ようやく1歩前進
「ショウマ、計画通りにいったぞ」
「流石だよ、ヴェイザー」
互いに椅子に座り、向かい合う形でショウマとヴェイザーは話していた。
話している内容は言わずもがな、学園襲撃に関する事であった。
先日、暇潰しと力試し、
そして圧倒的力を見せる為の1歩として行った学園の襲撃。
結果としては、大成功と断言出来る結果となった。
完璧な破壊と殺害。
誰一人として逃れる事の出来ない程の圧倒的な暴力。
正に、完璧。
「ジャックは相変わらず、恐らくだけどほぼ全生徒の命を奪ったわ。スリフコが偽情報を巻いたお陰で誰にも気付かれてないし、雪貞と私も、上手くやれたし1人確保した」
「おぉ!捕まえたの?今、どうしてるんだ?」
「ジャックとディープの2人が上手い事痛め付けてるよ。処分はどうする?」
「まぁ、気が済むまでやれば?死んだら、適当に首切って晒しとけばいいんじゃない?」
「オーケー、伝えとくね」
◇◇
「ねぇねぇ、ボクの活躍見てくれたかな?カッコよく後ろから回り込んで一撃!………って、ねぇ聞いてる?」
ディープがそう嬉しげな口調で面白く話し掛ける。
しかし、ディープの言葉に何か返答が来る事はなかった。
「ふ―――――!ふっ!んふっ――――!」
聞こえてくるのは、まるで苦しんでいるかの様なくぐもった声だけ。
荒い鼻息の様にも思えるその声は、ディープを軽く苛立たせた。
「酷いなぁ、ボクの活躍を聞いてもらおうと思ったのに……」
苛立ちと同時に、軽い悲しみも浮かび上がってきた。
ディープはまるで、泣いてしまったかの様にして首を下に落とした。
「悪ぃディープ。耳削いじまった!これじゃ何も聞こえねぇわ!」
「あぁ、そうだった!ボクもこの女の子の指の骨を折った事を忘れていたよ!」
ディープは目の前で椅子に縛り付けられている女の子の指を全部折ってしまった事を忘れていたらしい。
おっちょこちょいなロボットだ。
「それじゃあ、次は足の指だね!踏み潰しちゃえ!」
「んっ――――!!ンンッ!」
ディープは軽く飛び上がり、女性の裸足の指に向かってその、飛び上がった足を容赦なく下ろした。
ディープの全身は、生身の人間の様な体ではなく、完全な機械によって作られている。
勿論、重さも普通の人間よりは多少なりとも重くなっているのだ。
そんなモノが、全体重を掛けて指の上に乗っている。
骨が潰れるのは簡単な話だった。
女性は案の定、この地下の部屋中に響き渡る程の絶叫を上げる。
しかし、口に布を噛ませている為、その声は耳を痛くする金切り声の様な絶叫ではなく、くぐもったか弱い叫びだった。
「っち!うるせぇんだよ!」
ジャックは女性の叫びに思わず強く苛立つと同時に、手に持っていた数本の内の一本の鋭い針を彼女の太腿に容赦なく突き立てた。
その瞬間、椅子に縛られた女の太腿には耐え難い痛みが走った。
「近所迷惑だよ、少しは声を小さくしてくれないと」
「うっせぇな、この女。ディープ、どうする?殺すか?」
「うぅ~ん?どうしようか……総帥殿は好きにやれと言っていたが……ワイヤーで絞め壊すか……なんなら…」
「ミサイルでも撃ち込む?」
「いやいや、この部屋ごと木っ端微塵になるよ」
傍から見れば、意味の分からないイカれていて狂っている様な会話。
しかし、彼女らにとってこんな会話等、日常の中の会話に過ぎないのだ。
この『CRISIS』と言う組織の中で、人一人の命などそこら辺に落ちている石と同義だ。
それは敵も、そして自分達も同じ事だった。
「お、2人共。楽しんでるね」
暇だったので、拷問現場に僕は行く事にした。
少々血生臭いが、現在進行形で拷問している為、仕方の無い事だ、我慢しよう。
「お、兄貴!」
「総帥殿自ら来てくれるなんて、気前が良いね」
「面倒臭いからね……一発だ」
これ以上拷問した所で、何も面白くない。
飽きた、その一言に尽きる。
壊れたおもちゃと同じ、壊れるか飽きたら捨てる。
それだけの話だ、目の前で縛られてる生徒会長も同じ事だ。
「取り敢えず、死んどけ」
MasterMindは、何の躊躇いも見せない。
取り敢えず死ね、そう心の中で呟くと同時に右手に握られた銃の引き金を彼は引いた。
正確に放たれた弾丸は、生徒会長の右肺を正確無比に貫いた。
何の断末魔も上げぬまま、生徒会長は事切れた。
最後はまるで跳ねる魚の様にして、数回体を揺すらせながら。
「総帥殿、死体はどうする?」
「首だけ残しといて。後で誰かに晒させに行くよ」
「了解、ならその役目はボクが受けよう」
「すまないな、頼むぞディープ」
そう言い残し、トドメの一撃だけを放ったショウマはただ無言のまま、ディープとジャックを残して部屋から立ち去った。
◇◇
「ほら、スリフコ。ずっとパソコンは良くないぞ?」
コトン、と音が鳴ると同時にスリフコの使用しているデスクの上には一つの湯呑みが置かれた。
「チョア(いいね)、美味そうなお茶だな」
「また監視活動?本当に抜け目無いね」
ゲーミングチェア風の椅子に座り込み、ずっとパソコンを見つめているスリフコの事を後ろから庵が面白げに覗き込む。
「あぁ、いつヤツらがこっちに気付くか分からんからな。常に警戒しておかないと……」
「で、ニクスにも頼んでたみたいだけど……?」
1人で、ただ只管に監視活動を続けるスリフコを他所に隣ではスリープモードになってしまっているニクスの姿があった。
「寝てるよ?」
庵の言葉通りだ。
ニクスは疲れたのか、はたまたモニターを見つめ続けるのが嫌になったのかは知らないが、無事にスリープモードに落ちていた。
スリフコは、ヤレヤレと言いたげな表情を見せると同時に、数回首を横に振る。
そして立ち上がり、ニクスの傍に行く。
「おい、イロナ(起きろ)!」
(眠りから覚めたビープ音)
スリフコがそれなりに大きな声で叫んだお陰か知らないが、ニクスはスリープモードから目覚めた。
「やれやれ、まだお前には早かったな」
飄々とした表情と皮肉げな口調で言い残し、スリフコは再び椅子に座り込み監視活動を続けた。
(少し悲しそうなビープ音)
「スリフコ、あんまり虐めちゃ駄目だからね?」
「言われなくとも………ジョムタトエバヤジ(もう少し調べてみるか)」
「んん?」
稀に彼の口から出てくるよく分からない言葉に、庵は不意に戸惑ってしまった。




