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君のお相手 ~I’m a Killer~

 

「はむっ、主様。これ美味しいです」



「あぁ、なら良かった」



 時間は現在、午後に入って暫く経った所だ。



 本来なら、学生であるシンリとシャルティは今は学校で授業を受けているはずだ。




 しかし学校がある時間であるにも関わらず、2人は学校外に出ていたのだ。



 シャルティは主であるシンリに買ってもらったクレープを頬張っており、シンリはそんな彼女を眺めている。



「ほれ、クリーム付いてるぞ」



「あ、ありがとうございます!」



 シンリは無機質な声で、彼女の口周りに付着していた白いクリームを指で取る。



 そしてクリームが付着した自分の指を彼女の口の前に向ける。




 シャルティは、すぐにクリームが付いたシンリの指をパクリと咥える。



「ふぁ~美味しい…。でも、主様いいんですか?こんな思っいきりサボりなんて…」




 元を辿ると、シンリは今日普通に学校に行くはずだった。




 朝になって、普通にシャルティと共に2人で学校に登校する予定だった。





 しかし予定変更になった。



 普通に校門を潜ろうとした時、シンリは何故か、何故かは分からないが学校に行く事をやめてしまった。




 無論、何で今日と言う日に突然として行かなくなってしまったのか、理由は分からない。




 しかし、何故か行く気が完全に消えてしまったシンリは共に校門を潜ろうとしていたシャルティの手を引き、学校から2人で立ち去った。




 ◇◇




 そして今に至る。



 学校を理由もなくサボった2人は、今呑気に時間の流れを感じていた。



「お姉様やお母様に知られたら、怒られますよ?」



「あぁ知ってる。だが、何か行く気にならなかった、と言うか行ってはいけない様な気がしたんだ……」



「行ってはいけ…ない?」




 しかし、この選択はある意味間違ってはいなかったのかもしれない。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「来い……」



「一発でぶっ潰す!」



 雪貞はレオニスを前にしても、一切表情筋を崩す事はない。



 サンバイザーを深く被ると同時に、自らも拳を硬く握り、構えを取った。




 そして先制して攻撃を仕掛けてきたのはレオニスだ。



 猛獣の如く、勇猛果敢に猪突猛進に雪貞と間合いを詰める。



「オラァ!」



「ふっ…」



 レオニスは真っ直ぐ雪貞に対して距離を詰める。




 そして躊躇いなく、彼の顔面に目掛けて一発のストレートを放った。



 正に神速の如くのスピード。並の人間であれば避けるのは不可能と呼べる程の速さだ。


 


 威力も恐ろしい程に高いだろう。魔力と筋力強化によって、パワーが上乗せされ威力は更に高まる。



「スピード、威力共に申し分無し。しかし、まだ俺の義眼()で見える範囲だ」



 雪貞はすぐさま体勢をずらし、顔面に向けて放たれた一発の拳を意図も容易く避ける。



 レオニスの拳は虚しくも空を裂き、強い力を込めて殴った為、僅かながら隙が生まれる。



「はい、王手…」



「嘘だろ!?速い!」



 気が付いたら、レオニスの右腕は雪貞の両手によって強く掴まれていた。



 振り解こうにも、雪貞の握る力が圧倒的過ぎてレオニスの持つ力では振り解く事が出来なかった。




 休みなく鍛えているつもりではあったが、上回る事は出来なかった。



「折らせてもらう」



 刹那、右腕に激痛が走った。



 バキボキ、と骨が砕けて折れる様な音が無情にも響く。



「う、ぐっ!!」



 表現し難い痛みに、レオニスは思わず歯を食いしばった。



 右腕が有り得ない方向に曲がっている。



 本来曲がる方向とは真逆の方向に、関節が曲がっている。




 もう右腕は暫く動かないだろう。有り得ない方向に曲がっている時点でもう分かりきっていた事だ。



「クソ……がぁ!」



 せめてもの抵抗で、レオニスは動かない右腕の代わりに右足を使って、雪貞に向けてハイキックを放つ。


 


 別に倒せなくても良い。



 一発ぐらい食らっとけ、の精神で放った蹴りだ。



「それは倒す蹴りか?それとも遊びの蹴りか?」



 案の定、レオニスの放った蹴りは無情にも片手で止められた。


 


 そして、蹴りを止められたレオニスの心の中には悔しさだけが残っていた。



 倒せなかった事、仮にも副生徒会長であるのにこんな簡単に打ち負かされた事、そして息巻いて突撃しておいてこんなザマである事。



 生徒会長や、他の皆に申し訳なく感じてしまう。




 さっき廊下でもう息絶えていた名も知らぬ1回生にも、情けない姿を晒してしまった。



「へっ、こりゃとんだ生き恥だな……」



「殺す蹴りぐらい、覚えておけ。それと……スカートでハイキックはやめろ」



 雪貞の骨を穿ち、身を刺す勢いの蹴りがレオニスの胴体に直撃した。



「ゴフッ!?」



 威力は桁が余裕で外れている。腕を折られた時よりも更に重く鈍い痛みが体を駆け巡った。




 レオニスは蹴りを入れられた僅かな一瞬で意識を完全に飛ばされた。




 口から涎と血を吐き、まるで風で飛ばされた葉の様にして、体は宙を舞う。



 そして、その体は最終的に学校の壁に直撃する。



「がはっ!カルデア………すまん…」



 その言葉を最後に、レオニスの意識は完全に途絶えた。



「王都の学校生徒でこの程度か………もう少し弱めるべきだったか……?」




 ◇◇




「あら、君の相方は殺られたみたいよ?」



「くっ、レオニス!」



 カルデアスの言葉に、彼女は反応を見せない。



 今は完全に意識が途絶えてしまっている為、彼女がどれだけ名前を呼んでも、その声に応える事はなかった。



「不潔な見た目もそうですが、何て事を……」



「失礼ね、これでも愛用してる服なのに」



 これはヴェイザーの感性が独特なだけであって、カルデアスは全く異常ではない。



 ヴェイザーが独特なだけだからね。





(変だわ、これだけ暴れ回っているのに。どうして先生も騎士団や警備隊が来ないの?)



 カルデアスは内心僅かに焦りつつあった。



 敵がこの校内に潜入して、もうそれなりに時間が経っているはずだ。



 普通、これだけの騒ぎを起こせば誰かしらが気が付いて外部に連絡が行くのは普通。



 と言うか学校内での騒ぎなら、すぐにでも教師陣が駆け付けるはずなのだ。




 しかし、教師陣が来る事も、学校外から騎士団や警備隊が来る事は一切ない。



 来る予兆も、来る気配も一切感じられなかったのだ。




 ◇◇




「どうかな?ボクのやり方、完璧でしょ?…………ねぇ、聞いてる?」



「Scout殿、もう死んでます」



「折角新しい仲間で出来るチャンスだったのに!」



「教師陣はこれで壊滅、うなじを削ぐのも楽じゃありませんね……」



「ワイヤーで全員の首を絞める遊びも楽しいと思うよ、ボクは」



 教師陣達が来ない理由、それはもう既に全員死んでいたから、それだけだ。



 ステルスシステムを用いて、学校内に侵入していたScoutとAssassin。




 彼らの目的は、このイージス魔法学校の全教師陣の排除だ。



 騒動を感知されない為に、2人は他の面々が暴れ回る前に、全教師陣を排除していた。



 姿を消す事の出来る2人は、その力を遺憾無く発揮。



 Scout基ディープはステルスシステムを用いて透明化し、ワイヤーアンカーで首を絞める。



 Assassin基庵は小太刀、もしくは苦無でうなじや頸動脈を斬る。




 言わばステルスキルで全教師陣を簡単に排除していたのだ。




 ただ1人除いては……。




 ◇◇




(く、たとえ1人であったとしても!)



「退けてみせる!」



「何を見せてくれる?」



「風よ!乱れる如く吹き荒れろ!」



 風魔法か…。



 ヴェイザーは心の中で一言そう呟いた。



「吹き飛べ!」



 まるで竜巻でも起こったのか、と錯覚させる程に高く舞い上がる突風。




 体を簡単に浮かされ、身動きが取れなくなってしまいそうな程に強い風が吹く。



 ヴェイザーは僅かながらに手で顔を覆い、風を遮った。




 しかし、彼女の表情にはまだ余裕があった。



 まるで何かを見据えているかの様に、この展開を喜んでいるかの様に…。



「相手の力量も知らずに……未熟ね」



「何を言っている!?風を呑み込め!」



 カルデアスは更に風の出力を高め、その風の渦をヴェイザーに向けて放つ。



 あの風の渦に巻き込まれてしまえば、恐らく遥か彼方に飛ばされる事は間違いないだろう。




 風の強さは最早、鋭い刃の如く、鋭く激しさを増している。




 しかし、これは逆に好都合だ。




 この吹き荒れる風、そしてこの場に存在している空気。




 ヴェイザーは完璧に整った舞台を前に、ショウマと同じ様にして不敵な笑みを見せる。



 しかし、その不敵な笑みはショウマの狂気を孕んだかの様な笑みではなく、色気があり妖艶な雰囲気を纏う笑みだった。



(効果範囲内の風を即座に収集及び吸収、範囲内全酸素空気を圧縮………やれる)




 一瞬だけ風が揺らいだ。



 そして吹き荒れた風は揺らぐと同時に一箇所へと吸い寄せられる様にして集まっていく。




 空気は圧縮され、温度が上昇していく。




 混ざり合い、絡み合う様にして集まっていく風と圧縮された空気。





 その二つが揃う時、彼女の勝利も確定する。



「風が、私の風が吸い寄せられている?」



電離気体(プラズマ)……それがコイツの名前…」



「有り得ない!これは私の魔法だと言うのに!」



 彼女の言葉の通りだ。



 この電離気体(プラズマ)を生成する時に使った風は、ヴェイザーが起こした風ではなく自然と吹いていた訳でも無い。



 本来はカルデアスが使える適正の魔法、風魔法。



 彼女が詠唱を行い、起こした風なのだ。



「他者の使用した魔法など、力場を変えてしまえば、簡単に敵に利用される。分からないのかしら?」



「くっ!なら、剣で!」



 魔法は利用されるだけだと悟ったのか、彼女は腰に携えていた鞘に収められた長剣をすばやく引き抜いた。



 ヴェイザーは手持ち武器を持っていない。




 丸腰の彼女相手なら撃破出来ると思ったのか、カルデアスは真正面からヴェイザーに向かって斬り掛かってきた。



 彼女の着ている服的に、数回斬られれば普通に致命傷になりかねない。




 しかし、剣で斬り掛かるのはあまりにも愚策だった。



「はぁぁぁぁ!!」



「遅い……」



 無論、掌握者の右腕たる彼女に、精々学生の域を脱する程度の実力を持っていたとて勝てる訳が無い。



 彼女の剣筋はヴェイザーから見れば、スロー再生と同義だった。




 余裕で見切れる、反撃も容易だ。



 だが別に反撃する必要性は全く存在しない。




 ヴェイザーは耳に人差し指と中指を当て、魔力通信を行う。



(私だ、電離気体(プラズマ)を生成した。後は全てそっちで始末してくれる…そろそろ撤退するぞ…)




 ◇◇




「あぁ?もう帰んかよ!?………何人ぶっ殺したか忘れちまったぜ…」




 ◇◇




「Castor様、我々も建物の破壊を完了しました。任務遂行完了と判断した為帰還致します」



(任務を終えた事を伝えるビープ音)




 ◇◇




「残念、もう帰るのか。折角友達が出来ると思ったのに。皆、首絞めたら死んじゃうなんて…」



「首なんて絞めたら普通死にますよ。特に貴方は力が強いんですから…」




 ◇◇



「やれやれ、今回はアタシの出る幕は無かったな…」



「構いませんとも、時には裏に回るのも役目です」



「間違ってはいないな、もう少し派手でも良かったとは思うが」




 ◇◇




 通信を終えたヴェイザーは形成され、目の前に現れる電離気体(プラズマ)を前にして、臆する事なく素直に背中を向けた。



 そして、彼女を嘲笑う様な姿勢でその場から去ろうとしていく。




 のは、一つのフリだ。



「まぁ、貴方に利用価値はまだあるんだけどね……」



 カルデアスの目の前にヴェイザー、またの名をCastorが現れる。




 正に神速を超えた、あまりに速すぎて捉えきれない程のスピード。



 カルデアスの思考では、彼女に追い付く事は不可能だった。



「なっ!?はや……」



「静かにしていろ………」



 次の瞬間、腹部に強い痛みと衝撃が走った。



 鳩尾(みぞおち)にしてはかなり破格とも言える程の威力だ。




 そして、腹部に命中した一発の拳。



 カルデアスはこの一撃だけで、意識が遠のいていく事に気が付いた。




 クラッ、とふらつくと同時に痛みが体を巡る。



 それと同時に意識が徐々に消えていく事が実感出来る。




 そして数秒も経たない内に、彼女の意識は完全に闇に沈んだ。



 彼女の肉体は、ヴェイザーが掴んでいた。



「交渉と見せしめには使えるな………転移…」




 ◇◇




 イージス魔法学校は、結果として大破する事となった。



 電離気体(プラズマ)の発生と他メンバーの手によって。







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