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幕間その1 かの神は、ほくそ笑む

今回は幕間となります。

大変申し訳ございませんが、ミュナおばさんとイツハの出番はございませんので悪しからずご了承ください。

 ――我は実に運が良い。


 運が良いこと、それ即ちすべてが掌で上手く転がっているということ。

 追い風に背を押され、そして下り坂を全力で疾走するかのような快感。

 一度味わったら病みつきとなり、なるほど人間が地位を失わないよう保身に走る気持ちが痛感出来る。

 自身の整った頬を撫でながらも、かの神は実にご満悦だった。

 あまりにも上機嫌だったため、大声で笑い飛ばしたい気分であった。

 だが、大声で笑うのは祭壇の頂上まで取っておこう。

 そして、静かに忍び笑うと、砂金と水銀を練り合わせたかのような豪奢(ごうしゃ)で長い髪が揺れる。

 それはまるで星々が踊っているかのようで、その光景を見ていた少女がうっとりとした表情を浮かべている。


「ああ、歌舞(かぶ)静謐(せいひつ)の神であらせられるル・ピーサ様……。その全てが麗しく、そのお傍に仕えることの出来る私めは何と光栄なのでしょう――!」

 「これこれ、イドリナ。明日も早いのだから、我に構わず休みなさい」


 ル・ピーサは少女を嗜める。

 煌びやかな青い衣装――ステージ衣装というものらしいが、少女の魅力を十二分に引き立てていた。

 この少女とコンビを組めたことも、自身が如何に運に恵まれているであろう確実な証拠だ。

 宇宙中に名を馳せる伝説のアイドルというものらしく、彼女の身を守るために何千人ものファンが文字通りその身を投げて、その結果彼女は生き残ることが出来たとのことだ。


「も、申し訳ございません!」

「いいのです。あなた達のおかげで、我らは一位となっているのですから」


 『我ら』と言いながらも、ル・ピーサは改めて自身が聡明さ――いや、抜け目のなさを誇らしく思うのだった。


「何と有難いお言葉を――」


 イドリナがひっきりなしに頭を下げ始める。

 その度に後頭部で一つにまとめた栗色の髪が尾のように上下に激しく動いている。

 正直、鬱陶(うっとう)しいことこの上ない。

 こんな低姿勢だからこそ、大量のファンが獲得出来るのだろうか。

 ル・ピーサはやれやれと思いながらも少女にこう告げる。


「イドリナよ、これは命令です。明日に備え、さっさと静養なさい」

「は、はい!」


 上擦った声で返事をするイドリナを余所に、ル・ピーサは小屋の外に出る。

 辺りはすっかり暗くなるも、ル・ピーサの心中は真昼のように明るかった。

 そして、軽い足取りで近くにあった焚火へと近づく。


「皆様方、本日はお疲れ様でございます」


 ル・ピーサは焚火を囲っていたメンバーに謝辞を述べる。


「いえいえ。お陰様で大助かりですっち」

「同じく」


 向日葵色の髪をしたふくよかな女性と、茜色の髪をしたほっそりとした女性が返事をする。

 何処にでもいるような人間だが、ル・ピーサはそれぞれが力を持った神であることを知っていた。


「ボルムパ様とルキナ様の力が無ければ、あの『猛烈☆敵と悲しみだらけの決戦場』を乗り越えられませんでした」

「ワタシの爆破のおかげですっち」

「確かに」


 独特の語尾のボルムパと寡黙なルキナとどちらも個性であり、その点もル・ピーサは満足していた。


「にしても……」


 二柱の隣には、パートナーである人間が控えていた。

 ボルムパのパートナーは真っ黒な装束で身を包んだフユカゼという名の女性で、覆面の間から見せる冷酷な目はどこか危険だった。

 腰には剣を差しており、戦いにおいても大いに活躍してくれた。

 一方、ルキナのパートナーはにこやかな笑みを浮かべる銀髪の好青年だ。

 クレイシという名前もイメージにあっておりファン数もかなり多い。

 彼らを早々に仲間に出来たことを誇りながらも、ル・ピーサは自身が如何に賢明だったかを思い返す。

 自身の神権とイドリナの力でファンを増やすのは容易だ。

 だが、肝心の試練を攻略するには自身では力不足であることも理解していた。


 ――手を組まぬか?


 ル・ピーサはマニュアルをよく読んだうえで、こんな提案をした。

 元々はイドリナの発想だった。

 アイドルでもあったイドリナは過去にユニットを組んだことがあった。

 配信である以上、複数人でチームを組んで活動することは何ら問題でもないし、今の所神命新天の儀執行委員会からお咎めの通達はない。


「ところで、皆様方はどうして焚火をなさっているのですか?」

「ええ。ボルムパ様とルキナ様が神魂術をご披露なさっているのです」


 クレイシが丁寧に説明をする。


「なるほど、それは良いことですね。我も明日に備えて、術に磨きを掛けねばなりませんね」

「折角ですので、ル・ピーサ様も神魂術を見せて欲しいですっち」

「ふふ、そうさせて貰いましょう」


 ル・ピーサは高ぶる心を胸に、神魂術を唱える。

 その声は他者を惹きつけ、舞もまた魂を共鳴するかの如く震わせる。

 歌い、そして踊る中、ル・ピーサは心に決める。


 ――――やはり我こそが新しい世界を導く存在だ、と。


第二章 完

どうやら、ミュナおばさん達の今後のライバルの視点のようです。

果たして、彼らとどのような戦いとなるのでしょうか?

そして、今回で第二章は完となります。

次回、第三章はハチャメチャな試練となるようです。


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハの活躍をお楽しみに。

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