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第十八話 怒涛の猛攻を前にして

前回、危機的状況となったミュナおばさん御一行。

果たして、イツハは無事なのでしょうか?

 イツハは痛みで正気を取り戻す。

 誰かが彼の腕を強引に引っ張り、その結果彼は成すすべもなく荷台に尻を打ち付けたおかげで。


「いたた……」


 イツハが痛がっているその時、発砲音が連続で微かに聞こえる。

 荷台を貫通してもおかしくないだろうが、不思議なことに銃弾が彼の身体を撃ちぬく事態にはなっていなかった。


「マァルナ、大丈夫か?」

「はい、私は無事でございます」


 イツハのすぐ近くにマァルナはいた。

 先程彼を強引に着席させたのも彼女のおかげでもあった。


「いっちゃん、ルナちゃん……。無事で何よりだけれども」


 ミュナが困った顔をしている。

 一体、何が起こったのかと思い、荷台の様子を確認してみると――。


「あ、タイヤが壊されている!?」


 車軸部分がポキリと折れてしまっており、これではリヤカーとして機能しない。

 イツハが愕然(がくぜん)としていると、甲高い笑い声が聞こえてくる。


「はっはっは! それでは進むことも出来んだろう!」


 ジャガージャックとアンモルはイツハ達へと歩み寄ってくる。

 既に勝利を確信しているのだろう。

 その足取りは実に悠々としていた。


「そのようね」

「ちょっと待ってください。もしかして、ゴム弾を使いました?」


 イツハはアンモルへと話しかけるも、言葉が通じるはずもない。

 はずもないのだが――。


「はい。ご明察(めいさつ)の通りです」


 アンモルはしっかりとした発音で、確かにイツハへ伝わる言葉で伝えて来た。


「え?」


 不思議な現象だった。

 最初はグジュグジュという粘着質な音を口と思われる部分から発し、どうやらこれがアンモルの発音らしいと思っていたのだが、まるで通訳者が訳したかのようにはっきりと言葉の意味が理解できたのだ。


「どうして……」

「恐らく、シアトゥマか他の神のおかげかもしれないわね。残されし者達で会話が出来なかったら面倒でしょ?」

「そ、そうかもしれないですね」


 神々が間に入って通訳して貰うというのもあるが、それはそれでテンポが悪くなってしまう。

 思えばギガントやアケルとも違和感なく喋ることが出来ていたことをイツハは今になって思い返す。

 イツハはアンモルへと向き直り、改めて説明を求める。


「えっと、どうしてゴム弾を……」

「いや、だって危ないじゃん」


 即答したのは――ジャガージャックだった。


「え?」

「視聴者の前でスプラッター的な展開はマズイじゃん」

「あ、はい」


 思った以上にまともな回答だ。

 というか、なんだこの神。

 まるでキャラが掴めないことに、イツハは苛立ちに似た感情を覚えてしまう。


「しかし、かなり優れた銃の腕前なんですね。高速で連射をしていませんでしたか?」

「元々銃器には興味はありますが、あの連射は私のユニーク技能『怒涛の猛攻』のおかげです」

「なるほど……」


 アンモルも鼻高々と言わんばかりに機嫌が良さそうだ。

 最も彼には鼻がなく、くねくねと蠢く触手から判断せざるを得なかったが。


「それでは某達にはやることがあるので、これにて失礼!」


 ジャガージャックはアンモルを自身のリヤカーの荷台に乗せると、甲高い笑い声を置き去りにしてその場から去ってしまった。


「ここで、棄権か……」


 イツハが肩を落としていると、ミュナがその肩を優しく叩く。


「いっちゃん。私はまだ諦めていないわよ」

「ミュナおばさん……。でも、」


「私めにお任せを」


 そう言いながらも、マァルナが自身の左手で右手首を大きく回す。

 すると、彼女の右手首がポロリと外れ、断面から金属製の管が飛び出す。


「ルナちゃん?」

「ご心配なく。今から破損個所を接着いたします」

「ど、どうやって?」


 イツハは溶接をするのかと思いきや、どうにも違うようだ。

 マァルナは管の先から液体を出し、それを車軸の破損個所へと垂らしている。


「ん――?」


 イツハは目を疑う。

 車軸の折れた箇所がみるみるうちに塞がり、暫くすると何事もなかったかのようにくっ付いてしまった。


「ルナちゃん、これは一体?」

「私の体内にあるテクネ・プレートレット――破損時に機体を修復する超微小機械を塗布いたしました」

「機械用の医療ナノマシンみたいなものか」

「左様でございます。最もこのような使い方は本来推奨されておりません」


 イツハとマァルナの会話を耳にして、ミュナは右へ左へと首を傾げている。

 時間があれば説明してあげよう。

 彼はそう思いながらも、マァルナにこう返答する。


「まあ、接着剤代わりにするのは本来の用途とは違うよね」

「その通りでございます。最もテクネ・プレートレットへ事細かに指示しなければならず、金属同士の単純な接着はともかく、複雑なものとなると膨大な演算処理が必要となります」

「そ、そうなのか……。マァルナありがとう」

「ルナちゃんありがと~」


 ミュナはマァルナへとギュッと抱き着く。

 その微笑ましい様子を見ていると――。


「イツハ様もなさいますか?」

「え?」


 イツハは目を白黒させる。

 マァルナが何を言っているのか理解できなかったからだ。


「なさるって……何を?」

「ハグでございますが」

「いや、しないから!」

「えー、いっちゃんハグしないの~?」


 そう言いながらもミュナはマァルナの頭をナデナデしている。


「ミュナおばさん。早く行かないと追いつけませんよ!」

「では、行きましょ」


 イツハとマァルナは荷台に乗ると、ミュナがリヤカーのハンドルを握る。

 リヤカーは再度走り出す。

 果たして、ジャガージャックとアンモルのコンビに勝てるのだろうか。

 後方でカメラを構えて懸命に追ってくる準天使を尻目に、イツハはポケットからタブレットを取り出す。

 嫌な予感を覚えながらもコメントを見てみると――。


 *イツハ、許さん

 *おう、ハグするなよ

 *流石に空気は読んだか


 そんな辛辣なコメントが並んでいたが、逆にイツハは安心してしまう。

 もし、あのままハグをしていたならば炎上していたに違いない。


「皆~! これからがおばさん達の逆転よ~!」


 ミュナがカメラに向かって拳を上げる。

 イツハとマァルナも真似するかのように天に向かって拳を突き上げた――。

思った以上に濃いキャラのジャガージャック――。

そんな強敵にどう立ち向かうのでしょうか?

次回、十九話「逆転のための進撃」!

ご期待ください!


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。

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