第二十話 現像のガラクタ
無事に試練を攻略したミュナおばさんとイツハ。
さて、次なる試練はどうなるのでしょうか?
イツハはぼんやりとしていた。
彼の目の前で何かが動く。
上下へと動くそれを眺めながらも、彼は呟く。
「ミュナおばさん?」
「あ、気が付いた?」
ミュナがイツハの目の前で手を上下に振っていたようだ。
彼が辺りを見てみると、試練に挑戦する前の場所に戻ったらしいが、どこか違和感があった。
「あれ?」
前方にあったはずの写真の森が、いつの間にかイツハ達の後方にあった。
何やら不思議な感覚であるが、イツハは祭壇まで近づいていることを素直に喜ぶことにした。
「夢でも見ていた気分ね」
「夢、ですか?」
「ええ。とってもドキドキした夢だったでしょ?」
「え、ええ……」
イツハが答えに困りながらも、とりあえず頷いておくことにした。
「さて、急ぎましょう」
「いっちゃん。疲れていない?」
ミュナに尋ねられ、イツハは答えに困る。
肉体的な疲れは勿論ある。
ただ、精神的な疲れの方が辛かった。
休みたいというのが彼の本音であったが、新たな世界の命運がかかっている以上、我儘を言っている場合でもない。
「空も暗くなってきているわね。無理だけはしないでね」
「はい!」
イツハは答えてから周囲を見回すと準天使がどこにもいないことに気が付く。
配信はあくまでも試練に挑戦している間だけなのか。
彼が一人で納得している最中、さらに妙な気配を感じ取る。
「ん――?」
イツハは自身の足元に何かが動いたような気がした。
恐る恐る視線を下に向けると、そこには人形があった。
確か、もふもふ☆ぐれいとの洞穴にいたような。
彼は恐る恐るミュナにこう尋ねる。
「今、動きませんでした?」
「動いたわね~」
もしかして機械の類だろうか。
イツハが人形を足で突いてみると、人形はゆっくりとだがその場で立ち上がる。
「は、はじめまして……」
それがたどたどしく喋ったことに、イツハは仰天した。
一方、ミュナはまるで驚いておらず、微笑みながらもこう尋ねる。
「あらあら、お人形さん?」
「ただの、ガラクタです……」
ガラクタが立ち上がると、イツハはさらに仰天する。
胴体の一部には多種多様なカメラが組み合わせられ、人間でいう頭部には撮影用の大型のカメラのレンズが付いており、まるで大きな目玉のようにも見える。
「ガラクタの中には自我を持つ子もいるみたいね」
「自我を?」
「ええ。意識の集合体とも呼べばいいのかしら」
それは凄いなとイツハが思っていると、ガラクタは自己紹介を始める。
「はい。私は、現像のガラクタと呼ばれております」
「私はミュナ。こっちの子はイツハこといっちゃんよ~」
「素敵なお名前で、ございますね。この度は、あの凶悪な獣から、救っていただき、何とお礼をお伝えすれば……」
凶悪な獣とはもふもふ☆ぐれいとのことだろう。
興味を惹きつけたために、あの写真の山の中に連れ込まれたに違いない。
「お礼なんていいのよ~」
「い、いえ。是非ともさせてください」
そう言いながらも現像のガラクタはレンズをイツハへと向ける。
「え?」
「あなた様からは、そ、そ、その――お悩みを抱えていたりとかは?」
「え、あ、はい」
「やはり……」
記憶のガラクタは嬉しそうに頷いてから、自身の胸をこじ開ける。
「これはフィルムでして、少々お待ちを」
いつの間にやら、手にしていたフィルムを開いた胸へと放り投げた。
一体、何をするつもりなのだろうか。
暫くすると、口とも言うべき箇所から写真が出てくる。
「どうぞ」
「これは……」
イツハは写真を受け取る。
そして写真を目にしたその瞬間、彼の思考が一時停止する。
呼吸することも忘れていたかもしれない。
彼は我に返った後、心臓が止まらないよう荒く呼吸を再開する。
「いっちゃん。どうしたの?」
「この人は――」
イツハは嬉しさのあまり興奮していた。
止まったり、慌てたりで、彼の心臓もさぞかし苦労しているに違いない。
写真をミュナへと見せながらも、彼は叫ぶようにしてこう続ける。
「自分の、自分のお母さんです!」
イツハのお母さんが判明するようです。
さてはて、どんな方なのでしょうか?
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それでは今後ともミュナおばさんとイツハの活躍をお楽しみに。




