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第九話 コンパスを手にして

前回、サメではなくマンボウを釣ってしまったミュナおばさん達。

マンボウでは大海を渡ることは出来ない。

果たして、サメを釣ることは出来るのでしょうか?

「こ、この手応えは!?」


 イツハの両手にズシリとくる手ごたえが来た。

 とんでもない重量に、彼の腕の筋肉は叫び声を上げている。


「イツハ様!」

「いっちゃん!」


 今度はミュナも手伝ってくれるらしい。

 三名で釣り竿を持って全力で引っ張り上げると、それは海中から勢いよく飛び出て来た。


「で、デカイ!?」


 マンボウ次郎よりも大きなサメだ。

 顔には大きな傷がいくつも付いており、歴戦の覇者であることが伺える。

 今もなおイツハを睨み、決して人へと媚びを売らないであろうことが確信できる。


「お見事でございます!」

「ああ!」


 皆で喜んでいると、タブレットからも驚きと称賛の声が聞こえてくる。

 やはり、大物が釣れると誰もがテンションを自然と上げてしまうものだ。

 しかし、ミュナだけは違っていた。


「うーん……」

「どうされましたか?」


 ミュナは深刻な顔をして悩んでいる。

 その片手には釣り竿を手にしており、サメが宙ぶらりんの状態になっている。

 折角の大物だというのに、凶暴だから警戒しているのか。

 そして、ミュナは自身の金髪をもう片方の空いた手で撫でながら口を動かす。


「どんなニックネームがいいかしら?」

「そ、そっちですか?」


 そんなことを考えながらも、サメをじっと見つめる。

 俎上(そじょう)(こい)ならぬ、おばさんに釣られたサメというべきか。

 いずれにせよ、その値踏みをするような神の目つきは対象に畏怖の感情を与えるらしい。

 目つきがどこか柔らかくなったのを見て、かの神は満足そうに笑う。


「ブルーノ君! ブルーノ君に決定よ!」

「素敵なお名前でございますね」

「マンボウ次郎君に感謝ねって、あれ? どこかに行っちゃったわね」


 どこがどう刺さってブルーノ君となってしまったのか。

 イツハがブルーノ君に同情していると、ドタバタと慌ただしい足音が聞こえて来た。


「おおっ!? これはキングホホジロザメじゃないか!?」


 釣り好きの男が仰天した様子でサメを眺めている。

 やはり大物に違いないのだろう。


「とてもシャイな性格だ! 王者の癖に! でも最強のサメだ!」

「あ、はい」

「ふふ、ついつい熱くなってしまった……。では、急いで持って来よう!」


 怒ったり、はしゃいだり、解説したりと、釣り好きの男は大層慌ただしい。

 その場から去ってしばらくすると、男は木製の桶を担いで来た。


「お待たせしたね!」


 桶の中にはサメへと取り付ける器具が入っている。

 サメの胴体に取り付けるベルトに、桶を牽引するロープ。

 カーボンファイバー製らしく、丈夫な素材であることにイツハは安心した。


「これをサメへと取り付けることで、君達はサメと共に大海原へと旅立つことが出来るのだ!」

「え、えぇ……」


 そして改めて説明されると正気を疑ってしまう話だ。

 だが、これが試練なのだから文句を言わずに従う他ない。


「えっと、取り付け貰っていいかしら?」

「は、はい!」


 イツハとマァルナはぶら下がった状態のブルーノ君へ急いで器具を取り付ける。

 ブルーノ君が酸欠で苦しむ前にどうにか取り付け終え、ミュナはブルーノ君を海へと戻してあげた。


「さあ行きたまえ! 目的の場所はここからずっと南を目指すのだ!」


 釣り好きの男は高らかに口にしながらも、イツハに何かを投げ渡す。


「これは――?」

「コンパスだ! ぜひ使ってくれ! いや、使わないと迷うぞ!」


 確かに何の目標物もない海をひたすら南下するのは不可能な話だ。

 イツハはコンパスの指し示す方向を確認してから、男に礼を述べる。


「ありがとうございます!」

「気にするな!」


 男と別れ、イツハ達は早速ブルーノ君と共に出発することにした。

 だが、その前に決めなければならないことがある。

 大人しく海上に浮かんでいるブルーノ君を横目にイツハはこう切り出した。


「では、自分がブルーノ君の背中に乗ります」

「え? 私もブルーノ君の背中に乗りたいのだけれども~」

「イツハ様はどうしてブルーノ様の背中に乗りたいのでしょうか?」


 マァルナの言葉に、イツハは咳払いをしてからこう説明する。


「もしかすると、他のコンビと競り合うことになるかもしれません。自分がブルーノ君を乗りこなしますので、ミュナおばさんとマァルナには警戒をお願いしたいんです」

「えっと、いっちゃん? ブルーノ君を乗りこなすのって難しくないかしら?」

「いえ、何とかなります」


 イツハはタブレットを操作して技能習得のアプリを開くと、案の定彼の予想は的中していた。


「この通り、シャークライダーという技能があります」

「それでブルーノ君と仲良くなれるのね!」

「確信があったのでございましょうか?」


 マァルナの鋭い指摘にイツハは頷く。


「アケルが躊躇なくサメの背中に乗っていた以上、もしかしてと思っていたんだ」


 だが、まさかシャークライダーという名称だとはイツハも予想していなかったが。


「よし、シャークライダーレベル1を習得、と」


 アプリを操作して、技能の習得を選択する。

 ただ、イツハとして悩ましかったのは習得に2000ポイントも必要な点と、使う機会が限られている点だろうか。


「今のポイントは――」


 イツハがタブレットで現在の自分の応援ポイントの取得状況を確認する。


 登録者:イツハ

 応援ポイント  :4621p

 累計応援ポイント:6836p

 ファン数    : 247名


「すごい、ファンの方が200人近く増えている……」

「よかったわね~」

「おめでとうございます。技能を習得して何か変化はございますか?」

「特にないけれども、やってみるかな」


 イツハはブルーノ君目掛けて走り、そしてジャンプしてその背に飛び乗る。

 いきなり飛び乗られて、ブルーノ君もさぞかし驚いただろう。

 反射的に異物を振り落とそうとするも、イツハがその背中を優しく撫で回す。

 ザラザラとしたサメ肌で自身の掌を傷つけないよう気を付けていると、ブルーノ君が落ち着きを取り戻したのか、暴れるのを止めて大人しくなった。


「これがシャークライダーの力なのね~」

「お見事でございます」


 この状況に視聴者からも好感を得られたようだ。

 何せあの海の暴れ者が子犬のごとく大人しくなっているのだから。


「ミュナおばさん、マァルナ。後ろの桶に乗ってください」

「は~い」


 桶に乗り込んだのを確認してから、イツハはブルーノ君の背びれを優しく掴む。

 すると、ブルーノ君はイツハの気持ちを汲み取ったのか前進を始める。


「さあ! 出発!」

「レッツシャークね♪」

「レッツシャークでございます」


 コンパスの針を確かめながらも、イツハはどこまでも続く海原に向かって心を躍らせた――。

何と大海の王者キングホホジロザメを釣り上げたミュナおばさん一行。

これならば、逆転出来るかもしれません。

白熱する展開を乞うご期待!


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハとマァルナの活躍をお楽しみに。

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