誰かに公開する予定は無い
その言葉に多くの者は歓喜の声を上げた。
少し薄暗い拠点の中で、ショウマは話を続けた。
「近々、あまりよろしくない噂を聞いた……この辺りの小さめの街だ。『神』とか言う偶像に縋る馬鹿共が近頃、熱心に布教と言う名の迫害を進めているらしい」
「おぉ!って事はソイツら全員ぶっ殺すって事か?」
ジャックの期待が高ぶる声と他者の命を奪える事に対する喜びが表情に強く浮かぶ。
僕はジャックの言葉に対して、素直に小首を縦に振って頷く。
ジャックの言葉に間違いは存在しない。
神とか言う、存在していたかすら怪しい存在を一々熱心になって皆で信じている。
考えるだけで虫唾が走る様な行為だ。
そもそも祈った所で何か変わるのか?
と、僕は思っている。
神に祈れば、永遠に死なずに済むのか?
神に祈れば、一生病にかからずに済むのか?
答えは絶対に『NO』だろう。
信じた所で、祈った所で変わらないものは変わらない。
それぐらい考えれば誰でも簡単に分かる事だ。
祈るよりも、何かしら行動を起こした方が成功する可能性は大幅に上昇する。
それなのに、この世界の人間はほぼ全ての人間が神の事を強く信仰している。
勿論だが、拒否権は存在しないと考えた方が正しい。
信じなければ神の手先の様な存在である『異端審問隊』に捕まって、心から信じるまで只管に暴力と屈辱の数々を与えられる事となる。
因みにだが僕の家もやはり同じと言う事らしく、勉強を教わる中で神に対する知識も内心嫌気が刺しながらも覚えられさせた事があった。
まぁ何一つとして覚えた気がないので、今の所何も覚えていないのだが。
「異端審問隊、それが今回のターゲットだ…我々の掌握する世界にそんなモノは一切必要ない……」
ショウマは殺気を込めた双眸を配下達に向ける。黒色瞳はまるで血が混じったかの様に、赤く染まっているかの様であった。
そして彼の目的の世界掌握と言う目標の前に、神の手先と言っても刺し違えない異端審問隊は邪魔な存在であり、真っ先に全てを潰しておかなければならない存在だった。
このまま残していては、後でまた横槍を入れてくる事に違いはないだろうと予想が出来ていたからだ。
「アタシ達の統治する世界に、神を馬鹿みたいに信仰し、信じない奴を迫害する奴は必要ない……って事か?」
紫苑の言う通りだ。自分が言いたかった事を彼女はまるで代弁してくれたかの様であった。
彼女の言う事に間違いはなく、自分が言いたい事とほぼ同じ事であった。
「その通りだ、今日の夜に奴らの支部を破壊する。勿論、全員殲滅だ…」
「うっしゃぁ!こりゃまた楽しい事になりそうだぜ!」
人を殺し、他者を痛め付ける事で快感を得る事が生き甲斐の一つであるジャックは今、誰よりも強く喜びを覚えていた。
喜びのあまり、まだ始まってもいないのに、所持しているサブマシンガンを構えたり、手榴弾をまるでお手玉の様に軽く上に投げたりしていたのだ。
「決行は今日の夜だ……闇に紛れ、闇に潜み、敵を狩る……」
こう言うの一回言ってみたかった。夜闇に隠れて、闇から敵を討つ。
こんなにカッコつけられる事があるだろうか。現実でこんな事やったら、間違いなく厨二病に思われてしまう。
だが、今なら誰も自分を厨二病呼ばわりする事もないだろう。
ショウマは心の中で軽く笑いを見せた。
やっぱ異世界って最高だな。
「それなら、早い内にボクが偵察に行ってくるよ」
そう言うと胡座をかきながら座り込み、ショウマの話を聞いていたディープがその場に立ち上がった。
ディープ、またコードネーム「Scout」は主に偵察や諜報を得意としたオートマトンであり、射出可能なアンカーによる高速移動は高台への素早い移動。
ステルスシステムを装備しており、自らの姿を消失させて、敵の視覚に入らずに索敵が可能だったりと、戦闘ではなく偵察等に長けた優秀な偵察員だ。
今回も勿論、偵察や諜報は彼に任せるつもりだ。
ディープは早速、と言わんばかりのスピードでまだ居場所も伝えていないと言うのに偵察を行おうと、この根城から出ていこうとする。
まぁディープなら居場所なんて直接教えなくても、勝手に見つけてそうだが……。
「あ、ちょっと待ってくれるか?」
「総帥殿?どうかしたのか?」
折角、全員が久しぶりに集まったのだ。
存在を公に知られない様にする為の都合上。中々、全員集合が出来ないCRISISのメンバーではあるが、今回は久しぶりの全員集合なのだ。
ショウマは自ら、椅子から腰を上げると自らの能力の一つである掌握者の権威を使用し、その空間の中からある物を取り出した。
「久しぶりに集まったんだ、皆で……一曲どうだ?」
「もしかして……また?」
(ワクワクしているビープ音)
ショウマが取り出したのは、まさかのエレキギターであった。
こんなに強キャラ感ある能力使ってるから、また何か武器を取り出そうと思った人がいるかもしれない。
だが、取り出したのは武器ではなくエレキギターだ。
更にベースやドラム、更には三味線まで、様々な楽器をショウマは自らの能力である掌握者の権威の中から取り出した。
「うぉ!?オレのベースじゃねぇか!兄貴、全員揃ったから!」
「その通りだ、皆で演奏するぞ!」
何を言っているか理解出来ただろうか。
一応言っておくと、今からCRISISメンバー8人全員でロックな感じのカッコイイ演奏を行う、と言う事だ。
全員が集まった時のみに、誰にも知られる事なく行われるこの演奏会。
担当
ショウマ→ギター
ヴェイザー→ギター(ボーカルも)
雪貞→尺八
ニクス→ビートボックス(ビープ音による)
紫苑→三味線
ジャック→ベース
ディープ→ドラム
ミディア→ベース
と言った感じだ。全員、得意な楽器をそれぞれ手に持ち、配置に着いた。
「やっぱり、ドラムがボクには一番だな」
ディープはクルリを後ろを向いて戻ってくると早速、自らの担当の楽器であるドラムの傍に近付くと、二本のドラムスティックを両手に持ち軽く手元で回してみたり、軽く叩いてみたりと言った事をしていた。
「おぉ!アタシの三味線もあるじゃねぇか!」
「俺の尺八もある……流石だ」
和風ロックな感じを出す為に、このバンドチームには三味線担当と尺八担当がいる。
紫苑と雪貞は三味線と尺八を担当だ。
普通のロックも好きだが、中でも和風ロックは格別な程に好きで、毎日の様に聞きまくっていた。
いつの日かバンドを組んで演奏が出来るのなら、和風ロックを演奏したかった。
だが、今なら出来る。こうやって、融通の利く仲間を揃えた為、皆すぐにそれぞれの担当楽器を練習してくれた。
しかも、全員何かと早く習得が出来ていたので驚きだ。
こうやって、皆で好きな様に演奏が出来るのは嬉しい限りだ。
そしてショウマも自らの担当楽器であるエレキギターを取り出すと、そのままいつでも弾く事が出来る様に抱えた。
「兄貴!オレは準備OKだぜ!」
「ワタシ、ベース弾くの久しぶりだわ……上手く出来るかしら?」
「ショウマ、私は何を歌えば良い?」
ヴェイザーの担当はギター、それにプラスしてボーカルも担当している。
ギターとボーカル二つ同時と言う少し難しめの担当である彼女だが、ヴェイザーは要領が良い方の人物である為、何の心配も必要ないつもりだ。
「いつものだ…………ディープ、ニクス!」
(ビープボックス)
「はい、1、2、3!」
ディープがドラムを数回軽く叩き、ニクスがビープ音によるビートボックスを刻む。
それと同時にショウマはギターの弦を弾いた。




