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35 ツケておこうか? -Shall I pay for it?-

「てか、ボス……カードあっても、ここじゃルース使えないけど?」


「そうだよ、どうするの?」


猫好きAに視線を向ける、梨人と蛇遣い。


美雪は庭先に出ていき、リビングでは梨人と蛇遣い、猫好きAが座っている。


「あれ、もしかして知らない感じ?」


猫好きAは指に挟んだカードをピラピラと振りながら説明した。



「上空のキャッシュバンクってね、ここ(人間界)でいうATMと同じ機種なんだよ。提供も、人間界。」


「そうなの?!」

「そうだったのか!?」


嘘でしょ!?と声を弾ませる、ふたり。

猫好きAは説明を続ける。


「そしてこのカードをATMに挿すと、あら不思議。ルースが円になって出てきちゃうってワケ。」


説明し終えた彼は、寂しげな顔で蛇遣いに視線を送った。



「梨人はともかく。マスターは……知っていてもおかしくなかったよ。」


「悪いな、初耳で。」


蛇遣いが不服そうに口を曲げる。



「でもそれって…どういう仕組みなの?」


「仕組みは知らない。そういうものとしか。」


猫好きAはさあ?と言ったふうに肩をすくめている。


「えぇ……でもホント、不思議。人間界の裏システム?って感じがして。」


「裏もいいところだね。それに、梨人たちからしたら私たちの全てが不思議だろう?今更だよ。」



猫好きAは、巡影の中で人間界に精通するものに話を聞いたことがあった。


(確か……ルースと人間界のお金は互換性があるとかなんとか)


まあ──よく分からないことは口にしないが安全だろう。

こう考える猫好きAは意外と、慎重派なのかもしれない。


「ふむ、ふたり分だと……どのくらいかな。」


猫好きAはチラリと蛇遣いの方を見る。


「あっ……………。」

手持ちルースの額も知れている男が顔を引き攣らせている。


堕界した日、軽装で食材の調達に街をぶらついていただけの蛇遣いがカードを持ち歩いているはずもなかった。


「そんな顔しないで。ツケておこうか?」


「……お願いします。」


申し訳なさそうに顔を歪める蛇遣いに、猫好きAは笑ってしまった。


「ハハハッ、冗談。ツケるも何も、大したことじゃない。マスターならいいよ、私は。」


「ボスぅ………。」


サボるのではとジト目をキメ込んでいた、さっきまでの男はもうどこにもいない。

目の前に居るのは、ボス愛100%といった具合に目を潤ませている蛇遣いだ。


猫好きAは、この短時間で知らずのうちに自らの株を上げることに成功していた。


「この辺だと、ATMは?」


「うーん、近くだとノーソンかな。あとで案内するよ。」


リビングで秘密の話をする梨人たち。


そこに買い物を終えた玄恵と紘が帰宅した。


「ただいま〜。」


「すまない、誰か手伝ってくれ。」


玄恵と紘の後には、大きな荷物を抱えた美雪が。

ちょうどいいところにと庭先で捕まり、荷物運びの足にされたようだ。


「俺、持つよ。」


フィジカル強めの蛇遣いが真っ先に動いた。


(ボスにかかれば、あっという間なのにな。)


──というぼやきは、胸の内だけにして。


蛇遣いはリビングに荷物を下ろした。


「母さん、何をそんなに買ったの……。」


ショッピングバックに留まらず、ガサゴソと次から次へと袋が運び込まれてくる。


「わお……これはまた。大漁だ。」


猫好きAも、袋の量に目を丸くしている。


「最初ね、私達の冬服を見に行ったんだけど……気づいたらメンズ、買っちゃった。」


必要なんだし、いいわよねと予想外の散財に悪びれる様子のない玄恵。


玄恵と紘は猫好きAと蛇遣いに着せたい服を決めきれず結果、悩んだもの全てをレジに通してしまったようだ。


「……これ全部、(コウ)たちの服だってよ?」


「ありがたいけど……さすがに多すぎやしないかい?」


猫好きAは巡影でレディのファッションドールとして過ごした日々を思い出した。


レディとは、オートファッションの創立者でオート社の社長、レディオート・ガーデン。隠れ家(インカーポッド)の紅一点である。


彼女は男物の試作から新作までを全て、仲間に着せたがる厄介なタイプだった。


あの時のレディと同じく、目の前の姫君ふたりは楽しそうに目を輝かせている。


このパターンは────。


彼は、ドール再来を覚悟した。


レディオート・ガーデンは隠れ家で唯一の女性戦士です。

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