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筆頭魔術師

この小説は『悪役令嬢に転生したら正体がまさかの殺し屋でした』と同じ世界観のお話です。

 皇帝は『皇帝の花嫁の座を得ようとする女のぎらついた眼』が怖いと言っていた。

 だから、その『ぎらついた眼』をしていない女を探せば、簡単に花嫁は決まると思っていた。


 しかし、皇帝の花嫁の座に興味がなさそうだった獣人の娘ルーナと女盗賊のフィアは「違う」と言う。


 無理ゲーかよ。いや、これはもはやクソゲーだ。


 内心で悪態を吐きながら、俺は思考を巡らせる。


 花嫁を探すことも重要だが、今のこの状況が今後にどう影響するのかも、気を付けていかなければならない。

 何故なら、フィアが筆頭魔術師になるだなんて、ゲームのシナリオには一切なかったのだから。

 攻略対象キャラの性格だけでなく、シナリオそのものが俺が知っているゲームからは外れてしまっている。


 どうせならこのままシナリオから外れまくって、バッドエンドも回避できたら良いんだけどな。

 悲しいかな、まだバッドエンドの可能性はある。


 ゲームのストーリー上のバッドエンドのきっかけは、帝国のやり方に反対する貴族が皇帝を陥れ、他国への侵略を失敗させ、その責任を問い、失脚に追い込む、という流れだった。


 バッドエンドが、皇帝が暗殺されるというものだったなら、あのガルイースを暗殺できる人間などこの世界に存在すると思えないから、もう少し気が楽だったかもしれない。

 しかし、バッドエンドはあくまでも皇帝の失脚だ。

 あのガルイースと言えど、大勢の貴族から責め立てられ、地位を剥奪されるとなったら、魔術は封じられるし抵抗はできないだろう。


「……はぁぁ」


 玉座の間を出て思わず溜め息を吐いた俺に、隣を歩くルーナが申し訳なさそうな顔をする。


「……なんか、役に立たなかったみたいでごめんなさい」

「いや、お前のせいじゃない」


 当てが外れはしたが、ゲーム中の攻略対象である町娘と踊り子と隣国の姫君がまだいる。

 希望を捨てるにはまだ早い。


「それより……フィア、筆頭魔術師になったからには、今後盗賊行為は禁止だからな」


 後ろを歩くフィアを振り返ると、彼女は唇をへの字に曲げた。


「わかったよ。やるならバレねぇようにやりゃあ良いんだろ」

「やるなって言ってんだよ!」

「フィア、あの皇帝には多分勝てない。決闘で負けて筆頭魔術師になってしまった以上、盗賊業からは足を洗うべきよ」


 額を抑える俺に、ネオが思わぬ援護射撃を繰り出した。

 仲間の言葉に、フィアは不満そうな顔で唸る。


「そもそも、私が止めるのを聞かないで皇帝に決闘を挑むなんて、何を考えているの? フィアは確かに強い魔術師だけど、ディーヴェスの皇帝は史上最強と謳われているのよ。気軽に挑んで良い相手じゃないわ」

「だって……」

「何のために、賢者とは戦わずに誓約を交わしてここへ来たと思っているの? 賢者が強い魔術師だから無駄なリスクを負わないためでしょう? それなのに、賢者より確実に強い皇帝に挑むなんて、どうかしてるとしか思えないわよ」


 ズバズバグサグサ、そんな効果音が聞こえる気がした。

 早口に捲し立てるネオに、フィアは最終的に項垂れて反論はしなかった。


 ネオの気が済んだと思われるところを見計らって、俺は話題を変える。


「……筆頭魔術師の役割について話しておくが、賢者と同じく、国の平和と繁栄のために尽くすというのが基本理念だ。場内に自室は与えられるが拘束されることはないから、外出は自由だが、皇帝からの招集には必ず応じること」


 言いながら、俺はある物を差し出した。

 受け取ったフィアが、心底嫌そうな顔をする。


「げぇ、これ、お前とお揃いじゃん」

「お揃いとかそういう次元のものじゃない。これは通話できる魔具だ」


 俺と同じ青い石の嵌め込まれたカフス。

 皇帝も同じ物を身に付けている。


 意図を察したフィアは、苦虫を噛み潰してしっかり味わったような顔をしながらもそれを右耳に付けた。


「くっそー……このアタシが帝国の犬に成り下がるなんて……」

「自分で蒔いた種だろ。その点は諦めろ」


 俺が諌めた時、他の少女達と食事をしていた部屋に戻ってきた。

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