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第二十七話 望みがあるのだから

辛くもミサイルの攻撃から逃れたミュナおばさん御一行。

だが、このままではレースに負けてしまいそうです。

今回はモモカとの会話から物語が始まります。

『モモカちゃんは望む世界があるのよね』


 ミュナが微笑みを向けると、ややあってからモモカがこう答える。


『はい、だから、負けられないんです』

『とってもいいことよ。でも、戦う以上、負けちゃうってこともあるのよ』

『何を言いたいの?』


 酸素マスク越しでも、モモカはキョトンとしていた。

 確かに、この状況でミュナ達が巻き返すのは難しいだろう。

 

『もし負けちゃっても、モモカちゃんは立ち直れる?』

『変なことを言わないで――』

『変なことよね。でも、勝負は最後の最後まで分からないものなのよ。それだけは忘れないでね』

『私は、負けない、負けないから――』


 モモカは呼吸を荒くしながらも、囁くように呟く。

 今すぐにでも気絶しそうだが、執念にしがみつきながらも、懸命に抗っている――。

 イツハがそんな印象を抱きながらも、恐る恐るこう語りかけた。


「モモカ、最後に一つこれだけは聞かせてくれないか?」


 空気を読まない発言であったのはイツハも重々承知の上だ。

 だが、これだけは聞かないとモヤモヤした気分が晴れそうにない。


「ミサイルを撃ったのは、君の独断なのかい?」


 イツハのその問いに、モモカはチラリと目を逸らす。

 そして、小さな声でこう答えた。


『私、ではないです。ご迷惑をお掛けしました。では……』


 それだけ言ってからモモカはミーティングから退室してしまった。

 聞くべきではなかったのかと反省していると、ミュナがこんなことを言い出す。


『あの調子だと、ジェネックルに命令されたのね』

「いくら勝つためだと言ってもあんまりですね。モモカも相当無理をしているみたいですし」

『ええ……。強引に体調を整えているみたいだったわね』


 イツハはもう一度モモカの様子を思い出す。

 まるで自分自身に言い聞かせており、もしやと思い彼はこんな推測をしてみる。


「もしかすると、自己暗示の類かもしれないですね」

『自己暗示?』

「はい。自分に暗示を掛けて、強引に心を正常に保っているという感じかと。ユニーク技能が関係しているのかは分かりませんが……」

『いずれにせよ、モモカちゃんが可愛そうね……』


 ミュナの憂いに満ちた顔を見ていると、イツハとしても辛くて仕方なかった。

 このまま勝ってしまっていいものだろうか。

 モモカの望む世界でもいいのではないか。

 彼が悩んでいると、ミュナが話しかけてくる。


『いっちゃん、勝ちましょ』

「ミュナおばさん?」

『私達を応援してくれるファンがいるでしょ? 今更になって裏切れないわよ』


 イツハは頷きながらも、配信アプリのコメントを見てみる。

 そこにはミュナを応援するコメントが多数表示されていた。


*ミュナおばさん頑張って!

*イツハもしっかりとサポートしろ

*ジェネックルとかいうのが嫌い。だから勝って


「頑張らなくちゃな」


 イツハが呟いていると、マァルナが疑問の声を上げる。


「ミュナ様、グリムクラウンに追いつく手段がございますか?」

『うーん。どうしましょ?』

「え、ない感じですか?」

『モモカちゃんの前では格好つけちゃったわね。下手な攻撃も効果が無さそうね。あの子機だったかしら? さっきも飛んできた破片を強い光線を発射して消しちゃったのよ』

「え、光線?」

≪ちょ、それはレーザー兵器ですぜ!≫

「レーザー光は通常ですと見えませんが、恐らくミュナおばさまだからこそ感知出来たのでございますね」


 マァルナの説明にイツハも納得してしまう。

 神だからこそ知覚出来る世界が異なっているのだろうと。


『あの子機って凄いわよね。プカプカと浮いているもの』

「確かに。どういう原理で浮いているのでしょうか?」」

≪俺がチラっと聞いた話――いやあ、そのまだこの辺鄙な場所に来る前の頃なんですがね、妙な話を聞いたんですぜ≫

「妙な話?」

≪そうです。神の力がどうのだとか。眉唾な話なんですが、その当時は惑星間の長距離航行を実現すべく、神の力の一端を技術に取り込もうとしていたそうなんす≫

『神の力、ね』


 ミュナはほんの一瞬だけ険しい顔をするも、すぐさまいつもの穏やかな表情へと戻った。


『この話は関係なさそうね。どうにかして、あっちの飛行機の隙を付ければいいのだけれども……』

「隙と言われましても……」


 グリムクラウンがレーザー兵器を装備している以上、武器での攻撃は打ち消されてしまうし、下手に追い抜こうとしても撃ち落とされる危険性が高い、

 鉄壁の守りの他にも何かしらの武装をしている点と機動力を加味するとシュザーの勝ち目は薄い。


≪話しぶりを見ると、俺のように融通の利く人工知能じゃねえみたいですぜ≫


 そうなると、対処手段がないのではないか。

 イツハが悩んでいるその時だった。


≪マズったな。大将、おばさん。急がないと目標のポイントまで近づいていますぜ≫

「くっ、何か、いい方法は……」


 イツハが頭を抱える最中、その肩を誰かがポンポンと叩いて来る。

 後ろを振り向かなくても、彼はマァルナであることに気が付いた。


「融通が利かず、パイロットの安全を重視している……」

「マァルナ、どうしたんだい?」

「主をお守りしたいという気持ちが痛いほど分かります」

「そうなんだね」

「この点を逆手に取れませんでしょうか」

「う、うん? いや、それが出来ればいいのだけれども……」


 弱点がない訳ではなさそうだ。

 しかし、何が弱点なのだろうか。

 イツハは思い切ってシュザーにこう質問する。


「シュザー。戦闘機の弱点って何かあるのかい?」

≪弱点ですかい? うーん、地対空ミサイルとか個人的に悪天候は嫌いですぜ≫

「悪天候か……」

『うーん、天候ね。それに似たような神魂術はあるけれどもかなり危険なのよ』

「あ、あるんですか……」


 どういう神魂術なのか気になるが、詳しく聞いている時間はないだろう。


「悪天候……。シュザー様、少々よろしいでしょうか?」

 

 マァルナがシュザーにある質問をする。

 その話を聞き、今度はミュナへと質問をした。


「ミュナおばさま、こういったことは可能でしょうか?」


 マァルナはやや早口でミュナへと話しかける。

 興奮したような口調に聞こえるのは気のせいだろうか。

 そして、その内容を聞いて、ミュナはこう答える。


『え、出来るけれども』

「で、出来ちゃうんですか?」

『ええ。で、上手くいけば、私があっちの飛行機の上でジェネックルと戦うわね』

「え、どうしてですか?」

『子機を壊しておかないと、しゅざーちゃんがゴール出来ないでしょ。そのついでにジェネックルにお仕置きするだけよ』


 ミュナが微笑んでいる点からすると、ジェネックルに怒りを覚えているのだろう。


『さてと、戦いに備えて私も力を引き上げとかないと』

「やるんですね?」

『そ、成功するかどうか分からないけれども……』

≪けれども?≫」

『やれるだけのことをやるだけよ』


 ミュナはにこやかに笑う。

 そして、クルリと振り返る。

 その目線の先にはただただ翼を羽ばたかせて戦闘機へと近づく準天使達の姿があった。


「視聴者の皆~! さっきは一方的に殴られちゃったけれども、今度はおばさんが反撃するからね~! ご期待していてね♪」

果たして、強敵にどう立ち向かうのでしょうか?

ミュナおばさんの反撃をご期待ください!


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。

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