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第十二話 珍獣ばかりなこの試練で

巨大な敵を倒したのもつかの間。

今度は一体何が出てくるのでしょうか?

 目の前に突然珍獣が現れたらどんな反応をすればいいのだろうか。

 その珍獣が凶暴かつ明らかに敵意を持っているならば逃げるのが正解だが、中には自らの命を惜しむことなく捕獲に挑む者もいるだろう。

 イツハはどうすればよいのか困惑する。

 少なくとも今の彼に逃げるという選択肢はなかった。

 地面から突然そいつが現れ、そのせいで彼は間抜けな格好で態勢を崩してしまっているからだ。


「あ、そこにいたのね~」


 ミュナが笑いながらも、地面から現れた珍獣に笑顔を向ける。

 見た所、それはモグラに酷似していた。

 ふわふわの毛が頭部に生え、黄金色の体毛が特徴的だった。


「ケルベッシュちゃんの言っていた、困っているもふもふ☆がこの子だったのよ~」


 ミュナはカメラ目線でモグラを紹介するように手を振っている。


「あ、そうだったんですか」

「怯えているようだから、落ち着かせないと」

 

 そりゃあ、あれだけド派手に暴れたら怯えて当然だろうとイツハは余計なことを考えてしまう。

 図鑑ではこのモグラの名称はもふも☆モールという名前らしい。

 先程のカマキリと比べればまだ可愛げがあるのだが、やはりその目つきが凶暴であり、一つも気を許してはいけないという印象を放っていた。

 そんなもふも☆モールに対し、ミュナが楽しそうに話しかけている。

 何と言っているかわからないが、もふも☆モールは元気を取り戻したのか嬉しそうに鼻を鳴らしていた。

 どんな会話をしているのだろうかと思いながらも、イツハはタブレットを見てみる。

 ミュナの先程の戦いの反応を見てみるとコメントには――。


*すっごい!

*こわ……

*かっこよかった!


 といった具合に怖がるものが多かったが、素直に喜んでいる反応もあった。

 このままの方針で大丈夫かなとイツハが思っていると、とんでもないコメントを発見してしまった。


*イツハいらなくない?


 そのコメントを目にして、イツハは大いに傷ついた。

 確かにそうかもしれないが、もう少しやんわりと言って貰いたいものだ。

 彼が項垂(うなだ)れていると、ミュナがもふも☆モールとの会話を終えたらしく、真面目な表情で語りかけてくる。


「いっちゃん。急いでもふもふ☆ぐれいとちゃんの元へ向かいたいの」

「どうして、ですか?」

「モグモグちゃんが教えてくれたのだけれども、もふもふ☆ぐれいとちゃんは何かが原因で酷く傷ついているそうなの。だから、出来れば話し合って貰いたいそうなの」

「わかりました。でも急ぐ理由というのは――」

「事情を知らないギガントとトレンは恐らくもふもふ☆ぐれいとちゃんを倒して、高評価を得ようとしているのよ」

「そうかもしれませんね。でも、肝心のもふもふ☆ぐれいとはどこに――」


 イツハの疑問に対し、ミュナはびしりと指をさす。


「あっちよ!」


 ミュナが指差したのは西にある森だ。

 また走らなくてはならないと思いながらも、イツハは覚悟を決める。


「いっちゃん。大丈夫?」

「大丈夫ですよ」

「無理はしないで頂戴ね。……あら」


 ミュナは何かに気づいたらしく、イツハもミュナと一緒に後ろを振り向く。


「あ、モグモグちゃん」


 先程のもふも☆モールが口に何かを咥えている。

 見てみるとカマキリの前脚で、大きさからして集団で襲って来たカマキリと同種のものらしい。


「あらあら、どうしたのかしら?」


 もふも☆モールはキーキー鳴きながらもミュナへ何かを伝えている。


「どうやら、トレン達が虫を狩猟した時に置いていったものみたいね」

「くれるってことですか?」

「ええ。お礼ですって」


 もふも☆モールはお辞儀のような仕草をしてから、その場からいそいそと去っていった。


「武器として使えそうですね。自分が持っていていいですか?」

「いいわよ~。このトゲトゲとか痛そうだものね」


 イツハはもふもふ☆スラッシャーの前脚を手にする。

 軽いせいかホフリの剣と比べると頼りないが、攻撃手段としては有用そうだ。


「じゃ、行きましょ」

「はい」


 ミュナと共にイツハは走り出す。

 本来ならばもっと高速で走れるのだろうが、イツハに遠慮して速度を落としているのだろう。

 走っていくうちに、空が少々暗くなっていることに気が付いた。

 時間の経過で夜となってしまうのだろうか。

 この街灯が一つもない平原では真っ暗な世界となるに違いない。

 焦りのあまりイツハは歩調を速めていき――。


「あっ!?」

 

 彼はすっ転んでしまった。

 地面に膝頭をぶつけてしまい、イツハは地面に倒れ込んでしまう。


「いっちゃん?」

「だ、大丈夫です」


 情けないなと思いながらもイツハは立ち上がろうとすると――。


「うぐっ!?」


 思った以上に強く打ってしまったらしく、激しい痛みに彼は顔を顰めた。


「少し休みましょ?」

「え、また休憩時間ですか? そんな暇は……」

「無理はしないの。皆~、休憩に入るから配信を停止するわね~」


 ミュナに宥められ、イツハはそこに座り込む。


「ミュナおばさん。すみません……」

「いいのよ~。ゆっくりと休んでちょうだい」


 イツハは申し訳ない気持ちと共にその場で腰を下ろす。

 こんな所で休んでいる場合では――。

 彼が拳を固めていると、ミュナが唐突に歌を口ずさみ始める。


「え――」


 綺麗な声だった。

 耳にしているだけでも心が安らぎ、ほんのわずかではあるが足の痛みも引いた気がした。

 あまりにも良い唄声であるため、拍手することも躊躇ってしまう。

 そして、一番の問題は彼の立ち上がり戦う意志すら削いでしまうことだろう。


 ――今は休んでいいんだな。


 イツハは安堵の溜息を漏らしながらも、その場に深く腰を下ろすことにした。

もふもふ☆ぐれいとに会うべく、ミュナおばさんとイツハは西にある森へと向かうことに。

その前に暫しの休憩を取るようですね。


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともミュナおばさんとイツハの活躍をお楽しみに。

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