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第二話「魔法が存在する異世界」

シリーズものです。

「あ、な、何が起きてるの!?」

「わ、わかんない!と、止まってる!途中で止まってる!」

「何で!?」

「わかんない!」

「ずっとこのまま!?」

「え、嘘!」

「た、助けて!」

「誰かああ!」

 宙ぶらりんになりながら、二人で叫ぶ。だが、誰か来る様子はない。

 時間が経って僕たちは少し冷静になった。

「どうしよう……」

「とりあえずもがいてみる?」

「そうしよ!ふん!クソッ!動け!」

「動け!」

 ルーベルに倣って僕も動くように念じながら体を動かそうとする。

 すると、体にスッと重力が戻ってきた。

「痛っ!」

「あぅ!」

 そのまま僕たちは10センチ落下した。頭にタンコブができたもしれない……。


 地面に座り込みながら、僕はぶつけた頭をさすっていた。

「なんだったんだろ……、今の」

「もしかして、カシのじいちゃんが言ってた魔法ってやつなのかも」

「魔法?」

 聞いたことはあるが、目の当たりにすることはないワードランキング1位の存在だ。

「うん。カシのじいちゃん、大きい街にはたくさん魔法使いっていう人がいるって言ってた。不思議な力が使えるって。アレインも魔法使いなのか?」

「え?どうだろ?」

 正直僕自身がやったという自覚がない。

 僕はスクっと立ち上がった。

「ちょっと、確かめてみるね」

 僕は目をつむり、軽く宙に浮かぶように念じてみる。これができたら一目瞭然だ。

 すると、僕の体がふわりと軽くなった感覚があった。

「すげえぇぇぇ!!」

 ルーベルの歓声に僕はゆっくりと目を開けて足元を見る。

 僕の足は地面から離れていた。

「アレインすげえ!魔法使いだ!」

 ルーベルは興奮して声を荒げた。

 一方で僕はというと困惑していた。

 日本ではないとは思っていたが、まさか世界すら違うとは……。

 元の世界とは異なる。ここは異世界ということだろう。僕は異世界に来てしまった。

 

 魔法を解除して僕は地面に着地した。

 僕に魔法があるとはっきりわかると、ルーベルは質問してきた。

「いつからできるようになったんだ?どんな魔法が使えるんだ?空飛べる?俺も空飛びたい!」

 最後のは願望だった。本当に子どもらしくって少し笑ってしまう。

「なに笑ってるんだよ。答えろよー」

 ルーベルは少し不満そうだ。

「ごめんごめん。そうだなぁ……。最初の質問は、たぶんついさっきだと思う。枝から落ちたとき、咄嗟に念じたら止まったって感じ」

 僕は落ちるとき、心の中で「止まれ」と叫んだことを思い出す。

「2つ目は……。多分だけど、僕が強く念じたらその通りになるのかな?僕もよくわからないや」

 サイコキネシスというやつだろうか。

「最後の質問は、ルーベルくん的にはこれが一番大事だと思うけど……」

 固唾を呑んで見守るルーベルに対して敢えてもったいぶってから答えた。

「空、飛べるよ」

「ホントか!?」

 ルーベルがぱぁっと笑顔になる。

「うん、やってみないとわかんないけど、感覚はなんとなくわかるから……」

 僕はもう一度宙に浮かぶ想像をする。

 地面の感覚がなくなった。

「ほら、ルーベルくん、僕に掴まって」

 僕は彼に手を差し伸べる。ルーベルは僕の体にがっしりと掴まる。

「行くよ」

 僕はさらに高く上がる姿を想像する。

 僕たちの体はどんどん上昇していく。先ほど落下した木をあっという間に抜き去り、僕たちは10メートルの高さまで到達した。

 10メートルの高さに着いたとき、僕たちは辺りを見回した。

 目の前には、奥が見えないほど森の木々が鬱蒼と生い茂っている。後方には僕たちの村が見える。

 太陽を遮るものがない僕たちに暖かな光がきらりと差し込む。さらに太陽光は、この森全体の神秘性を強く強調させていた。

 地上から10メートル。その位置からしか見えない光景だった。

「きれい……」

「うん」

 僕たちは言葉を失いながら、その光景を見続けていた。


「ねえ、あっち行こ」

 しばらくしてルーベルが森の方角に指差して言った。

「え」

「探検!何があるか見たい!」

 確かに気にはなるけど……。

「危険だよ。危ないよ」

「ちょっとぐらいいいじゃん」

 ルーベルは暴れ始めた。

「ちょ、ちょっと、わかった。わかったからジタバタしないで!」

 ここで落ちたら今度こそ洒落にならない。

 子どもの好奇心と強引さに僕は折れてしまった。

「でも、危ないってわかったら、すぐ帰るからね!」

「わかったー」

 ルーベルは機嫌を良くして大人しくなった。

 やれやれ……。

 僕はゆっくりと前方に動く想像をする。

 ゆっくりとゆっくりと僕たちは前進する。

 

「遅いー」

 しばらくして、ルーベルは文句を言う。

「まだ上手に魔法が使えないの。我慢して」

 正直僕自身、この能力について完全に把握できていない。変なことをしてマズイことになったら大変だ。だからこそ慎重に動かしていた。

「なぁ、あそこに変なのいる」

 ルーベルは何かに気づき、森の中を指差す。

 そこには体長が3メートルを超える、熊のような四足歩行の獣が歩いていた。

 熊か?

 観察をしているとその獣は何かを発見したようだ。舌を伸ばす。その舌は変幻自在に1メートル以上も伸びて、餌を捕まえた。舌の先は二又に牙のような歯が付いていた。まるで蛇のような舌だった。

 掴まった餌も、魚に両手両足がついたような変な生物だった。

 僕はその一連の様を見て恐怖した。ここは危険だ。すぐに立ち去るべきだ。僕の直感がシグナルを発する。

「初めて見たー。変なのー」

 ルーベルは能天気に見ていた。

「もうそろそろ戻ろう」

「えー」

「ここはもう危ない場所だから帰らないと」

 ここはもうすでにあのような獣たちの住む縄張りの中だ。今はまだ大丈夫かもしれない。だが、いつ目を付けて襲われるか。

 この魔法だってどこまで続くかわからない。できるだけ離れるべきだ。

「むー、しょうがないなぁ。また今度な」

「はいはい、また今度連れて行くからねー」

 僕は空返事で返して、さっさと戻ろうとする。

「ん?あ、鳥だー」

 ルーベルの反応で僕はハッとする。ずっと下の様子を観察していたために、接近している鳥の存在に気づかなかった。

 その例の鳥は僕たちが顔を視認できるくらいまで近づいてきていた。

 鋭く尖ったくちばしから顔全体まで、硬質な仮面に覆われているように見える。体長は鷹や鷲くらいの大きさだろうか、翼を広げた大きさは1メートル以上ありそうだ。

 そんな鳥が僕たちに向かって飛んできている。

 僕はその時ある過ちに気が付いた。

 空中をゆっくりと飛ぶ生物なんて、肉食の鳥類にとっては格好の餌じゃないのか!?


 後悔先に立たず。

 その鳥はすでに狙っているのだ。

 今ここにある危機をどうするか。僕は選択を迫られた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


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