第十一話 虫退治は全力で
巨大なもふもふ☆スラッシャーとの戦いに、ミュナおばさんはどう立ち向かうのでしょうか?
巨大なカマキリ――正式名称はもふもふ☆スラッシャーだが、それを見上げながらもイツハは考える。
前脚の鎌はとんでもない凶器だ。
進化の末に得た産物にしては、あまりにも邪悪に見える。
対するミュナが手にしているのはケルベッシュから貰った角で、得物としてはリーチが短く、近づかなければ敵に攻撃は与えられない。
今もミュナを襲おうとしているが、張り詰めた空気の中でじっと身を強張らせていた。
果たしてどちらが先に動くのか。
緊張のあまり、イツハは心臓に痛みすら覚える。
彼は胸に手を当てて唇を噛んでいると、時が動き出してしまう。
「ん!?」
先に動いたのは――ミュナだった。
瞬時にしてその姿が掻き消える。
どこに行ったのかとイツハが首を巡らせると、カマキリの真上へと跳躍していた。
頭部への攻撃を狙っているのだろう。
「ミュナおばさん!」
いける! とイツハが思っていた矢先だった。
「え――?」
もふもふ☆スラッシャーが鎌を一閃させる。
ごく自然な動作で、それこそ飛行する獲物を捕らえるかのように。
回避は可能だろう。
イツハがそう思っていたのだが――。
「う、嘘……」
イツハは自身の目を疑った。
何故ならミュナの姿が鎌によって両断されてしまったからだ。
あんなに呆気なくやられてしまうなんて――。
「ミュナおばさん……」
イツハが力なく崩れ落ちているその時だった。
「ん?」
敵の様子がおかしい。
見てみると仕留めたはずの獲物がどこにもおらず、そのせいか困惑しているようだ。
「あれ?」
どこに行ってしまったのだろうか。
イツハもまた困惑していると、もふもふ☆スラッシャーの眼前に大量の灰が舞っていることに気が付く。
「灰?」
一体いつ現れたのだろうか。
よもやと思い、イツハが隈なく辺りを探すと……。
「ミュナおばさん!」
案の定、ミュナがいた。
元気そうな様子で、もふもふ☆スラッシャーの後ろ脚にいた。
先程、敵が攻撃したのは偽者だったのか。
神魂術とやらを使ったのだな、とイツハが察していると――。
「いっくわよ~♪」
ミュナは楽しそうな顔で、もふもふ☆スラッシャーの脚を持ち上げる。
もふもふ☆への直接攻撃は出来ないが、触れることは出来るようだ。
持ち上げた敵をどうするのかというと……。
「そりゃあ~!」
ミュナがカマキリを持ち上げた状態で、その場で回転を始める。
ぶん回されるカマキリがただただ可哀そうだ。
イツハがそんな感想を抱いていると、ミュナの回転速度が上昇していく。
やがて竜巻のような勢いとなってから――。
「そいやぁーっ!」
気合いと共にもふもふ☆スラッシャーを上方へとぶん投げた。
その上昇速度から察するに、相当の負担がかかっているだろう。
敵は成すすべもなく錐揉状態で地面へと落下し、着地する瞬間に合わせてミュナは走った。
「これぞ、もふもふ☆ハンターの必殺技よ!」
叫びと共にミュナは手にしていた角を一閃させる。
どの辺りがもふもふ☆要素があるのか分からないが、破壊力は折り紙つきのようだ。
豪快な音と共に巨大なカマキリは吹っ飛び、地面の上へバタリと崩れ落ちる。
あまりの一方的な攻勢に、イツハは口を開けたまま呆然とする他なかった。
「いっちゃん。どうだった~?」
「え?」
駆け寄ってきたミュナが急に尋ねてきたため、イツハは返答に困った。
もう少し加減してあげてください、という上から目線な助言が彼に言える訳もない。
「えっと、その、派手な戦い方でしたね」
「そうなのよ~。実はね、視聴者からカッコいい戦いを見たいってコメントがあったのよ」
「そ、そんなコメントがあったんですか」
なるほど、それであんな無茶苦茶なことを――。
イツハは納得しながらも、改めてカマキリが気の毒に思えてならなかった。
「ところで、ミュナおばさんは灰を操る力を持っているのですか?」
「ええ。そんなところかしら」
「凄いですね!」
イツハは素直に感心するも、あることに気が付いてしまう。
様々な使い道があるのだろうが、如何せん無茶苦茶な戦いぶりのせいかどうにも地味に思えてならなかった。
「皆~? どうだった~?」
ミュナはカメラへ向かって大きく手を振ると、視聴者からの歓声が返ってくる。
なるほど、工夫して戦うのも重要なのか。
イツハがそう思っていると、ミュナが誰かに話しかけていた。
「えっと、いるんでしょう?」
すると、ミュナは自身の手をパンパンと大きく叩く。
一体、誰に呼び掛けているのだろうか。
イツハが黙って待っていると――。
「地震?」
地面がぐらぐらと揺れ、イツハがとっさによろめいたその時だった――。
さて、ミュナおばさんは誰に呼び掛けていたのでしょうか?
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それでは今後ともミュナおばさんとイツハの活躍をお楽しみに。




