24 痕跡 -Flashy traces-
蛇遣いと梨人は、時間を忘れて話に耽っていた。
「な?馬鹿だろ?」
「アッハハハハ……!」
蛇遣いはやんちゃな双子のお馬鹿エピソードを梨人に聞かせていた。
双子とは、そう─ピューマのイチ&キキョウである。
お調子者であり、雰囲気泥棒なふたりのエピソードは、会話に花を咲かせるにはもってこいの素材だった。
夜警だけに、雰囲気泥棒はナンセンスであるが──。
〜〜〜♪
外から、18時を知らせるチャイムが聞こえてきた。
「え、もうこんな時間。」
「うお、もう外が真っ暗だ。」
二階の部屋の窓からは、煌々と明かりが外へ漏れ出している。
梨人は急いでカーテンを閉めた。
蛇遣いと梨人が一階へ下りると、リビングでは紘が玄恵の膝の上で宿題をしていた。
「紘、おかえり。甘えた姫か?」
「遅いよ……!部屋で何してたの!!」
梨人の言葉を聞き流し、紘は蛇遣いにダイブした。
「お〜、おかえり。お前も勉強か?偉いな。」
蛇遣いに頭を撫でられているというのに、紘は不満気な表情をしている。
「なんで、むくれてるんだ……?」
蛇遣いはチラリと玄恵の方を見た。
「帰ってくるなり、梨人の部屋に行こうとするから。私が止めたの。」
内容は聞こえなかったが、梨人の部屋で楽しそうに談笑するふたりの声に気づいていた玄恵。
紘が邪魔をしないように、引き留めていたようだ。
「梨人と俺はな、友達になってたんだ。な?梨人。」
「う、うん。そうだよ。」
(秘密を知ったからには、友達ってこと……?)
梨人は若干、脅しに近い気迫を感じていた。
蛇遣いに、まったくそのような意図は無かったが──。
「……なんでずるいよ!ひいも!友達がいい!」
ねえねえとズボンを引っ張ってくる紘を、蛇遣いはヒョイと自分の肩に乗せた。
「俺らだって、友達に決まってるじゃないか。卵の殻を剥かない友達がどこにいる?」
「……なにそれ。」
適当すぎる機嫌取りに、梨人は笑ってしまっていた。
「紘、良かったじゃない。随分大きなお友達ね。」
「うん!」
ピンポーン、ピンポーン──
和気藹々と話しているところに、インターホンの音が響き渡る。
「誰かしら……?」
玄恵がモニター越しに確認すると、そこには制服を着た学生が二人見えた。
「梨人。鈴央くんと、もう一人女の子来てるんだけど…」
「ああ、出るよ。」
(苫男、彼女連れてウチに何の用だよ)
梨人は玄関のドアを開けて顔を出した。
「──何?」
「よお、リー子。今日、欠席したらしいじゃーん。」
ニヤニヤと笑う苫男の隣を見た梨人は驚いた。
「……え!?なんで矢城さん…?」
「こ、こんばんは。」
そこには、ファイルを抱えた実箏の姿があった。
「え?なんで二人が一緒にいるの??」
(苫男の彼女が──矢城さん?)
梨人は、二人が付き合っている可能性について考えていた。
「えっと、私が待夜くんのプリントを届けようと思ってたところに苫井くんが声をかけてくれて。家が近所だって言うから、案内してもらったの。」
「ええ、そんな。わざわざありがとう。助かるよ。」
──少し遡ること、放課後。
一日、梨人の姿を見ていなかった実箏が何気なく3組の教室を覗くと、梨人の席には無造作に置かれていた配布物が。
(どうしよう、届けてあげないと…。)
明日は休日。梨人が困っては可哀想だとMINEで連絡を入れるも、既読は一向に付かない。この時、梨人は蛇遣いと談笑中だった。
「プリントはともかく、ノートは使うよね……?」
梨人の席の前で悩んでいたところに偶然、教室の前を通りかかった苫男が声をかけ、今に至るという流れだ。
「連絡、つかなかったから相当具合悪いのかと思って。元気そうで良かった。」
「あ、ああ。大分良くなったよ。ありがとう。」
(異世界人が理由で休みました。すみません。)
異世界人が理由の欠席は、きっと人類で初の快挙ではないだろうか。
「じゃ、俺帰るわ。リー子、ちゃんとお粥食って、ねんねするんだぞ。」
(一言余計なんだよ。早く帰れ。)
「あ、苫井くん!ありがとう……!」
苫男は実箏と梨人にヒラヒラと手を振り、夜道に消えていった。
「あ、そういえば待夜くん。ニュースって見た?」
「ううん、見てない。何かあったの?」
「春御峠駅近くの電柱がすごい勢いで折れてたらしいよ。確か……イツモノマートの駐車場の裏だったかな。フェンスもペシャンコだったんだって。怖いよね。」
(え、イツモノマートってあの路地裏に近いんじゃ……?)
直感で、他人事ではない気がした。
このニュースはふたりの一件と何か関係があるかもしれない──梨人の勘が、そう伝えていた。




