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【1部完結】ひとりぼっちふたりの連れ添いまで冒険譚 ~少女とドラゴン~  作者: めーめー
2章 馬車は揺れるよ、ローラシア王国へ
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第6話 物騒と陰謀は旅のおとも(前)

「≪フレイム・ブラスト≫!」


 リオさんの杖から放たれた複数の火炎球がモンスター達を炭化させる!

 周囲の草木に飛び火しない、けれどモンスターは確実に屠る連撃。

 威力も凄いけど、それ以上にコントールが正確だ。


 そんなリオさんを狙う気配が複数。

 させない!


「≪アース・インター≫!」


 わたしの魔法で隆起した岩土がモンスターを幽閉する。

 一、二、三…一体外した!


 こちらに疾走する大型野犬。

 そのスピードで近づいてくるなら、魔法や弓矢よりこっち!


「はあ!」


 ショートソードで首元をぱっくり斬り裂く!

 致命傷だ。瞳孔を大きく見開いて、野犬が地面にくずおれた。


 わたし達の元に押し寄せた群れは確実に数を減らしている。

 この調子なら、つつがなく終わりそう。


「ゴブリンにコボルト、凶暴化した野犬ばっかね。これだけの群れを従えているなら、もう少し歯ごたえあっても良さそうなもんだけど…っと!」


 会話しながら、遠くのコボルトへ炎魔法をヒットさせるリオさん。

 わたしは近づいてくるゴブリン達を弓矢で牽制しながら応じる。


「ゼルスさんは大丈夫でしょうか!?」

「大丈夫なんじゃない? あっちは随分静かみたいだし──≪ライトニング≫!」


 どぅん!


 リオさんが放った魔法で、最後の二体が爆散した!


「目に見える奴は片づいたけど…どう? おかわりは居そう?」

「…。今ので最後だと思います」

「おっし! 終わった終わった。おどおどしてた割にアンタやるじゃん。魔法の発動も早いし。エルフってやっぱ魔法が得意なの?」

「こんなの全然ですよ。森ではわたし、落ちこぼれでしたし」

「あのスピードで発動できて落ちこぼれって……やっぱり地金が違うな…。あと、その腰の剣も飾りじゃなかったのね」

「はい。姉さんから教わったものです。故郷の森でよく一緒に狩猟したり、モンスターを退治したりしていました」

「…なるほど。あの女のお手前なら納得だわ」


 ははは、とリオさんが半笑う。

 多分。姉さん絡みの苦い記憶でも思い出したのだろう──



 ゼルスさんが飛び出した先に向かうと、あちこちに倒されたモンスターの残骸があった。

 ドラゴンの姿じゃなくても、ゼルスさんは大変お強いらしい。


 実際、


「た、頼むぅ! 俺達が悪かった、見逃してくれ! ひぃぃぃぃぃぃっ!」


 どべしっ!


「畜生! こんな強いなんて想定外もいいところだぎゃあぁっ!?」


 ぐしゃあっ!


 モンスター使いに、偽の検問を設けていた盗賊の方々。そんな人達が風船みたいにゼルスさんの物理(拳)で飛ばされている現場に出くわすと、爽快感よりも悲惨さが際立った。


「派手さに欠けるなぁ。野盗なんてブチのめしてなんぼでしょ」

「十分痛々しいと思うのですが…?」

「…なんだ。けっこう早く終わったんだね」


 わたし達に気がついたゼルスさんが手を止める。

 怪我はもちろん、汚れ一つない。流石だ。


「で? この連中、どうするの」

「無論、恐喝するわ」

「………」

「なによ、その非難げな眼差しは。文句ある?」

「別に…手早くすませてよ」

「分かってるわ」


 ゼルスさんでもリオさんの蛮行は止められないみたいだ。

 昨日も思ったけど、この物騒さが森の外では普通なのかな…?

 どっしりと腰を据えたリオさんが生き残りの賊達に向き直ると、ぼう、と手の中に小さな火炎を生んだ。


「さて。命が惜しくば有り金を全部頂戴しましょうか」

「ひぃぃぃ! お助け…お助けをぉ!」


 実に手慣れた脅迫だ。

 これが初めての犯行なんてことは絶対にないんだろうな…。


「襲ったのは悪かった! でも俺達だって仕方なかったんだ! ノーステリアの街があんなんになっちまった以上、日金を稼ぐにはこうするしかなかったんだよぉ!!」


 ぴく。


「ノーステリア…? アンタ達、あの街の住人なの?」


 寝耳に水だったのか、リオさんが目を瞠る。

 あと、わたしの見間違いでなければゼルスさんも動揺されていたような…?


「あ、あぁ。あのノーステリアの住人だ!」

「確かに盗賊にしては小綺麗な成りだし、賊に落ちぶれてから日が浅いって感じはするわね…」

「その様子じゃあ、あの街が今どうなってるのかアンタは知ってんだろ!? なら分かるだろ、俺達だって好きでこんなことをしてるんじゃねえんだよぉ!」

「そう。苦労してるのね」

「だろ? だろ!? だ、だからここは見逃して…」

「でも、それはそれ。これはこれよね」


 上げてから落とされた盗賊の方々が、さぁっと顔色を青くしている。


「アタシ、同じことは二度も言いたくないの。──後は分かるわよね?」


 そう言って彼らをしばき倒すリオさんの笑顔は、素晴らしく生き生きしていた。


 本日の学び。

 森の外の社会は、悪事を働いた人には特に厳しいみたいです。

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