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41 いざ、追跡 -Now, let's track-

──セーヤが去った後。


猫好きAと蛇遣いのふたりは洗面所にいた。


セーヤから偽装用にと貰ったコンタクトレンズを試しているようだ。


素早く付けることに成功した猫好きAとは反対に、蛇遣いは目にレンズを入れられずにいた。


「こえぇよぉーー!」 


彼の目には涙が溜まっている。


「ほら、ちゃんと目ェ開けて!!閉じないッ!!」


猫好きAは蛇遣いの目を力づくでこじ開け、どうにかレンズの装着を成功させた。


ふたりは、自分の姿を鏡で確認した。


「すげえ、日本人だ。」


金髪に彫り深めの顔立ちから完全な日本人には成りきれないが、瞳の色が変わるだけで十分、異国の雰囲気は中和されていた。


「うん……いいね。セーヤくんに感謝しなきゃ。」


もとより黒髪の猫好きAは、言われなければ日本人の男性に見える変わり様だ。


「ボスだけど、ボスじゃないみたいだな……」


蛇遣いも、彼の雰囲気の変化に驚いていた。



瞳の色を変えたふたりは、梨人のクローゼットから適当な斜めがけバッグを借りると、連絡用タブレットと玄恵(クロエ)が作ってくれたお弁当を入れた。


「玄恵さん、帽子って持ってますか?」


「うん。確か、梨人のがあったはず。」


「彼に、一つ貸してもらえませんか。」


猫好きAはセーヤの助言通りに細心の注意を払い、蛇遣いの金髪も隠すことにした。


蛇遣いは、玄恵が持ってきた黒いキャップを深く被った。


「じゃあ、行ってきますね。」


「夕方までには帰りまーす!」


「気をつけてね〜。」


玄恵に見送られて、ふたりは待夜(マチヤ)家を出発した。


田舎の歩道を猫好きAと、ショルダーバッグを肩から掛けた蛇遣いが走っていく。


猫好きAが猫印(びょういん)を追跡するために先頭を走り、蛇遣いが後に続く。


歩道沿いには畑の多い景観に合わない、新しめの介護施設が見えてきた。


「オラァこのひよこ……完成したら孫にやるだ……」


「高嶋さん、それはひよこじゃなくてぇ。()()()()。」


「……ペンギュイン。」


「ペンギンやって。」


施設の窓際では、高齢者と従業員の女性がまったりと手芸を楽しんでいる。


そこに、窓の外を人影らしきものが猛スピードで通り過ぎた。


彼らは、能力者であり影響力の使い手。

ふたりの移動速度は、人間の疾走では比にならない勢いだった。


「ふぉおおおっ!!」


窓がガタつくほどの衝撃に驚いたお婆ちゃんは手元を狂わせ、誤って隣の女性従業員の手にニードルを突き刺してしまった。


「あ゛ぁああああ!!」


───高齢者を驚かせてはいけない。


ふたりは、岳陵第一高校へと足を進めていく。


「っと!!危ない。」


その場で高く飛んだ猫好きAに続いて、蛇遣いが反射的に他所(よそ)の家の塀の上に飛び乗る。


今度は、道端の鳩を踏み殺しそうになった。


ふたりは障害物との接触を考慮し、歩道を走るのを諦め、建物の上を伝っていくことにした。


猫好きAにしか見えない、道に色濃く残った猫印のルート跡。


彼は、目を細めて追跡に集中している。


「チッ………見えにくいな。」


偽装のために装着したカラーコンタクトレンズが原因で、想像よりも苦戦していた。


偽装を取るか、能力を取るか──。

この状況に、彼は気が立っていた。



猫好きAの様子に気づいた蛇遣いは、声をかけた。



「ボス、既に遊泳使いたいんでしょ。」


「いや、それは流石に目立つから。」


ふたりは建物の屋根から歩道へ、スタッと着地した。


「うわぁ!!」



側を通りかかったスーツの男性が声を上げてよろけた。


「失礼。」


「すみませーん!」


赤信号の横断歩道を待たずに、ふたりは脇に止めてあった車を踏み台にすると反対側へと高く飛んだ。


「なんだ……??」


車線で停止する運転手には、早すぎて何かが通ったことしか分からなかった。



こうして、ふたりはどうにか梨人の登校経路を辿り目的地、岳陵第一高校の校門前に到着した。



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