第五話 贄は巡る
以前の試練にて顔を合わせたことのあるギガントと出会ったイツハ。
ライバルがいる以上、のんびりと探索する時間もなさそう……。
さて、イツハは次にどこを探索するのでしょうか?
イツハが向かった先は――図書室だった。
『図書室へ行くのね』
「はい。先程の学校の歴史に関するページが落ちていたことからも、情報収集が重要かと思ったんです」
『図書室ならば何か手がかりがあるかもしれませんね』
「ただ、そんな簡単に行くとは思いませんが……」
イツハは目の前の扉を開こうと取っ手の部分に手を掛けて、横にスライドさせようとしたのだが――。
「あれ、開かない?」
『鍵が掛かっているのでございますか?』
『職員室は開いたのにね』
「くっ、強引にこじ開けるか……。いや、待てよ」
ホフリの剣の柄に手を伸ばしながらも、イツハは考え直す。
この試練は情報を収集した上での脱出が望まれている。
神と残されし者が協力するというのが試練のコンセプトである以上、鍵の破壊という裏道を行くのは危険だろう。
そんなことをしたら、即ペナルティが課されてもおかしくない。
何にせよ、この校舎内では心霊現象があり、防ぎようのない罰則として用いても何ら不思議でもないだろう。
「図書室は後回しにするしかないですね」
『残念ね~』
『そうなりますと、学園長室が重要かと思われますが』
「もしかすると、同じように鍵が掛かっているかもしれないね」
イツハが学園長室へと向かい、入り口の扉に手を掛ける。
しかし、鍵が掛かっており開くことはなかった。
『困ったわね』
「重要な場所には鍵が掛かっている所から察するに、鍵を見つけた部屋を優先的に調べる方針で行こうと思います」
『探す物が多いのでございますね』
「大変だよ。さて……」
イツハは仕方なく近くにあった事務室に入ろうと試みる。
もしやどの部屋にも鍵が掛かっているのではないかと思っていたが、流石にそこまで意地悪でもないようだ。
「開いてくれてよかった」
イツハはすんなりと開いた事務室へと足を踏み入れる。
『事務室ってどんなお部屋なのかしらね?』
「事務仕事をする場所、でしょうか?」
『恐らくそのようでございますね』
事務室へと入ってみると、第一印象としては事務机が並べられたやや狭い部屋だった。
「職員室と似ているな」
主に書類仕事をする部屋なのだろう。
事務机の上には文房具が置かれ、書きかけの書類が積み重ねられていた。
引き出しの中を調べてみるも、特にイツハの興味を惹くものはない。
『イツハ様。隅にある機械は印刷機でございましょうか?』
「印刷機?」
部屋の隅を見てみると、印刷機らしき機械が確かに置かれている。
用紙もセットされておらず、ボタンに触れても何の反応もない。
「電子機器の類は全部壊れているのか? ん?」
機械の取り出し口を見てみると、そこには見覚えのあるポスターが残っていた。
「かんざし祭りのポスターだ」
『この部屋で機械を使って印刷の作業をしていたのね』
『学園での大きなイベントなのでございますね』
「しかし、行われなかったのかもしれないですね」
『どうしてかしら?』
ミュナが一々聞いて来るのも、視聴者への配慮なのだろう。
よくよく考えると、視聴者を置いてけぼりにするのは問題だ。
イツハは説明を始める。
「イベントを終えたらポスターは剥がしますよね? 保険室に貼りっぱなしということは、かんざし祭りが行われる前にこの学園に何かしらの異変が起きたのかもしれません」
『その異変が脱出と関係あるのかしらね?』
「どうなのでしょうか……」
まだ断言は出来ない。
ただ、ほんの少しだけ前進していることを実感しながらも、イツハは他に何かないかを探してみると印刷機の影に何かが落ちているのに気付いた。
「これは……」
イツハが拾い上げてみると、それは奇妙な形をした石だった。
螺旋を描いた貝殻にどこか酷似していた。
「ん?」
白色の石をイツハが見つめていると、石が自然と彼の手の中で砕けてしまった。
あっという間に砂のように崩れ、彼が呆然としているその時だった。
『いっちゃん。今タブレットにメッセージが入ったのだけれども、どうやら祝福の器を拾ったみたいなの』
「祝福の器?」
『えっと、どうやらこの試練だけ使える特殊な技能を手に入れられたみたいなのよ』
「それは便利ですね。で、どんな技能か分かりますか?」
『第六感の冴えという技能ね』
『シックスセンスというものでございますか。何かに気づくことが出来るかもしれませんね』
「何かに、ね……」
イツハは引きつった笑いしか返せなかった。
探索にはかなり重要な技能となるだろう。
他人の手に届かない物を掴むことが出来るのだ。
だが、藪に潜んでいた蛇を起こす原因ともなるかもしれない。
「さてと……」
幸いにも心霊現象に巻き込まれはしなかったが、次はどうなるだろうか。
イツハは事務室を出て、どの部屋を探索しようか調べる前にあることが気になった。
「そうだ」
タブレットでドキドキ度を見てみると、何と80から30へと下がっていた。
「これは、まさか!」
『いっちゃん。どうしたの?』
「いえ、どうやら冷静な探索は視聴者の興奮を冷ましてしまうみたいです」
『冷静でない探索は非常に危険と思われます』
「た、確かに……」
イツハはこの試練を甘く見ていたことを思い知らされる。
探索するイツハとしては安全なルートを通りたくて仕方ないのだが、ただ単に脱出をするだけでは見ている方は退屈してしまう。
どうやら茨の道を強引に進まなければならないようだ。
彼が覚悟を固めているその時だった。
「何だ?」
どこからか叫び声がした。
耳にしているだけでも心がざわつく、そんな声だ。
「何が起こっているんだ?」
イツハは騒ぐ心を抑えながらも、声の方へと向かって行った――。
試練内専用の技能を手に入れたイツハ。
きっと役に立ってくれるに違いありません。
しかし、謎の叫びの正体とは?
気になる次回をご期待ください!
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それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。




