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第二十二話 何故に抗うか

前回、泣き姫狐に追い詰められて絶体絶命となったイツハ。

逆転の手立てはあるのでしょうか?

それでは本編をどうぞ!

 イツハは手にしていたかんざしを高く掲げる。

 その瞬間、狐達は面白くらいにピタリと動きを止めた。


「これが欲しいんだろう!」


 頷きこそしないが、その物欲しそうな目つきは肯定していると見て間違いない。

 それほどまでに、彼らは目をギラギラと輝かせていたのだから。


『いっちゃん!?』

「いくぞっ!」


 ミュナの疑問の声を余所に、イツハはかんざしを明後日の方向へと放り投げた。

 傍から見ると、犬相手に遊んでいるようだ。

 彼は最初の試練にて相手したケルベッシュを思い出してしまう。

 鳴き姫狐もまた放り投げられたかんざしを追い、配下を伴いながらもイツハから離れていってしまう。


『えっと、狐にかんざしを渡しちゃったの?』


 ミュナの言葉に対し、イツハは軽く肩を竦める。


「渡してあげましたよ。まあ、タグは付いていなかったので近くで見ないと判別も難しいでしょうが」


 そう言いながらも、イツハは隠していたもう一本のかんざしを取り出した。


『かんざしが二本? 先程投げたかんざしは――もしや』

「うん。たまたまチャシーが作ったかんざしをさっき拾ったんだ」


 門の前でチャシーは自作したかんざしを落としていた。

 まさか、運よく拾い直すことが出来るとは。

 裏切られた結果、自分が助かるとは彼自身思いもしなかった。


『いっちゃん、今のうちに門から脱出――って、火に邪魔されているみたいね』

「泣き姫狐をどうにかしない限り、逃げられないということですね」


 ほんのわずかばかり狐の餌食となる時間が延びただけだ。

 焦りのせいでパニックに陥りそうになるも、ミュナとマァルナに支えられ、彼の正気をどうにか保ってくれていた。


『さっきの話の続きだけれども、天馬姫の様子を教えてちょうだい』

「はい。苦しそうにして、時折自分の方に手を伸ばしていて……」


 イツハの話を聞いて、ミュナは少し唸ってからこう切り出す。


『苦しそうに、そして狐と同化している状態……。呪いに詳しい訳ではないけど、もしかして天馬姫と狐は一緒に封印されちゃったのかも』

「一緒に? どうして?」

『祠に狐と天馬姫の遺骨がございました。それが関係しているのでございますか?』

『ええ、そうね』

「行方不明になったはずの天馬姫が埋められていたのも疑問です。でも、どうしてわざわざ一緒に封印する必要が?」

『天馬姫が狐に心を貸しすぎちゃったせいで、離れられなくなっちゃったのかもしれないわね』

「う、あともう少しで、このかんざしの真相に辿り着けそうなのですが……」


 早くしなければ、狐達が戻ってきてしまう。

 イツハの脳裏に、狐の犠牲となった他の参加者達の顔が蘇る。

 死亡する事態にはならないものの、あんなに恐ろしい目には誰だって遭いたくはないだろう。


『他に気になる所って、あとはどこかしら……』

『イツハ様。ミュナおばさま。祠で狐と天馬姫の頭蓋骨の額に穴が空いてございました。大きさからすると凶器はイツハ様の手にしているかんざしなのではございませんか?』

「え? これが凶器?」


 イツハは天馬姫のかんざしを注視していると、先端が鋭利であることに今更ながら気が付いた。


「――先端が血で曇っている?」


 断言は出来ないものの、単なる偶然と片付ける訳にもいかない。

 絵本の通りならば、モクハンが全てを解決したことになっている。

 だが、散らばった事実を整理して頭から見直してみると、モクハンの行動には不審な点がいくつもある。

 もしや、モクハンが今回の悲劇を生み出してしまったのではないか。

 イツハが残酷な真実の扉を見据えていると、狐達が戻ってきたことに気がついた。

 あまり時間を稼げず、狐達の怒りを燃え上がらせる結果になってしまったようだ。


「き、狐達が戻って来ました」


 イツハが呟いていると、泣き姫狐が彼の眼前にぬっと現れる。

 咥えていたかんざしを乱暴に放り捨ててから、よくも(たばか)ってくれたなという目線を彼へと向けた。


「ここまでか……」


 イツハが観念していると、すすり泣く声が大きくなっていることに気が付いた。

 上半身だけの天馬姫は何を思ったのか、口を大きく開いて泣き始めたのだ。


「な、なんだ?」


 氷水のように冷たく湿った声は聞いているだけでも身の毛がよだち、狐達も不快なのか身を震わせている。

 イツハも手にしていたかんざしを思わず足元へ落としてしまう。

 泣き姫狐が気を取られているうちに急がなければ。

 彼がかんざしを拾い上げると、あるものが目に入った。


「かんざしに飾られている家紋の裏――何かが彫ってある?」


 何かの模様だと思っていたが、注意深く眺めてみると一つ一つ形が違う。


「これはもしかすると文字か!? ミュナおばさん、これを見てください!」


 イツハが家紋の裏面が見えるようにかんざしを掲げていると、泣き姫狐が飛びかかって来る。

 体当たりを仕掛けて来たのか。

 彼はとっさに横っ飛びをして回避をするも、はずみでかんざしが手からすっぽ抜けてしまった。


「あっ!?」


 かんざしはイツハの後方へと飛んでいった。

 何という大失態をしでかしてしまったのか。

 イツハが自分の間抜けさを呪っていると、ミュナがこう叫ぶ。


『いっちゃん、今すぐ私を呼んでちょうだい!』

「え?」

『いいから!』


 ミュナに急かされてイツハが降臨のお札を取り出そうとした時に、泣き姫狐がかんざしを拾おうとしていることに気づいた。


『かんざしを持ち去られたらおしまいよ!』

「はい!」


 イツハは降臨のお札を取り出す。

 ミュナを呼び出せるのはほんのわずかの時間だ。

 果たして、何をするのだろうか。

 彼が祈ったその瞬間、彼の眼前に灰色の光が飛び交い、そして――。

ミュナおばさんは何に気が付いたのでしょうか?

泣き姫狐との戦いもいよいよ決着?

次回をご期待ください!


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。

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