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第十七話 凶弾に狙われて

有利な状況で進むミュナおばさん御一行。

しかし、このまま圧勝という訳にもいかないようです。

さて、それでは本編をどうぞ!

 下り坂というのはそもそも危険な場所なのだ。

 時と場合によっては上り坂よりも危険だ。

 無理矢理急ブレーキで止まりたい時もあるが、そんな場合に限って手遅れなこともままある。

 そして、今イツハは命の危機を感じていた。


「イツハ様?」

「だ、大丈夫だから、その、揺らさないでくれないかな……」


 マァルナに身体を揺らされ、イツハは小さく呻いた。

 舗装された坂だが、荷台が揺れない訳ではない。

 そして何しろ下り坂で加速しているのだから、ガタガタと踊るように揺れてしまう。

 イツハは気を紛らわせようとタブレットにて配信の状況を見ようとしたが、この状況下で近くの物を見る行為がどれほど危険なのやら。

 彼は胃の辺りを擦りながらも、呼吸を整える。


「それにしても、銃を持っているなんて危ないわね~」

「まあ、そうですね……」

「どこで手に入れたのでございましょうか?」


 イツハとしては、アンモルに対して文句を言うのは筋違いだと思っている。

 アンモルが使って来た銃は、恐らく試練へ向かう道中で手に入れた代物だろう。

 始まりへ続く終着点に落ちているガラクタを使っても特に問題はない。

 現に、イツハ達もマァルナを同行させているのだ。

 それに何が起こるか分からない試練において、武装するなというのも無茶な話だ。


「イツハ様。下り坂があともう少しで終わりそうです」

「それは、助かる……」

「ですが、ジャガーノック一行と合流しそうです」

「な、何だって……」


 驚きのあまりイツハは叫びそうになるも、今の彼にはそんな気力はなかった。

 彼は再度呼吸を整えながらも前方を見据えると、そこには三つに分かれた道が一つの道に合流していた。

 今の所ジャガーノック達は後方にいる。

 このまま逃げ切れれば――というのはあまりにも安直な考えだ。


「いっちゃん、ルナちゃん。後ろを見といてね」

「はい」


 イツハが考えるにジャガーノックのあの性格から考えると、ただでは勝たせてはくれないだろう。

 やがて、三本の道が合流する地点へとイツハ達は辿り着いた。

 果たして、どう出てくるかとイツハが後ろを確認していると――。


「ん?」


 嫌な音がした。

 地を鳴らし、怒涛の勢いで迫ってくる――。

 死の気配とは静かに忍び寄って来ないこともあるらしい。


「マズイな……」


 このままではいずれ追いつかれるだろう。

 すると、ミュナが何かに気づいたのかイツハ達に声を掛けてくる。


「また箱があるわね」

「あ、本当ですね」


 箱は如何にも取ってくださいと台座の上にちょこんと置かれている。

 よくよく考えてみると、これまた面白いシステムだなとイツハは感心する。

 リヤカーを牽いている以上、どうしても後方からの攻撃に弱くなってしまう。

 だが、相手の組よりも先行することで、妨害に役立つアイテムが手に入る――かもしれないのだ。


「いっちゃん。開封お願いね」

「は、はい!」


 イツハがミュナから手渡された箱を開けると、その中には針金の束が入っていた。

 付属の説明書に特別な力が込められているとか書いてあればよかったのだが、説明書どころかレシートも入っていない以上、単なる針金なのだろう。


「う、これまたどう使えば……」


 工夫次第では役に立つかもしれないが、果たしてどうすればいいのか。

 イツハが考えていると、騒がしくタイヤが回る音と共に、ジャガーノック達が追い付いてきた。


「はっはっは! 待たせてしまった! さあ、これからが某の快進撃の始まりだ!」

「えっと、戦わなければならない感じかしら?」

「安心しろ! すぐに終わる!」

「そうなの?」

「何故ならば、お前達はとっとと棄権するからだ!」


 その声を合図に、荷台に乗っていたアンモルが銃を構える。

 二丁の銃を触手で器用に操り、その銃口はイツハ達へと向けられていた。


「リボルバー式の拳銃か!」


 アンモルが手にしているのは弾倉が回転するタイプの拳銃だ。

 イツハの知っている銃と比べると、骨董品という印象が強い。

 だが、決して侮ることの出来ない威力を秘めた銃火器であることには変わりない。


「アンモル閣下もお前達を撃ちたくないと言っている――うむ、某、感激しちゃう♪」

「あ、はい」


 アンモルはどこか複雑そうな目でイツハ達を見つめている。

 やがて、ジャガーノックと並走する形となってから、アンモルは二丁の銃の引き金に触手をかけて――。


「来るか……!」


 距離からして弾丸が急所に直撃すれば間違いなく致命傷だ。

 狭い荷台の中では逃げることも隠れることも出来ない。

 イツハがマァルナを庇う形で剣を構えていると――。


「させないわよ~」


 ミュナが素早く詠唱をすると、先程と同じように灰のカーテンが出現し、ジャガーノックを妨害する形で立ち塞がる。

 これならば、近距離と言えども銃撃は防げるだろう。

 しかし、イツハの安堵を打ち破るかのように、増長と暴走の神の叫びが聞こえた。


「その程度か!? 笑止!」


 灰のカーテンの向こう側で何をしようというのだろうか。


「あの構えは――神代の秘剣!?」

「え? ジャガーノックも使うんですか?」


 イツハの脳裏にトレンとの戦いが蘇る。

 人間ならば瞬時に炭化するであろうあの一閃――。

 それと同じようなものが来るとなると、流石に危険だ。


「急ブレーキするわよ!」

「消え去るがいい! 【破天嵐(はてんらん)】!」


 ミュナとジャガーノックの叫びが重なる。

 イツハはとっさに丸めた身体を荷台に打ち付けつつも、すぐさまその場で立ち上がる。

 痛む身体を余所に、イツハは驚愕した。


「あれ? 灰が――」


 身を守ってくれていたはずの灰のカーテンがどこにも見当たらない。

 ドヤ顔をしているジャガーノックの手には、短剣が握られていた。

 まさか、あの短剣でミュナの神魂術を打ち破ったというのか。

 イツハが呆然としていると、ミュナが真剣な表情で彼を睨む。


「いっちゃん! しゃがんで!」

「え……」


 イツハは呆けていた。

 安全だと思っていた状況が一瞬にしてどん底へと叩き落とされたショックのせいだろう。

 そして、気づいた瞬間には全てが遅かった。

 アンモルが待っていたとばかりに拳銃の引き金を引き――。

まさかの神代の秘剣により、ミュナおばさんの術が破れてしまうとは!?

さて、次回はどうなるのでしょうか。

どうかご期待ください。


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。

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