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第十二話 波乱は続く

アケル達に勝利したミュナおばさん一行。

しかし、まだ油断は出来そうにないです。

さて、どんな展開が待ち受けているのでしょうか?

 危機を切り抜けたところで、また次の危機が襲ってくる。

 イツハはそう考えるだけでも、苛立ちを覚えた心がざわつき始めるのを感じた。


「いっちゃん。さっきから黙ったままだけれども――」

「いえ、エボルアの次にしてくることを考えると、落ち着いていられないんです」

「次にしてくることでございますか?」

「恐らく乗っていたサメを進化させると思う」

「そうよね。そんなことをしたら――」

「そんなことをしたら?」


 イツハが聞き返すと、ミュナは当然とばかりにこう答える。


「かっこいいでしょ?」

「え、あ、はい」


 すると、ミュナは口を尖らせてから続ける。


「大切な事よ?」

「大切って――」

「かっこいいサメと共に逆転勝利――。とっても盛り上がると思うのよ」

「視聴者の心を鷲掴み出来ると思われます」

「い、言われてみれば……」


 イツハは目を瞬かせる。

 これは配信だ。

 大勢の皆を(とりこ)にしたものの勝ちだ。


「他にもね、エボルアはやろうと思えば、プランクトンに猛毒を持つように進化させることも可能だったはずよ」

「猛毒ですか?」

「そ、猛毒を持ったプランクトンをブルーノ君に嚙みつかせるなんてことをされたらどう?」

「あ……」


 イツハは言葉を失う。

 今になって自分自身があまりにも間抜けだったことに気が付いたからだ。


「視聴者からの好感もあると思うけれども、恐らくさっきの桶の破壊を狙ったのはアケルちゃんの意向ね」

「降参を促してきたのも、彼なりの優しさがあったからこそですかね」


 もしもエボルアがアケル以外の人間と組んでいたらと思うと、イツハは生きた心地がしなかった。

 しかし、アケルがこのまま引き下がる訳もないだろう。

 彼は緊張感をやわらげるため、タブレットに目を通すとそこには視聴者からのコメントが並んでいた。

 イツハに関するコメントは見られず、ミュナを応援したり、賛美するコメントが溢れている中で、マァルナに関するものが増えていた。


 *マァルナちゃん、可愛い

 *手を振って~

 *イツハそこどけ


「マァルナ。大人気だね」


 イツハが横にいたマァルナにタブレットを見せる。

 すると、マァルナは期待に応えるかのようにカメラに向かって手を振ると、喜びの声が返ってきた。


「む! おばさんも負けていられないわね~」


 ミュナも負けじと準天使に向かって手を振る。


「これならば……」


 盛り上がっているならば、応援ポイントとファン数が増加しているに違いない。

 そんなことを考えながらもイツハはタブレットを覗き込む。


 登録者:イツハ

 応援ポイント  :6025p

 累計応援ポイント:8240p

 ファン数    : 355名


「ポイントにも余裕が出て来たな」


 折角だから、シャークライダーの技能レベルを上げてもいいかもしれない。

 イツハがタブレットを操作すると、レベル2までは3000p必要らしい。


「あれ?」


 ポイントは余裕で足りているのだが選択が出来ない。

 アプリ内で表示されたメッセージを目にして、イツハは小さな声を上げる。


「必要ファン数が500名だって?」


 これは盲点だった。

 技能のレベルアップにはファン数が関係しているとなると、単純に応援ポイントを稼ぐだけではダメらしい。


「イツハ様」

「ど、どうしたんだい?」

「あれをご覧くださいませ」

「え?」


 マァルナが後方を指さしている。

 何か巨大な物が波しぶきを上げて、イツハ達の方へと急接近してくるのが見て取れる。


「いっちゃん! 来るわよ!」

「アケル達か!」


 イツハが再度背後を振り向くと――。


「おいおい……」


 アケル達が捕獲していたのは確かハイパーハンマーヘッドという名前のサメだった。

 名は体を表すというのならば、(つち)のような頭部が相応しいはずだ。

 だのに、どういうことだか、後方にいるサメの頭部の中心には長い角が伸びていた。

 骨を強引に発達させたのか槍のようにも見え、人間の胴程度など容易く貫けるに違いない。

 そして、その背にはアケルの他にエボルアの姿があった。

 どうやらエボルアの乗っていた桶は無事プランクトン達のご馳走となってしまったのだろう。


「イツハ様。サメ同士の肉弾戦となると不利でございます」

「ああ。しかし、どうやって泳ぐ速度を上昇させているんだ?」


 先程まで泳ぐ速度ではブルーノ君の方が勝っていたはずだ。

 頭部の変化だけで速度の上昇は難しいだろう。


「うーん、恐らく皮膚の構造を変化させたんじゃないかしら?」

「構造を、ですか?」

「そ、サメ肌ってザラザラしているでしょ? あれは水の抵抗を抑えるためよ」

「それを更に改良したということですか? それならば、最初からそのように進化させれば良かったのでは……」

『それではつまらないじゃろ?』


 タブレットからエボルアの声が聞こえる。

 イツハは恐る恐る言葉を返した。


「つまらない?」

『そうじゃ。ほれ、単独ぶっちぎりでレースに勝ったところで、視聴者は興奮するかの?』

「そうよね~」

『それに短期間で進化をさせると、体力を削ってしまうからのう。カイザー君が可愛そうになってしまう』

「カイザー君? ああ、そちらのサメのお名前でしたか」

『左様。さあ、この進化と真価の神であるエボルア=エボリアの実力を見せてやるかの!』

「進化と真価――。とても分かりやすい神権を持っているのね」

『イツハさん! ミュナさん! 痛い目に遭いたくなかったら、とっとと降参してください!』


 声を張り上げるアケルを見ると、どうやら勇気を振り絞っての発言のようだ。

 その顔は戦地へと赴き、初めて敵に銃を突きつける兵士を彷彿とさせる。


「嫌だと言ったら?」

『力づくで降参して貰います! さあ、頑張ってカイザー君!』


 カイザー君がブルーノ君へと接近しつつも頭部の角を振りかざす。

 鉄板すらも貫通しそうであり、まともに喰らったらいくら大海の王者といえども致命的だ。


「させない!」


 ミュナはスリッパを構え、カイザー君の角による攻撃を防ぐ。

 一見シュールだが、大真面目に戦っている。

 だが、イツハはあることを思い出した。


「ミュナおばさん。神は神の力でないと傷つけられないんですよね?」

「ええ、そうよ」

「ならば、カイザー君はミュナおばさんを傷つけられないのではないでしょうか?」

「いっちゃん、思い出して。試練に出てくる生き物は皆、シアトゥマの創り出した演者よ。つまり、神の力で作り出されているものなのよ」

「え!? じゃあ、カイザー君は神にも攻撃が出来るということですか!?」

「そういうことになるかしら」


 ミュナが頷きながらもスリッパを振りかざす姿を見て、イツハは流れ出た額の汗を拭う。


「どうすれば……。ん?」


 ミュナが思った以上に手ごわかったせいか、アケルは角での攻撃を諦めてブルーノ君へと並走する形で泳ぎ出す。

 もしやと思い、イツハはカイザー君から距離を離そうとするも間に合いそうにない。


「敵の体当たりが来ます! 掴まって!」


 マァルナがイツハの身体に掴まり、ミュナも振り落とされないよう桶に掴まっている。

 次の瞬間、カイザー君がブルーノ君へ体当たりを敢行した。


「うおっ!?」


 すさまじい衝撃に身体が揺れる。

 足場も狭い上にイツハのすぐ隣にはマァルナがいる。

 下手をすれば二人して海にダイビングする羽目になるだろう。


「あ、危なかったな……」


 イツハは小さくため息を零す。

 何とか耐えることが出来たものの、あともう半歩程でブルーノ君の背中から落ちるところだった。


「マァルナ、大丈夫?」

「無事でございます」

「よかった……。ミュナおばさんは!?」

「私も大丈夫よ~」


 ミュナも何とか無事だったようだが、連続で体当たりをされたら今度こそ危険だ。

 タブレットからも、ミュナとマァルナを心配するコメントが流れてきている。

 こう考えると、ピンチになることで視聴者との共感も得られるものだなとイツハは考えてしまう。


「ん……?」


 イツハがカイザー君の方に目をやると、エボルアがバランスを崩して落ちそうになっていた。

 慌ててアケルがエボルアを抱き止めたことで何とか海に落ちずに済んだようだ。


『ふう、危なったのう……』

『博士! ごめんなさい!』

『ほっほっほ、気にしなくてもよい! どのみち、このまま逃げ切ればワシ達の勝ちじゃからのう!』


 エボルアの言う通り、今の体当たりでカイザー君が先行する形となってしまった。

 あくまでもレースであるため、わざわざイツハ達を倒す必要はない。

 だが――。


「ミュナおばさん。この海の他にも、他の場所でのレースがあるんですよね?」

「え、そうなの?」

「ミュナおばさま。釣りを教えてくださった男性が、海を越え、大地を駆け、そして天空の先に辿り着きし者が試練を成し遂げると言っておりました」

「うーん。レッツシャークのせいでうっかりしていたわね……。私達よりも先に行っているコンビが見当たらない以上、もう上陸している可能性もありそうね」


 いずれにせよ、ここでアケル達と大きく差を付けられては不利だ。

 しかし、どうやってカイザー君を追い越せばいいのかとイツハが悩んでいる時だった。


『な……。アケル君、今のを聞いたかの?』

『博士? 僕は薄々と気が付いていました』

『そ、それを早く言ってくれんかのう!? 加速をお願いしてもよいかのう?』

『はい!』


 エボルアの言葉にイツハは首を傾げる。

 シャークライダーの技能はサメを乗りこなすだけのものだが、レベルを上げることで加速出来る技が習得出来るのだろうか。

 もしや、そのほかにアケルが何かしらの手段で加速出来る方法を持っているということなのだろうか。

 すると、タブレットに表示されているアケルが大きく息を吸い込み――。


『カイザー君! 全速だーっ!』


 精一杯の叫びが響き渡る。

 可愛らしい応援かと思いきや、目に見えてカイザー君の動きが機敏になるのがイツハにもわかった。


「そんな応援をされただけで――。はっ!?」

「いっちゃん! 何に気づいたの?」

「もしや、今のがアケルのユニーク技能なのか!?」

ついに本領を発揮した進化と真価の神――エボルア=エボリア。

果たして、ミュナおばさん達は強敵に打ち勝つことが出来るのでしょうか?


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。

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