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34 スラックスの、中 -In the slacks-

今日は日曜日、待夜家が全員揃う休日──のはずだが、玄恵と紘は外出していた。

女性同士で、きっと回りたい店があったのだろう。


「コルクと(コウ)、必要なものがあったら書き出しておいて。私たちが買ってくるから。」


こう言ってメモを受け取った二人は、ルンルンと出掛けていってしまった。


待夜家のリビングには置いて行かれた男が四人、集まっている。


「家での役割についてなんだが、どうしようか?」


美雪が、話の指揮をとる。


「僕は大体、風呂掃除をしてるよ。」


待夜家の中で、梨人は風呂掃除ポジションのようだ。


「俺は……皿洗いかな。玄恵さんさえ良ければ、料理も手伝います。」


蛇遣いはキッチン担当を希望。


「そうなると、私は洗濯かな?」


(浮かせてしまえば、楽勝だね。)


猫好きAは、洗濯担当になりそうだ。


「よし。じゃあ、コルクは台所、好は洗濯。これで分担はオーケーだな。」


流れるように、待夜家での居候ミッションが締約された。


「はい、お父様に質問。」


猫好きAは何やら、聞きたいことがあるようだ。


「どうぞ?」


「仕事をこなせなかった場合って、居候はクビ?」


「……そうだなぁ、結果的に回れば問題ないんじゃないか?俺達もそこまで厳しくはないから。大丈夫。」


「承知。」


「いや、でもよ。"働かざる者食うべからず"って言うくらいだし……。」


蛇遣いが不安そうに猫好きAを見ている。


「誰もサボるとは言ってないだろう?留守にする時があるかもしれないから、聞いただけさ。」


「ああ、そういうことか。」


サボるきっかけを作ろうとしているように思えたのか、蛇遣いの目は微妙に疑っているように見えた。

「ボス」という割に、信頼はあっても信用はしきれていない様子。日頃の彼の行いが、大体掴めてきそうだ。


「あ、そうだった。」


何かを思い出したのだろうか。


猫好きAはおもむろにTシャツを捲ると、スラックスの中に白い手を滑り込ませた。


(働かざる者食うべからず、それはごもっとも。でも──私には今までのルースがある)


「エッ!?」


(堂々と何してるんだ、このヒト!!!!!)


動揺した梨人は思わず、声を上げてしまった。



「──?」

中から手を抜いた猫好きAは、キョトンとした表情をしている。


「梨人、何を驚いてるの。私はこれを取っただけだよ。」

そう言う猫好きAの手には、一枚のカードが握られている。

スラックスに手を入れたのは、内側についたポケットからこれ(カード)を取り出すためだった。


「なんちゅうところから……」


美雪も、梨人と同じリアクションをしている。



「うわ、ボス……そんな際どいところに隠してたんだな。」


「隠してなんていないよ、仕事柄さ。紛失の予防に。」 


空を飛ぶ彼は、ジャケットのポケットよりもぴったりとしたスラックスの締め付けに信頼を寄せているようだ。


猫好きAは、カードを真っ直ぐと指の間で立てた。



「家事の分担だけでは、住まわせてもらう対価に見合わない。だから先に、支払っておこうと思って。」


どうやら彼の手にあるこのカード、キャッシュ機能があるようだ。


「……そうは言ってもなあ。勝手に金を取るわけにも。」


困り顔の美雪に、猫好きAはニヤリと笑った。


「なら、感謝料とでも思って下さい。それに多分──罰金にもなり得るから。」


(やっぱりサボる気だな……?)


蛇遣いはジトっとした目で、悪そうに笑う隣の彼を見ていた。


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