が綺麗だな」


 漣司が感心したように頷く。


「街中での戦闘は極力避けるべきだが……身身にかかる火の粉を払う程度なら、仕方あるまい」

 

 その言葉にルーチェが真顔で首をかしげる。


「……火の粉、でござるか?」

「?」


 首をかしげ、考え込む。


「拙者、戦闘中、火の魔法は一切使用しておりませぬが……?」

 

 一瞬の静寂。

 次の瞬間、部屋が笑いに包まれた。


「違う違う違う!! そういう意味じゃないから!」


 ミナが耐えきれず噴き出した。


「ちょ、ルーチェちゃん本気で考えたでしょ今!」

「火の粉を払うって慣用句だよ、慣用句!」


 ロイが苦笑しながら補足する。


「災難とか、巻き添えって意味だ」

「……なるほど」


 ルーチェはぽん、と手を打った。


「言葉とは、奥深きものでござるな……」

「そこ感心するとこかヨ!」


 会議室がどっと笑いに包まれる。

 ミナは腹を押さえ、ロイは肩をすくめ、漣司も珍しく口元を緩めていた。


「なに笑ッてやがル!」


 ガロウは不満げに声を荒げるが、その表情には、どこか照れと楽しさが混じっている。


「……しかし」


 漣司が笑いを収め、静かに言った。


「報告としては十分だ。

 ガロウとルーチェの連携は、想像以上に安定しているようだな」

「光が道を示し、拳が突破する。

 まこと、噛み合いの良い組み合わせでござる」

「オウ。考えるのはコイツに任せル。俺は、前でぶっ壊スだけダ」


 二人の言葉に、また小さな笑いが零れる。

 天然と豪腕。正反対だからこそ、噛み合う歯車。


 二階堂商会の会議室に、確かな信頼と余裕が芽生えていた。


  

 ひとしきり笑いが収まったあと、ルーチェは背筋を正し、改めて口を開いた。

 その声音は先ほどまでの柔らかさを引き締め、静かな確信を帯びている。


「――ひとつ、気付いたことがございまする」


 自然と、全員の視線が彼女に集まった。


「聞こう」


 漣司が短く促す。


「この街の者どもは、炭鉱より湧き出づる魔物を殊のほか恐れておりまする。

 理由は明白。――魔力を使えば、使うほど、あやつらが引き寄せられるからにござる」


 その言葉に、ロイが小さく息を呑み、ミナが眉を寄せた。


「だから、魔導士も、魔道具も、みんな黙り込んでたってわけね」

「左様。魔力を断てば命はつながる。だが同時に、街は衰え、守る術を失う」


 ルーチェは胸元に杖を引き寄せ、そっと握りしめた。


「されど――拙者の光は、少々性質が異なりまする」


 淡く、会議室の空気が揺らぐ。錯覚か、それとも魔力の残滓か。

 灯りとは違う、澄んだ輝きが彼女の周囲に満ちた。


 「だが拙者の光は、その穢れを退ける性質を持っているようでござる」

 

 場の空気が引き締まり、ミナが目を見張る。


「つまり、ここの魔物がすごい嫌がるってこと?」

「左様。退魔の光とでも申しましょうか。我が光は彼らの瘴気を浄化し、弱らせる。

 ゆえに、炭鉱からの魔物を退けるには、拙者の術が最も適しておるかと」

 

 漣司は腕を組み、思案の色を浮かべた。


「要するに……お前の魔法は、炭鉱の魔物に特効効果があるというわけか」

「左様でございます」


 即答だった。


「それがしの光があれば、炭鉱を覆う恐怖を一つずつ剥がすことができましょう。

 魔物を退け、道を浄め、人が再び近づける場所へと戻す……それはすなわち」


 彼女は、まっすぐ漣司を見据えた。


「オルテリア再興の、最初の一歩にございまする」

 

 ルーチェの静かな言葉に、漣司は深く頷いた。


「ふむ……街の議会との交渉のカードに使えるな。

 光による浄化が可能だと示せば、この街の支配層も耳を貸すだろう。

 ルーチェ、頼りにしている」

 

 彼は真っ直ぐにルーチェを見た。


「恐悦至極にござる」

 

 ルーチェが深々と頭を下げると、ガロウが腕を組んで笑う。


「嬢ちゃンはスゲェナ! オレの拳とお前の光がありゃ、どんな魔物も敵じゃネェ!」

「光と拳……良き取り合わせでござる」


 

 報告を終えた全員を見渡し、漣司は静かに言葉を紡ぐ。

 全員の報告を聞き終えた漣司は、椅子から立ち上がる。


「……よくやった。街の現状も、炭鉱の兆候も、

 そして次の道筋も見えてきた。全ては、ここからだ」

 

 机の中央に広げられた地図を指でなぞる。

 街の西端――そこに赤い印が付けられている。


「旧ギルド。ラクリア議長の友人が潜んでいるとすれば、間違いなくここだ」

 

 リュシアが眼鏡を押し上げて問う。


「社長。――次の行動、全員で向かわれるおつもりですか?」


 事実確認のようでいて、その裏には綿密な計算がある問いだった。


「そうだ」


 漣司は即答する。


「これはオルテリアを立て直す最初の一歩だ。

 成果が保証されているわけでも、危険が見えているわけでもない。

 だが――だからこそだ。全員で見届ける価値がある」


 理屈ではなく、覚悟で決めた言葉だった。


「ふぅん……」


 ミナが椅子に背中を預け、くるりと指先を回す。


「つまり、明日はまたひと騒動ってことね。」

「お前が騒がなければ、平和に終わる」


 間髪入れず、ロイが淡々と差し込む。


「えぇー? それじゃ退屈じゃない。

 せっかく全員集合なんだし、少しくらい盛り上がっても――」

「頼むから、静かにしてくれ」


 感情を荒げるでもなく、切実さだけが滲むロイの声。


「……努力はするわ! 善処ってやつ!」

「善処って言う時点で怪しいんだよな……」


 ロイが額を押さえ、ガロウが肩を揺らして笑う。


「ハッ! にぎやかな方が街も元気になルだロ」

「秩序ある賑わいが望ましいのでございまするが……」


 ルーチェが真面目に補足し、さらに場の空気が和らぐ。

 皆の笑い声は、宿の廊下にまで溢れ出し、

 灰色に沈んでいた建物の中に、久しくなかった温度を灯した。

 漣司はその光景を静かに眺め、わずかに口元を緩める。


「よし。明日は、全員で議長の友人のもとへ出向く。

 この街を動かす歯車を、もう一度回すためにな」

 

 その言葉に、全員の目が引き締まる。

 重く沈んでいた炭鉱都市の空気に、わずかながらも光が射した。


 ――再生の歯車が、確かに回り始めた。


 次なる目的地は、旧ギルド。

 そこに眠るのは、オルテリアの過去か、それとも未来か。

お付き合いいただき、ありがとうございます。ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。

少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければと思います。一つひとつの応援が、次の物語を生み出す力になるんです。これからも、どうぞ気軽に見守っていただけたら嬉しいです。

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