幕間その3 かの神の企み
張り合いがない。
歌舞と静謐の神ル・ピーサはそんな感想を抱いていた。
「今回の試練も楽勝だったっち」
快活に笑うボルムパの言葉に、ル・ピーサは頷く。
「我らが首位を独走しておりますからね」
「だが、油断は出来まい」
鋭い一言を放ったのはルキナだった。
茜色の髪を揺らしながらも、被りを振っている。
「そ、そうですね」
ル・ピーサは気の抜けた自分自身を恥ずかしく思ってしまう。
祭壇までの道のりはまだまだ遠い。
気を抜いている場合ではないだろう。
「試練の攻略は勿論、今まで以上に配信を頑張らないとなりませんね」
「そうなると、やはり団結が重要っち」
「団結、ですか……」
ル・ピーサは考え込む。
古くからの友であるならばともかくとして、出会ったばかりの我々では難しいだろう。
時間さえあればどんな刃物でも断ち切れない強固な絆を築けるかもしれないが、神命新天の儀を悠長に成し遂げる余裕はない。
と、かの神は閃いた。
「ところで、クレイシとフユカゼの仲がとても良いですね」
「羨ましいですっち」
爽やかなクレイシと、冷淡なフユカゼという一見噛み合わない組み合わせだが、試練においては息の合った連携を見せることもある。
ル・ピーサのパートナーであるイドリナは体力や戦闘面においては不得意であるため、クレイシとフユカゼがいなければ切り抜けるのが難しい場面も多々あった。
「――クレイシの持つ魅力の賜物だろう」
ルキナはぼそりと告げる。
自慢をしないその姿勢に、ル・ピーサは感銘を受ける。
「ルキナ様とボムルパ様はチームを組む前から交流しておりましたね」
「会って早々に意気投合した」
「これも運命ですっち」
双方が頷き合っているのを見ていると、ル・ピーサはぽつりとこう口にした。
「もしかすると、一目惚れというものかもしれませんね」
「どうなのか。私には、そのようなことは分からん」
そっけなく口にするルキナを目にして、ル・ピーサは小さく笑う。
「何故、笑う?」
「これは失礼いたしました。ただ、あなたにもそのうち人の心が分かります」
「そう、なのか?」
「クレイシも、何か目標があって戦っております。彼のあの熱意を見れば、分かるでしょう」
「なるほど、な」
ル・ピーサは再度笑う。
神と人間の感覚には天と地ほどの差がある。
だからこそ、この試練を通じて少しでも歩み寄れれば。
そう考えると、望む世界はそう遠くないのかもしれない。
そんな確信を、ル・ピーサは誰にも気づかれぬように心中に抱くのだった――。
第四章 完




