第五話「異世界の洗礼 閑話休題」
シリーズものです。
あの禁じられた森から脱出して二ヶ月が過ぎた。
僕の左腕も回復して、今日は包帯が取れる日だ。
僕は左腕の包帯を見る。腕全体をグルグルと巻かれている姿を見ると、少し興奮した。
「俺の左腕が疼くぜ……」
フフ……。
中二病なんて少しバカにしていたが、いざそういう状況になると、ワクワクが止まらない。
いや、待てよ。僕は今魔法が使える。つまりは特殊能力があるわけで、中二病みたいな妄想の産物ではないわけで。これは本物!
なっちゃったかー、ホンモノ。グフフ……。
でも、折角包帯を外すなら、こうカッコ良く外したい。シュル、シュルシュルシュル……、って音を出しながら、謎の螺旋状に外したい。
「もう後もどりはできんぞ。巻き方を忘れちまったからな」
いや、ここは、オリジナルの方がいいか?
「二ヶ月も待たせちまったな……。そろそろ暴れたい頃だろ?」
うわ、何かダサいな。漫画みたいにカッコ良くキメられないや。
「さぁ、行こうぜ。俺の左腕?」
「暴れろ!血塗られた悪鬼の腕!!」
ぐわああ!今のはダメージが……。
マズイ。どんどん良くない方向に進んでいる気がする。
過去の黒歴史が出てはいけないくらい出てきている気が……。
あー、早く外さないと、ミーシャさんが入ってくるかもしれない。こんな姿を見られるのは、中二病より地獄だぞ!
ここは、ここは、シンプルに行こう。難しく考える必要なんてないんだ。
「さぁ、行こうか」
僕は包帯の端を右手で掴み、思いっきり引っ張った。
「あだだだたた……!」
包帯は綺麗に外れるどころか、逆に皮膚にめり込んだ。
今日の気付き。
包帯はうまく外れるように巻かれていません。外す際は引っ張らずに、ゆっくり取りましょう。
汚点のような帯状の赤い痕を残して、僕は後悔した。
一人恥ずかしいことをしていた僕は、治った左手を動かしてみた。
特に痛みはない。
今度は指を1つずつ曲げては開き、グーパーしたりと確かめる。
こちらも問題ない。
左肩をグルグル回して、左腕全体を慣らす。
うん、大丈夫だ。
コンコン。
部屋のドアがノックして、ミーシャさんが入ってきた。
「アレイン、どう?」
彼女は僕の様子を伺いにきたようだ。
「大丈夫だよ。ほら」
僕は彼女に平気そうに左腕を動かした。
「あら、ホントね。ん?この痕は何?」
「あ、これはそのえっと……」
「もしかして、まだ治ってないの?」
「いや、大丈夫大丈夫」
「結構な痕よ?」
「今、包帯外すときにできたやつだから……」
「なぜ……?」
せ、説明したくない……!絶対に理解されない……。
僕は包帯を取る時に引っかかってできたと答えた。
「こういう時は、慌てずゆっくりと外しなさい」
「はい……」
ごもっともです。
「そろそろルーベルくんが来る時間じゃない?」
「あ、そうだね。僕、外で待つよ」
「気を付けなさい。まだ治ったばかりだから」
「はーい。いってきます」
「いってらっしゃい」
僕が家を出ると、ちょうどルーベルと鉢合わせた。
「おはよう」
「おはよう、ケガ治った?」
「うん、ほら」
左腕をグルグルと回す。
「やったー!これで遊べる!何しよー!ん?この痕は……?」
もうやだ……。
僕たちは久しぶりに遊んだ。
追いかけっこしたり、かくれんぼしたり、土いじり。木登りをしてよくわからない木の実を食べたり、手頃な枝を持って探検ごっこをした。
楽しかった。僕の精神年齢的には幼稚なものに変わりないが、味わえなかった幼少期を体験しているようで嬉しかった。
僕は笑顔だった。一緒に遊ぶルーベルも満面の笑みを見せた。
二ヶ月も待ちわびたはずだ。その時間を取り戻すように僕らは夢中で遊んだ。
「見せたいものがある」
ルーベルがそう言って僕を森に誘った。
禁じられた森に入ったあの日。僕たちが見つけた大きな木の前に着いた。
「上を見て」
ルーベルに言われるままに上を見ると、木の上に小さな小屋ができていた。
ツリーハウスだ!
「え!あれって!」
「俺たちの秘密基地だ。父ちゃんが作ってくれたんだ」
「す、すごい!」
秘密基地……!子どもの頃に憧れていた存在だ。それが今ここに!
「入っていい?」
「もちろん」
僕は垂れ下がっている縄はしごを登って中に入る。中は木製の椅子が二脚と机が一台。シンプルだが、これだけで十分だ。
「わあぁ……」
思わず感嘆してしまった。
「どう?」
「さ、最高。これが見せたいもの?」
「うん、それもあるけど……。ホントはこっち」
彼はそばにある手製の木の棒を持つ。そして秘密基地から出た。僕もその後についていく。
彼は外に出ると、木の棒で素振りを始めた。
「何をしてるの?」
僕の質問を素振りをしながら答える。
「あの時、アレインに助けてもらって。俺は何もできなかった。本当は俺が守らないといけないのに。だから……、俺強くなるんだ!」
ルーベルは先の一件に負い目を感じていたみたいだ。彼なりにあの事件は反省していて自分自身変わろうとしている。
男子三日会わざれば刮目して見よ。
ルーベルは成長していた。それが僕にとってはとても嬉しかった。
彼は息を荒げながら、棒を投げ捨てた。
「まだ……30回しかできないけど……いつか100回できるようになる!」
「ゆっくりやっていこう。ケガだけはしないでね」
「治ったばっかのアレインに言われた……」
二人で顔を見合わせて僕たちは笑った。
少しして、ルーベルの父親が迎えに来た。もう少しで日が暮れる。
もしかして、僕たちを迎えに行く際の目印として、あのツリーハウスは作ったのかもしれない。その時ふと思った。
ルーベルは少し駄々をこねた。まだまだ僕と遊びたいみたいだ。久しぶりだからその気持ちはよくわかった。
すると、ルーベルの父親はお泊りを提案した。僕がルーベルの家に泊まるということだ。
僕とルーベルはこれに賛成した。
早速家に帰った僕はミーシャさんに許可を貰いに行った。
「今日、ルーベルのお家でお泊り会したい」
「いいわよ」
あっさりと許可が下りた。やったー!
「そうなるんじゃないかと思っていたわ。向こうの迷惑にはならないようにしてね」
「うん、わかったー」
友達と遊ぶ。二人だけの秘密基地。そしてお泊り。今日はなんて最高な一日なんだ。
この世界は恐ろしい場所だと思っていたけど、こんなに楽しいことがあるんじゃないか。
ニヤニヤが止まらない。楽しい気持ちでいっぱいだ。素晴らしい未来へと期待が膨らんでいく。
僕の心は幸せだった。
そしてドキドキのお泊り会が始まった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




