第十三話 作り直し
少しばかりの休憩を取るようです。
戦いばかりではなく、たまにはミュナおばさんとイツハの会話をお楽しみください。
ミュナは歌い終えると、イツハの方を向き直る。
そして、先程の歌声のような美声とはかけ離れたのほほんとした声で尋ねてくるのだ。
「ところで、いっちゃん。何か思い出せた?」
「ええっと――」
イツハは先程のもふもふ☆スラッシャーと戦ったことを思い出す。
とっさに身体が動いたというよりも、まるで最初から記憶の底に刷り込まれた行動を再現したような気がしてならなかった。
「いえ、特に思い出せなかったです」
「そのうち何か思い出せるかもしれないわね」
ミュナはニコニコと笑う。
その笑みをどこかで見たような気がするも、やはり思い出せない。
ミュナと話していれば何か思い出せるだろうか。
イツハはスムーズローラーをぶん投げたミュナの姿を思い出す。
あれはどういう原理なのだろうかと聞いてみることにした。
「ところで、ミュナおばさんは神魂術とやらで重機とかを呼び出せるんですか?」
すると、ミュナは照れ笑いしながらもこう答える。
「いやね~、あれはね、私は灰と化した過去の物を再現することもできるのよ」
「そ、それは凄いですね!」
「でもね~。形と質量だけを再現するだけだから、当然動かないのよね。小さくて軽い物はすぐに崩れちゃうし」
「あ、そうなんですか……」
だからこそ、巨大なものを呼び出して武器として使うしかないということか――。
イツハは納得すると共に、ミュナがますますどんな神か分からなくなってしまう。
そもそも、ミュナは本当に神なのだろうか。
神だからこそ、世界が終わるとしても落ち着いていられるのかもしれない。
彼は疑いながらもあることを聞いてみる。
「新しい世界が始まったら、神々も生まれ変わるのですか?」
イツハの素朴な疑問に対し、ミュナの目つきは一瞬だけ鋭くなる。
そして、憂いを隠すように空を見上げながらもミュナは語り出す。
「誤解がないように言っておくけど、まず異法神には生まれ変わりなんてないのよ」
「え、では――」
「もし、完全に消滅したらね。二度と現れることはないの。存在そのものがどこからも消え去ってしまうの」
「そんな……」
神は生きてはいない。
だが、存在そのものが不滅という訳でもないことにイツハは驚愕した。
「そしてね、世界を創り直すといっても、直すのは物質界だけ。異法神達の住む神界はそのままなのよ」
「それは、物質界を創り直さないとならない理由があるんですね」
「そ、宇宙もね、完璧な機能ではないのよ」
淡々と語るミュナを見ていると、イツハは心が痛かった。
目元に浮かぶ苦悩を見ていると、あの明るい性格が嘘のようにすら思えてしまう。
「世界が終わるとなると、神様達も慌てているんでしょうね」
「そうね~。大騒動にならないためにも、神位の低い神には強制的に眠って貰っている、そうなのよね」
「神位?」
「異法神の階級みたいなものよ」
「神位の基準は誰が決めているのですか?」
すると、ミュナは溜息交じりに答える。
「領域と調和の神のハルモリアよ。元々、危険な神を区分けする際にハルモリアが独自に決めていたのだけれども……」
何か嫌なことを思い出したのだろうか。
ミュナは淡々と語り出す。
「いつの間にか、他の神々の間でも広まってしまったのよ」
「そうだったんですか。でも、何か厄介な事があったのですか?」
ミュナの様子から察するにそういうことなのだろう。
イツハが確信を持ちながらも尋ねると、思った通りの反応が返ってきた。
「そ、マウントの取り合いという奴かしらね。一時期酷かったのよ~」
「なるほど……」
それはさぞかし酷い争いが起きたのだろう。
イツハは話を逸らすべく、話題を切り替えることにした。
「あ、ミュナおばさん。神位の低い神々は特段世界の終焉には関与されないってことなんですね」
「そういうことね。ついでに眠る前の記憶も消しているとか。あ、でも、今回の神命新天の儀に参加する神々は別よ」
「そ、そうだったんですね……」
イツハはそう考えると、自分が今この儀式に参加できるだけでも光栄な事ではなのかもしれないと思ってしまう。
「さて、そろそろ――」
まだ足の痛みが治った訳ではない。
だが、ここでのんびりしている時間もない。
何か治療に役立てる技能はないだろうか。
タブレット内のアプリを探してみると、『サプライ&サプライズ』というアプリがあった。
「これは?」
イツハが気になってアプリを開いてみると、どうやら応援ポイントと引き換えに物資と交換して貰えるようだ。
「食料や替えの下着に――あった」
傷薬という名称を見て、イツハはとっさに『入手』ボタンをタップする。
たったの5ポイントと非常にお手軽だ。
すると、イツハの足元に小瓶が現れる。
「いっちゃん。それは?」
「傷薬です。えっと、どうやら飲み薬のようですね」
怪我した箇所に塗るのではないのか。
不思議に思いながらもイツハは瓶の中身を一気に飲み干す。
「どう?」
ドロリとした何とも言えない食感が喉から胃へと伝っていく。
液体が胃の奥まで沈んでいったのを確認してからイツハは感想を述べる。
「うーん。味はしないですが、そのうち効いてくるかもしれません」
即効性があったらそれはそれで怖い気はする。
そもそも、副作用とかはあるのだろうか。
イツハが不安になってタブレットを見てみると、あることに気が付いた。
「あれ? 5000ポイントになっている?」
おかしいなと思って再度見てみると、説明文には『初回のみ超特価!』と小さく書かれていた。
「うっ、入手するたびに必要ポイント数が増加になりますことだけご注意をって――」
「うーん。傷薬を大量に使うことで、力押しでの試練の攻略を防ぐためかもしれないわね」
「そうか。そういう手もあるのか……」
そんな攻略法は嫌だなと思っていると、イツハは自身の身体に変化を感じた。
「足の痛みが引いた?」
立ち上がってみると何も問題はない。
「ミュナおばさん、大丈夫です。行きましょう」
「わかったわ。無理はしないでね」
「はい」
イツハ達は再び歩き出す。
トレンとギガントは近くにいるのだろうか……。
戸惑いと焦りを振り払うかのように、イツハは呼吸を整え直しつつも走り続けた――。
ほんの少しだけ重要な話となりました。
さて、次回はいよいよギガント達との再会になります。
果たして、どんな展開となるのでしょうか?
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それでは今後ともミュナおばさんとイツハの活躍をお楽しみに。




