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6話

 瑞希のノートの最後のメモ――

 「鍵はあそこに。先生に気をつけて」


 誠は思い出す。

 職員室裏の備品ロッカー。

 かつて誰も使わなかった“空き箱”。

 そこに、瑞希が“預けた”何かがある気がした。



 夜の校舎を歩き、誠はそのロッカーの前に立った。


 鍵はなかった。

 でも、ネジが一本だけゆるんでいるのを見つけ、ペン先でこじ開ける。


 中から出てきたのは、小さな箱だった。

 古ぼけた、花柄の缶。

 開けると、そこには一枚のSDカードと――手紙があった。



『これを見つけた誠くんへ』


**『ねえ、あの日のこと、私ずっと忘れられなかったんだ。

たぶん、忘れちゃいけないとも思ってた。


先生が、何かを隠そうとしたの、私は知ってる。

事故じゃない。


私が見たのは、「故意」だった。


……あのバスのブレーキ、故障してた。


でも、故障させた“誰か”がいた。

それを知ってた先生は、全部、学校ごと隠した。』**



 震える手で、誠はSDカードをスマホに挿し込んだ。


 再生されたのは――


 事故前日の、モノクロの監視映像だった。

 瑞希が、整備用の倉庫裏で、先生らしき男がブレーキの配線に何か細工しているのを“見てしまった”映像。


 男が振り返る。

 駒田――あの担任だった。



 そして映像の最後に、瑞希の後ろ姿が映った。


 「私、これ、残すから。消されたくないから」


 震えるような声。


「誠くんが、いつかこれ見つけてくれるって、信じてるから」



 誠の膝が崩れた。


 事故じゃなかった。

 それを、彼女は知っていた。

 ひとりで抱えて、笑っていた。



 「……なんで、俺に言わなかったんだよ……」


 その時だった。



「……誠」


 声がした。


 ふいに、あの夕焼けの日の匂いが、廊下に満ちる。

 振り返ると、そこには――瑞希が立っていた。


 白いシャツ、いつものスカート、胸元には青いネックレス。



「……来てくれて、ありがとう」

「君が来てくれるの、ずっと信じてたよ」



 誠は何も言えなかった。

 でも、瑞希は静かに微笑んだ。


 「もう、いいんだよ。これで全部、届いたから」


 「でも、お前は……」


 「私は、消えたんじゃない。残したの。誠に、託したの」



 風が吹いた。

 瑞希の姿が、ゆっくりと溶けていく。



「さよなら、誠。――ありがとう」



 翌朝、誠は警察に映像を提出し、真実は表に出た。

 事故として処理された事件は、再調査に。

 駒田は、静かに教職を退いた。



 春が来た。

 誠は駅前の桜並木を歩いていた。


 胸には、青い石のネックレス。


 もう、泣かない。

 彼女が命をかけて託した真実を、忘れないために。


急に終わらせちゃいました。

これからは短編を出していきたいと思います

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