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予想外の来客

この小説は『悪役令嬢に転生したら正体がまさかの殺し屋でした』と同じ世界観のお話です。

 ノックをして部屋に入ると、三人の少女と、皇帝直属の騎士団長がいた。


「ああ、賢者様、ちょうど良かった。今、オーウェンが事情聴取に同席しています。残るはそちらの獣人の少女のみですので、次に呼ばれたら隣の部屋へお願いします」


 オーウェンは副団長の名だ。

 オーウェン・ルーン・カブリオレ。二十三歳。ガブリオレ男爵家の三男。


 一方の団長は、名をキース・スクーデリア。二十二歳。

 団長は庶民の出身だが、腕を見込まれて皇帝直属の騎士団に入団、最年少で団長となった逸材だ。


「ところで、先程城の結界が張り直されたようですが、何かご存知ですか?」

「ああ……まぁ、皇帝の意向だ」


 騎士団長ともなれば、魔術師でなくともそれなりに魔力がある。結界が張り直されたことに気付くのは当然だ。

 しかし全てを説明するのは、その後の彼らの反応も含めて面倒臭い。

 適当に濁した俺に、キースは怪訝そうにしながらもそれ以上の追及はしなかった。


「あと、報告ですが、魔術師のオースター派遣手配は完了しました。カイル殿との連携を図り、常時連絡が取れるようにしてあります」

「わかった」

「それと、先程通信した際カイル殿から報告があったのですが、誘拐犯である神父と、ウェスタニアのベルフェール公爵は裏で繋がっていたようです」

 

 キースの言葉に、俺は「やはりな」と頷いた。


「繋がっていたという証拠は?」

「地下廊下を捜査したところ、隠し部屋が見つかり、そこで公爵とやり取りしていたとみられる密書が見つかったとのことでした」

「そうか。すぐにウェスタニア国王に報告すべきだな」

「ええ。ベルフェール公爵はウェスタニア王国の王城にて拘束されているとのことですので、現時点での捜査内容をまとめ、早急さっきゅうに意見書をウェスタニア国王に送るよう手配します」

「頼んだ」


 その話が済んだところで、事情聴取されていた少女が一人戻り、ルーナが隣の部屋に呼ばれた。


 本当は、捜査や事情聴取などしなくても、俺が風を読めば万物の事実を知ることができる。

 しかし、まだ周りに俺が魔術師であることは秘密だ。

 フィアが筆頭魔術師になったとはいえ、いつその座を放り出すとも限らない。


 それに、俺が一人で捜査に当たってしまうと、騎士団の仕事を奪ってしまうことになる。それも良くない。

 基本的な捜査は彼らに任せ、彼らが行き詰まったら風を読んで手助けをする、それが俺の役割だと思っている。


「……さてと、俺はちょっと出るが、お前達はルーナを送り届けるんだったよな?」

「ああ、そのつもりだ。ルーナの親父からの依頼だからな」


 頷いたフィアに、俺はほんの少し違和感を覚えた。


 フィアは、どこでルーナの父と出会っただろう。

 ルーナが誘拐されていたのもシナリオにないが、そこが繋がっていることもまた予想外だ。

 それを尋ねると、彼女は特に隠す様子もなく答えてくれた。


「リグナムの森で変な動きをしていた獣人のオッサンがいたから声を掛けたら、娘が行方不明で困ってる、もし見つけて連れ戻せたら金貨十枚くれるっていうからさ」


 リグナムの森とは、ゲーム上で皇帝がルーナと出会う大陸南東にある森で、獣人の村がある場所だ。


「そうか……あの教会でお前から「父親から連れ戻すように依頼された」って聞いた時、ルーナの顔が曇ったから、もしかしたら父親と確執があるのかもしれない。連れ帰るなら、少し様子を気に掛けた方が良いかもしれないぞ」


 俺の言葉に、ネオは無表情のまま頷く。


「それは気付いていたわ……でも、私達は連れ帰るまでか依頼。その後のことは、また別の話よ」


 暗に、依頼さえ遂行したら、例えその後自分達がルーナを連れ去ろうと関係ない、と言っているのだろうか。


 阿漕アコギな商人かよ。いや、もはや詐欺だろ。


 まぁ、二人がルーナのことを気に掛けていない訳ではないことがわかっただけ良しとしよう。


「じゃあ、俺は出るからな。もし何かあったらカフスを使って連絡してこい」

「はいはーい」


 フィアは気の抜けた緩い返事をして、ひらひらと手を振る。

 俺はやや心配しつつも、応接間を後にした。


 自分の部屋に戻ろうと歩き出すと、廊下の向こうから一人の兵士が慌ただしく駆けてきた。


「賢者様!」


 俺に気付いて慌てた立ち止まり、敬礼する。

 服装からして、彼は騎士団員ではなく城と城下町の警備を主な仕事にしている一般兵だ。


「何かあったのか?」

「それが、隣国アヴェンタドールの第二王女様が突然いらっしゃいまして……」

「はぁっ?」


 驚きのあまり大きな声を出してしまった。兵士がびくりと肩を震わせる。


「すまん、ちょっと驚き過ぎて……」


 アヴェンタドールの第二王女は、例のハーレムエンドに進む過程で現れる攻略対象だ。

 

 ゲーム中での出会いは、領土拡大していく中でアヴェンタドールを攻め落とすと、戦利品として国王から献上される、というものだ。

 最初は自国を攻め落とした皇帝に反抗的な態度を取るが、皇帝の男らしさとその後のアヴェンタドールへの気遣いに、徐々に心を開いていくというシナリオである。


 そう、そもそもアヴェンタドールは現時点では帝国に所属していないのだ。

 それなのに突然城に現れるとはどういう了見だろうか。


「本物なのか?」

「ええ、おそらく……御者含め全員がアヴェンタドール人特有の褐色の肌に金髪、赤い瞳で、国王の紋章入りの馬車で正門に乗り込んできていますので……」

「ならアヴェンタドール人であることは確かだろうが……その第二王女を名乗っている女が本物という証拠はないんだな?」


 問いながら、俺は城の正門に向かう。


 アヴェンタドールは大陸の東端の半島にある。

 ウェスタニアに次ぐ王国だが、閉鎖的で単一民族による王国としては大陸随一である。


「私達門兵では判別できないので、騎士団長か賢者様を呼べと……」

「正しい判断だ」


 言いながら歩調を早める。


 城の正門に着くと、門の前で、帝国内のどの国のものとも違う、やたらと豪華な馬車が一台、兵士によって止められていた。


「賢者様! ああ、良かった! 私共ではもうどうにも……」


 一人の兵士が俺を見て、救世主だと言わんばかりに安堵する。


 俺はこの先どんな展開になるのか、内心ハラハラしつつ、平静を保って馬車に目をやった。

 御者が降り、馬車の窓を開ける。


 そこから顔を覗かせたのは、紛れもなくゲームのキャラである隣国の姫君、メリッサ・アヴェンタドールだった。

 

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