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第一話 好奇心

今回より第三章が始まります。

ミュナおばさんとイツハを待ち構える試練とは一体――!?

 イツハはベッドの上から身を起こす。

 心の中でモヤモヤとするものがあるせいか一睡も出来ず、暗闇と過ごすのにも飽きてしまった。


「自分は――」


 母親から見捨てられた――。

 そんな光景を思い出すだけでも、胸の内からどす黒い感情が湧き上がってしまう。

 

「いけない、こんなことでは……」


 また、暴走をしてしまったらミュナおばさんに迷惑を掛けてしまう。

 ホフリの剣の鞘をズボンの金具に止め、タブレットを手にしてイツハは小屋の外へと出る。

 まだ外は真っ暗ではあったものの、遠くに光る何かが見える。

 何だろうと思って目を凝らしてみると、その先にいたのは――ミュナだった。


「ミュナおばさん……」

 

 ミュナは宙に浮いていた。

 浮いているという表現が正しいのか、イツハにはわからなかった。

 地面から5,6mほどの上の空間に張り付いているかのようも見え、直立した姿勢は物理法則に正面から殴り掛かっているかのようにも見えてしまう。

 ミュナは目を閉じながらも、口を素早く動かしていた。

 何を唱えているのかはわからない。

 だが、口の動きに合わせてミュナの目の前で灰色の光が生まれては消え、そして渦巻き、やがてその頭上から鈍色の灰が降り注ぎ始める。

 その光景は美しいと称賛すればいいのか、それとも畏敬の念を抱けばいいのか、イツハには判断が出来なかった。

 まさに神の為せる御業であり、人智を超越した現象をいとも簡単に繰り出している。

 邪魔をしてはいけないし、応援の声を掛けるなんて(もっ)ての他だ。

 彼はミュナからそっと離れるも、時間を潰すために何をしようか考える。


「そうだ、確か……」


 イツハは自身が休んでいた小屋の近くに何かが積まれていたことを思い出す。

 廃材か何かだろうが、暇を持て余した彼にとっては都合が良かった。

 タブレットのライトで照らしながらも目的の物を探してみると、それは案外すんなりと見つかった。

 見つかったのだが――彼は同時に後悔した。

 安易な気持ちで探索するというのは実に危険な行動だ。

 お宝の詰まっていそうな箱ほど、その中に罠が隠れているのだから。


「な、なんだこれは――」


 イツハは思わず身震いをする。

 山積みになっていたのは人――ではなく、人の姿をした人形だった。

 死んだ魚のような目が四方八方に向けられ、腐りもしない肉体はこの世に未練を残しているようにも見える。


「ん、これは――」


 あまりにも人間そっくりであったため、イツハが恐る恐るそのうちの一体に近づいてみると、


「機械人形?」


 外見は人間にそっくりだが、折れた腕からは機械の部品らしきものが見える。

 腕の皮膚を触ってもまるで人間の肌のような感触があり、イツハはかなり高性能な技術で作られたものだと推察する。


「そうか、これらはガラクタか……」


 神命新天の儀執行委員会が休憩地点を設置する際に、邪魔となるために積み上げたのだろう。

 生きた人間ならば簡素であれお墓を建てるなり地面に埋めるなりするのが温情ではあるが、人間そっくりの機械はどうしてあげるのがいいのか。

 バラバラに分解し、部品をリサイクルして椅子にでも作り替えよう、と言い出す輩は果たして善人なのかどうか。

 イツハは彼らの前で手を合わせる。

 目を閉じ、そして心の中でこう呟く。


 ――お疲れ様。


 彼らのことを何も知らない以上、余計なお世話かもしれない。

 だが、イツハはこうせずにはいられなかった。

 胸の中でくすぶっていた暗い感情が薄らぎ、彼は不思議な気持ちのまま目を開く。

 さて、休憩の続きだ。

 彼は踵を返して、小屋へと戻ろうとしたその時だった。


 ――彼は叫んだ。


 その悲鳴は辺り一面に響き渡る。

 半狂乱になりながらも、イツハはホフリの剣を抜く。

 そして、上段に剣を構えていると――。


「いっちゃん! どうしたの!?」

「ミュ、ミュナおばさん!」


 突如現れたミュナの姿を見て、イツハは平静を取り戻す。


「えっと、実は――」


 イツハは構えを解きながらも、それに目線を向ける。

 

「えっと、これはお人形さん?」

「機械人形の類かと思うのですが……」


 イツハはある一点を注視していると、それの手が動いた。


「やっぱり――」

「今、動いたわね」

「はい。機能停止していた機械人形が突如動いて、自分の肩を掴んだんです」

「それであんな大きな声が出ちゃったのね」

「え、ええ……」


 イツハ自身あんなに大きな声を出せるとは思ってもいなかった。

 それはともかくとして、彼は動き出した機械人形に敵意があるのではないかと身構える。


「いっちゃん。そんなに怖かったの?」

「はい。もしかすると襲ってくるかと思いまして」

「そんな子なのかしら? だったら、直接話し合ってみましょ」


 そう言うと、ミュナは微動し続けている機械人形の腕を強引に山から引っ張り上げた。

 まるで土中に埋まっている野菜を引っこ抜くかのようで、とっさの行動にイツハは制止する間もなかった。

 

「ちょっ!」


 イツハが半歩程後ろに引いてから、現れた機械人形とご対面する。

何やらミュナおばさんが発掘してしまったようです。

果たして、イツハを驚かせた機械人形の正体とは?

次回をこうご期待ください!


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハの活躍をお楽しみに。

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