表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/38

ルーナを迎えに来た者

この小説は『悪役令嬢に転生したら正体がまさかの殺し屋でした』と同じ世界観のお話です。

 魔力による防壁が織りなされ、俺と五人の少女を取り囲んだ直後、ものすごい轟音と共に牢屋内の石造の壁がぶっ飛んだ。


 俺は悲鳴を上げる少女達を庇うように前に出て、言葉を失った。


 ぶっ飛んだ壁の向こうにいたのは、教会に来る少し前に出会って別れた赤髪の美少女盗賊、フィアだったのだ。


「何でここに!」


 思わず叫んだ俺に、フィアが眉を寄せる。


「ああ? テメェ、さっきのケンジャとやらじゃねぇか。アタシは、ここに女の子が誘拐されてるって聞いて、助けに来たんだよ。まさか、お前が犯人だったとはな!」


 言いながら、凄絶な魔力を立ち上らせるフィア。

 俺は堪らず声を荒らげる。


「俺じゃない! 誘拐犯はここの神父だっ!」


 俺とてそれなりの魔術師だ。

 この世界に転生して知ったが、転生者は魂が前世の世界から次元を超えた瞬間に、魂に膨大な魔力が付与される仕組みらしい。

 強い魔術師が全員転生者であるとは限らないが、転生者が強い魔術師になる可能性は非常に高いという訳だ。


 しかし、そんな俺でも、フィアの凄絶な魔力を前にすると勝てる気がしない。

 彼女の魔力のオーラは、皇帝ガルイースと並ぶか、もしかしたらそれより上かもしれない。


 皇帝ガルイースは魔術の天才だ。

 どういう訳か、皇帝の座に就いた時点で、彼の魔術レベルはゲームの基準でいうと最大だった。

 膨大な魔力を付与された転生者である俺でさえ、彼には及ばない。


 とはいえ、魔術師同士の戦い場合、魔力の強さだけで勝敗は決まらないので、誰が一番強いかはそう簡単に判断できないのだが。


「神父? 神父なんてどこにいるんだよ」

「この上の教会……って、そもそもお前はどこから入って来てんだよ」


 ここは地下牢だ。

 フィアは、地下牢の壁をぶち壊して侵入してきた。地下牢の壁の向こうは、地中ではなかったのか。


 そんな俺の疑問に、彼女は肩を竦める。


「誘拐されたっていう女の子の気配を辿って来たんだよ。地上の途中で気配が消えてて追えなくなったから、探索魔術を使って位置を探り出したら、居場所が地下だったから、地面ぶち抜いて来たっつー訳。一応真上に落ちないように位置は調整したぞ」


 なんて無茶苦茶な。


 と、彼女の後ろから、何食わぬ顔でネオが登場した。


「フィア、急に爆破魔術を地面に向けて使うのはやめて。危うく崩落に巻き込まれるところだったわ」


 淡々と諭しつつ、俺の顔を見て怪訝そうに首を傾げた。


「帝国賢者も、少女誘拐事件を捜査していたということ? 皇帝の花嫁探しは表向きの用件?」


 なるほど、そう解釈するか。


 フィアのようにぱっと見ただけで俺を誘拐犯と認識するようなことはなく、あくまで冷静なネオに内心でほっと息を吐いた。


「いや、皇帝の花嫁探しが第一の目的だ。たまたま、通りがかりの教会で嫌な予感がしたんで、乗り込んだんだ。流石に、この状況を見過ごせるほど俺も屑じゃないんでね」


 俺の言葉に、ネオが囚われていた少女達を一瞥する。

 彼女達は皆無言で頷き、俺が嘘を言っていないと証言してくれた。


「帝国賢者も捨てたものじゃないわね……」


 ネオが小さく呟いたのが聞こえた。

 よくわからんが、褒められたらしい。


 と、フィアが少女達に視線を移した。


「この中に……えっと、何だっけ? ルーン……いや、ルナチェン……」


 思い出せないようで額に指を当てるフィア。

 ネオがすかさず口を挟んだ。


「ルーナ・センテナリオ」

「そう、ルーナって奴はいるか?」


 名を呼ばれたルーナがおずおずと手を挙げると、ネオは小さく頷いた。


「貴方の父親から、貴方を連れ戻すように依頼を受けたの。家まで送るから帰りましょう」

「え……父さんが?」


 ルーナの瞳が、明らかに揺れた。

 娘が誘拐されたなら、父親が心配しているのは当然だろうが、彼女の様子から、彼女が父親を恐れているように感じた。


 ゲームでは、そんな設定はなかった。

 公式のシナリオでは、次期族長となる青年と無理矢理結婚させられそうになっていて、そこを皇帝が救って、ハーレムに加わるという流れだった。

 次期族長との結婚に関しては、相手が一方的にルーナに好意を寄せていて、次期族長という立場から圧力をかけていて、ルーナは両親共に逆らえない、という設定だったはずだ。


 その辺りの設定も、もしかしたら変わってしまっているかもしれない。

 話を聞くためにも、ますます彼女をこのまま帰す訳にはいかないだろう。


「お前達の邪魔をするつもりはないが、これは帝国内で起きた立派な犯罪だ。神父を裁くためにも、彼女達には被害者として証言してもらうため、一度アージャーのパラティアム城まで来てもらう必要がある」


 俺がフィアとネオに向けてそう告げると、ルーナが俺に縋るような目を向けた。

 その目を見て確信する。


 間違いなく、彼女は父親の元に戻ることを望んではいない。


 しかし、フィアは異を唱えた。


「ああ? アタシ達はルーナの親父からルーナを連れ戻してくれって依頼されてんだ。邪魔すんじゃねぇよ」

「じゃあお前達もアージャーまで来れば良い。事情聴取が済んだら家まで送ってやるなり好きにしろ」

「指名手配されている私達が、貴方についていくとでも? 事情聴取なら、四人いたら充分だと思うけど」


 ネオも食い下がる。

 まぁ当然と言えば当然か。


 俺は何としてでもルーナをアージャーへ連れていくため、思考を巡らせた。

もしよろしければ、ページ下部のクリック評価や、ブックマーク追加、いいねで応援頂けると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ