第十五話 贄は深き場所へ
裏山へと向かったイツハとギガント。
まさか、この二人が手を組むとは。
さて、二人は何を発見するのでしょうか?
イツハ達はひたすら歩いていた。
タブレットのライトで前方を照らしつつ、剥き出しになった木の根や岩に転ばないように進んでいく。
時折、木々の合間から何かの視線を感じる。
まるで観察するかのようで、ねっとりとした嫌な視線だ。
イツハは負けじと睨み返してみるも、視線はますます増えるばかりだった。
今までの試練同様に狐も戯場と審判の神の創り出した演者に違いないのだろう。
だが、科学ではどうにも説明のつかない現象が起きており、それもまた演出の一環なのだろうか。
サメと戯れていた頃を懐かしく思っていると、彼はピタリと足を止める。
「これは?」
「どうしたんだよ?」
「いや、これは何かの通った跡かな」
「こりゃあ、キャタピラだな。戦車とかじゃねえ。多分重機の類だろうな」
「重機……」
イツハの脳裏にミュナが重機をぶん投げた光景が思い浮かんでしまう。
そのことは置いておき、周囲の低木は重機が無理矢理通ったせいか、低木が何本もへし折れている。
「学園長が張り切っていたことと関係があるのかな?」
「そうかもな。この轍を辿った先にあの祠があるってことだろ」
「あ、確かに」
イツハ達は轍に沿って進んでいく。
無理矢理地面を轢き潰した道を辿っていくことになるとは。
イツハは複雑な心境のまま足を動かしていると、ギガントが尋ねてくる。
「なあ、イツハ。お前は学校に通ったことはあるか?」
「いえ、全然覚えていないんです」
「つまらない奴だな。俺だって軍の学校で色々と学ばされたんだぜ」
「す、すみません……」
イツハは謝りながらも考える。
自分にも誰かから物事を教えて貰ったり、学友がいたのだろうか。
それから暫くすると、イツハは前方に見覚えのある木を発見した。
「あった。この根本に……」
映像と明らかに違うのは、巨木の根元に掘り返されたような形跡があった。
周辺に乱雑に捨てられた土砂の山々を見ていると、作業を急いでいたようにも見える。
「イツハ、どうしたんだよ?」」
「いや、天馬姫伝説に関することを調べたいのは分かるけども、わざわざ重機を使ったということは、元々この大木の根元に何かがあるって確信していたということかな?」
「そうなんじゃねえか? 現に、そのせいで封印とやらが解かれちまったみたいだしよ」
ギガントは肩を竦めてから、またポケットから干し肉の入ったビニール袋を取り出す。
封を切っているということは、干し肉の入った袋を複数持っていたようだ。
「学園長は何を見つけたんだろうか?」
イツハは根元をライトで照らしてみると、何か白い物が光を反射した。
「ん、ん?」
まるで誰何の声に反応したかのようだが、それはそれで気味が悪い。
イツハが目を凝らし続けると、その正体が何なのかが分かってしまった。
「ほ、骨……。骨がある!?」
「マジかよ!?」
イツハ達が恐る恐る近づくと、掘り起こされた地面から骨片が顔を覗かせている。
埋められてからどのぐらいの年月が経っているか分からないが、風化されまいとこの世に留まっているようにすら思えてしまう。
祠らしき構造物も発見したが、重機で掘り起こした際に破損してしまったのだろう。
イツハが砕けた石材を注視していると、その影に何かが見える。
「何だ?」
手に取ろうと、イツハが右手を伸ばしたその瞬間、指先がガタガタと震える。
ここで逃げてどうするというのだ。
彼がどうにかして、それを掴み、そして引っ張り上げた。
「お、おい。そりゃあ……」
ギガントが口をあんぐりと開けている。
イツハもまた呆然としてしまう。
「これは、動物の……」
「頭蓋骨だな。半分になっちまっているが」
イツハが手にしていたのは動物の頭蓋骨の右半分だった。
どんな動物かは分からないが、発達した犬歯から察するに肉食動物に違いないだろう。
「なあ、もしかしなくても、それって狐の頭蓋骨じゃねえか? いや、それにしてはデカイがよ」
「狐、か……」
イツハの脳裏に警告が走る。
もしや、この行動が狐の怒りを買うのではないだろうか。
彼が周囲を見ていると、視線にはありありと憎悪が込められていた。
「うっ……」
今すぐにでも襲い掛かって来そうなのだが、どうしてだか一歩も近づきそうにない。
『祠には近寄れないのかしらね?。それにしてもこの部屋って、不思議』
「部屋? ああ、今ミュナおばさんとマァルナがいる部屋のことですね」
祠に不思議な力が本当にあるのかイツハには分からないが、視線が恨めしそうにも見える点からも、そう考える他なかった。
「でも、どうしてこんな所に骨があるんだ?」
イツハは改めて石材の近くを調べると、頭蓋骨の左半分も発見した。
何となく、左右を合わせてみると――。
「何やってんだよ?」
「いや、何となく。でも、額に穴が空いている?」
左右の頭蓋骨を合わせてみると、何かを突き刺したような跡が額部分へ綺麗に残されていた。
「矢か銃でも受けたんじゃねえか?」
「どうなんだろう……。でも、狐の骨があるということは、誰かに倒されたってことかな?」
「そうじゃね? それで、封印をされていた、と」
「でも、学園長はこの狐の骨を探していた訳じゃないよね?」
「当然だろ。それだったら、こんな所に捨ててはおかねえぜ」
「だったら、学園長は何を探していたんだろう?」
イツハは首を傾げながらも、もう一度祠を調べてみることにした。
「俺はその辺りを調べてみるぜ」
ギガントはその場から離れている間に、イツハは祠の周辺をライトで照らす。
目立ったものは骨片以外にないと思っていたが、掘り返されて埋め直されている箇所を発見した。
気のせいかと思っていると、奇妙な頭痛が彼を襲った。
「ぐっ――!?」
これはセンスの技能のおかげなのか。
本能に揺り動かされ、イツハがその土を手で強引に掘り返す。
爪の合間に土と砂が入り込む感覚に苦戦しながらも、爪先に何か当たる。
彼は急いで砂を懸命に掻き分けてみる。
「これは――」
白くて丸い物が埋まっているようだ。
イツハが周りの砂を掻き分けていると、マァルナがこんなことを言い出す。
『視聴者の皆様、何が入っているのでございましょうか。私は不安な予感しかございません』
こんな時でも視聴者の配慮を忘れないマァルナに敬服しながらも、イツハは息を呑んでからそれを取り上げると――。
何やら不穏な雰囲気が漂います。
さて、天馬姫伝説への核心へとどうやら近づいているようです。
しかし、天馬姫伝説と脱出がどう関係していくのでしょうか?
次回をお楽しみくださいませ。
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それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。




