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フィアの手土産

この小説は『悪役令嬢に転生したら正体がまさかの殺し屋でした』と同じ世界観のお話です。

 デジャヴだ。


 城の中庭を前に、俺は言葉を失った。


 フィアの捕縛魔術に囚われた三人の人物が、顔面蒼白で地面に転がされている。


 問題は、その顔ぶれだ。二人は俺の知っている人物だった。


「……フーガ国王とエリーゼ王女……」


 あとの一人は初めて見る顔だ。

 年の頃は二十代半ば。銀髪に青い眼の青年。


「フィア、これはどういう状況だ?」


 説明を求めて赤髪の魔術師を見ると、彼女は腰に手を当てて得意げに笑った。


「あの魔力を追って行った先に、コイツらがいたんだ。アタシに攻撃してきてから、全員とっ捕まえたんだよ。で、魔狼を操ってた魔力の主はコイツだ」


 指さされた青年を見て、目を細めた。


「……お前は何者だ?」


 尋ねると、青年はびくりと肩を震わせる。

 怯えた眼で俺を見て、観念したように瞑目した。


「マルク・ウィングロード……魔術師だ」

「それは見ればわかる。お前が魔狼を操って帝都を襲わせた犯人なんだな? 何故、帝都を狙った? 何故、フーガ国王と共にいた? フーガ国王も共犯ということか?」


 立て続けに問うと、フーガ国王が引き攣った声を上げた。


「ごっ、誤解でございます賢者様! わ、私はっ! 決して皇帝陛下を裏切るような真似など……!」

「皇帝陛下を裏切らないと宣言するならば、このマルク・ウィングロードとの関係について、今ここで正直に話せ」


 強めの口調で遮ると、フーガ国王は口を噤んだ。


「……言えないような関係だと解釈するぞ」


 俺のその言葉に反応したのはエリーゼだった。


「お父様! 賢者ごときに屈するなど、誇り高きフーガ国王としてあってはなりませんわ!」

「エリーゼ! 何を言っている! 賢者様は、皇帝陛下に次ぐ地位のお方で……!」

「私が皇帝陛下の花嫁になれば、賢者は私の下になるのよ! 何を恐れることがありますの?」


 おお、まさかコイツ、まだ皇帝の花嫁の座を諦めていなかったのか。


 半ば感心しつつ、わざとらしく咳払いしてみせた。

 

「エリーゼ・フォー・フーガ。お前が皇帝陛下の花嫁になることはありえない。更に、もしもお前とフーガ国王が、魔狼を操ってていたを襲わせた犯人と繋がっていたのだとしたら、フーガ王家は終わりだ。そうなったら、お前がどうなるか、改めて考えてみろ」 


 俺にここまで言われても、エリーゼはまだ勝ち誇ったような顔を崩さない。


「大丈夫ですわ。別の方が皇帝になり、その方の花嫁になれば良いんですもの」

「別の方?」


 妙な胸騒ぎがした。


 彼女の言わんとすることはわかった。

 自分に見向きもしない今の皇帝ガルイースを陥れて、別の男を皇帝に仕立て上げ、その新皇帝の花嫁になるつもりなのだ。

 だが、これがエリーゼ自身の発想だとは、どうにも思えない。


 彼女の後ろで入れ知恵した黒幕がいると、俺の勘が言っている。


「……この女、バカなの?」


 ネオが、心底呆れた様子で呟く。


「不敬ですわよ! お前なんか、私の一言でいくらでも処刑……」

「彼女は筆頭魔術師の補佐だ。皇帝陛下より直々にその地位を賜っている。帝国内において、今現在お前より立場は上だ……それより、誰を皇帝にするつもりだったのか、取り調べでじっくりと聞かせてもらおうじゃないか」


 俺がそう言った時、キースが中庭に駆け付けてきた。

 簡単に事情を説明して、三人を逮捕して取り調べるように命じた。


「賢者様! 娘の不敬は私から深くお詫び申し上げます! ですからどうか! フーガ王国王家の存続だけはお許しください!」


 キースによって魔力封じの手枷を嵌められ、連行されながらも必死に懇願するフーガ国王。


「それは取り調べの後で決まる。だが、魔狼を操って帝都を襲わせた犯人と国王が繋がっていたとなると、王家解体は免れないだろうな」

「っ! くそっ! ジェンキンスの言うことなんて聞くんじゃなかった……!」


 フーガ国王は、引き摺られるように連行されて行く直前、そう吐き捨た。


 呟かれたジェンキンスという名には、聞き覚えがある。


 ジェンキンス・ラー・ブルーバード。

 ブルーバード公国の当主であり、ソフィの父親だ。

 領民からは敬意を表して大公と呼ばれることもあるが、帝国内での爵位は公爵になっている。

 

「……マルク・ウィングロード……銀髪に青い眼……」


 ジェンキンスもソフィも、同じ色の髪と眼を有している。

 マルクはブルーバード家の血縁か。


「……調べる必要があるな」


 その前に、一旦皇帝に報告しておくべきか。


 俺はその場をキースに任せ、フィアとネオも連れて玉座の間へ向かった。

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