ハードルが高いと飛びこせない
この前とは違う世界に生を受けて約八年年程と言った時間が経過した。
そして、八年と言う文字のみを見ればかなり長い時間をこの世界で過ごした事でこの世界についての事も多く理解が出来た。
別に全貌を知った訳では無いのだが、家柄が良かったのか、それともホンの偶然だったのかは分からないが自らが産まれた家には多くの書物が保存されていた。
両親も本を読む事を強く自分に勧めてきており、実際の所、自分も本を読む事が嫌いと言う訳では無かった。
と言うよりも世界を掌握する為にはまず世界の理について知らなくてはならない必要がある。
理解すらせずに世界を火の海にするなんて、無鉄砲も良い所だ。
まず第一、この世界には所謂『魔法』そして『魔力』と言うモノが存在している。
勿論だが両者共にどの様な存在であるのかはショウマ自身分かりきっていた。
この世界での魔法の効果は簡単な話だ。その名の通り、魔力を消費して詠唱等を用いて特殊な攻撃又は物理以外の攻撃を行う事の総称を主に指す。
一部魔法での物理攻撃等の可能だが、基本は詠唱や魔法の技名を叫ぶ事により攻撃を行う事が可能だと言う。
例を挙げよう。
例えば目の前にモンスターや魔物が立ちはだかっていて、倒す為に炎の魔法を使おうと仮定しよう。
この世界での場合は。
「ファイア!」
もしくは。
「炎よ!敵を打ち砕け!」
等と言った様に詠唱や魔法名を叫ぶと言った行動を行う事で発動する事が可能になっている。勿論だが、今だけの炎の魔法だけでなく、魔法の数は多岐に渡りその数はあまりにも膨大な数だ。
属性等も多く存在しており、まだその全貌を把握出来ていないぐらいだ。
炎、水、土、風、氷、雷、闇、光等と言った属性を持つ魔法や逆に属性を持たず、攻撃性能を持たないモノも存在する『無属性魔法』と言った魔法も存在している。
そしてもう一つの要素、それは『魔力』と言う存在。
魔力と言う存在は先程説明した魔法を使用する上では必須となる存在だ。
例えやすく言うのなら、魔力はRPGゲーム等でよく見る『MP』と言った様なモノだ。
魔法を発動し、攻撃を行う度に魔力は消費されていく。それが魔法と魔力の基本となる構造だ。
そして魔力の総蓄積量は個人によって大きく差が存在しているらしく、大きく蓄積出来る者もいればかなり少ない者も存在している。
俗に言えば、多くあれば数多い魔法を使用する事が出来て、少なければ使用回数等は少なくなってしまうと言う事だ。
因みにだが、僕が産まれた家は主に魔道を中心とする貴族の家だ。家族全員は全員非常に良質で高い魔力を保有しており、それは僕自身も同じ事であった。
両親共に元々は名の知れた魔法士であり、非常に魔法を使う事を得意としている。
それに準ずるかの様にして自らの持つ魔法の才能も、そして魔力の量も両親顔負けの力を保有している。
しかし、魔力と言う存在は自分にとっては素晴らしい存在だ。
魔力を自らの肉体のエネルギーとして使用すれば、肉体を常人の何倍も強化する事だって余裕で可能だ。
足をめちゃくちゃ速くして、光の如く走る事だって可能だし、筋力を強くしてプロレスラーの様に力持ちになって馬鹿デカイ岩等を軽々と持ち上げる事だって容易に可能だし、物凄く高く飛び上がり、高層ビルすらジャンプで越えられる程の跳躍力を得る事も可能だ。
これは実に興味的で面白い力だと感じていた。
実際の所、魔力を伸ばす為に魔法士見習いとして訓練を積む傍ら影で自らが持つ力について多くの研究を進めていた。
まず第一に最終目標は『世界掌握』であり、世界全てを掌握し滅ぼす事が僕の考える目的だ。
勿論の事ではあるが、世界掌握と言う高々な目的を掲げている為、達成は簡単では無い事は重々承知している。
達成の過程には失敗や多数の試練が立ち塞がる事は最初から分かりきっていた。
自らが求めるのは妥協した達成地点ではなく、完璧な達成と言う存在だ。
もし妥協した上で得た結果なんて。
否、ただのゴミ同然だ。
妥協なんて必要無い、妥協した上で成した掌握等らつまらない事この上ない。最初から全てを破壊する勢いで進撃しなければ意味をなさないのだ。
手に入れていた二つの能力と一つの武器。合計三つを駆使し、僕は掌握の下準備を進めていた。
何故与えられたのかは分からないが、転生時から手に入れていた三つのチートも良い所の能力。
『無尽蔵の記憶眼』
『掌握者の権威』
『虚構剣』
それが自らに与えられた唯一の能力であり、自らが得た剣であったのだ。
三つとも個人的には名前も性能も離したくない程に大好きな代物である為、自慢と紹介を兼ねて性能を説明していきたいと思う。
『無尽蔵の記憶眼』
これは生まれつき自らの目に埋め込まれていた義眼の様な能力だ。簡単に言うと、一度目視及び記憶していた武器や兵器、魔法具等の構造や能力を瞬時に読み取り、保存する事が可能な力だ。
名前を見る限りではかなり強力な力に思えるかもしれない。
だが、残念な事にこの能力はあくまで『自らが目視した武器や兵器、魔法具の構造及び能力を読み取って記憶する』と言う能力しか持っていない。
なのでこの能力自体に攻撃能力等は存在しないのだ。一応無属性魔法の中には『複製』等と言った能力もあるのだが、まだ習得には至っていないので今の時点ではあまり役に立たない能力としか言い様がない。今は保留と言う事で。
『掌握者の権威』
言ってしまえば無限の格納庫の様な存在だ。例えやすく言うのなら『実態を持たない巨大な蔵』と言う辺りの表現が正しいと思う。
この掌握者の権威は無限の武器や兵器を収める事の出来る言わば財宝の保管庫の様な存在だ。実態が無いだけであって、その中には無限の兵器を格納する事が可能なのだ。
現在はまだ『虚構剣』と自分が幼少期の時に受け取った贈り物の長剣等と言った僅かな武器しか格納されていないが、実質的に無限に武器や兵器を隠し持っておけるので役には絶対に立つだろう。
使用法は非常に単純であり、空間そのものにこの掌握者の権威の出入口を生成する事で、生成されたゲートから自らが保有する武器が射出される様にして飛び出してくる。
この先世界を掌握していく上でこの上ない程に重要な能力だ。
相手から奪った武器等も隠し持っていられる為、この先も強く重宝する能力だろう。
『虚構剣』
一番ピーキーな性能をしているとすれば、この剣を指すだろう。
細くも鋭い円錐状の形をしており、まるでそれは剣ではなくランスの様な形状をしている。身の丈には及ばずとも、存在感は自分自身の何倍もの強さと覇気を放っている。
因みにではあるが、この剣の性能は僕自身も把握していない。何故ならゲートの中から取り出して抜刀するだけでこの剣は魔力を根こそぎ喰らい尽くしてしまう。
一応両親に似て、良質な魔力を保有しているとは言っても、まだ僕は八年しか生きていない。身も心も外観はただの子供に過ぎない為、現在の総魔力蓄積量はそんなに多いとは言えない。
この剣はただゲートから取り出して抜刀し、自らがその剣を握るだけでも魔力を消費してしまう。
ゲーム等を例えて簡単に言うのなら、他の武器が霞む程に強力な力を持っているが戦闘時等に使っていると常にHPやMPを持っていかれる、と言った感じの性能をしている。
この前両親にバレない様にして試しに掌握者の権威から取り出して抜刀してみたのだが、結果は中々に散々な結果となってしまった。
抜刀した最初の数秒間、特に変化無し。
その更に数秒後、少しクラっとし始める。
そして二十秒ぐらい経った後、魔力欠乏に陥って意識が飛びかける。
『魔力欠乏』と言うのは短時間に自らが蓄積する魔力を大量に消費してしまうと起こる現象だ。激しい倦怠感や目眩等の症状が自らに現れるのが特徴であり、魔法を極める上では起こる事がほぼ確実と言っても良い現象だ。
今回の一件で僕も魔力欠乏を身を持って味わったが、中々にヘビーな体験であった事は記憶した。もう二度と体験したくないけど。
そして、勿論の事ではあるのだがこの自らが持つ三つの性能が破格と言っても過言では無い能力達。
誰にも、ましてや両親にさえ一言も言った事はない。
この力は、何れ世界を掌握する上では必須の能力だ。無論、世界掌握と言う願望は同じ志を持つ者にしか言う事はない。
そう言う事だ、誰にも言わない。バレない様に特徴の薄い弱者を演じる事が一番の得策だ。
僕の家は父も母もそれ以外の執事や侍女達も僕に対してあらゆる事を教えてくれる。
父は魔法だけでなく、剣の腕も一流である為父親からは主に剣術の事を教わっている。
勿論、手は抜いているし、本性を表して本気で戦う事もない。しかし無駄とも思った事は一度もない。
これからの人生で剣を振るなんて事、数え切れない程存在しているだろう。弱者を演じる上では少しぐらいは剣術を身に付けておかなければならない。
それにやる分自分に対してデメリットも無いだろうと僕は感じている為、一応腕を磨いて上げると言う名目の元、行っているつもりだ。
剣だけではなく魔法も同じ様な事だ。魔法等は主に母親や魔法を教えられる程には力を付けている侍女達から学んでいる。
魔法に関しては、割かしちゃんと学んでいるつもりだ。何せ今までの暮らしの中で魔法なんて使った事もないし、学んだ事もないので割としっかり学ばないと使いこなせない可能性があるのだ。
世界掌握を行う上で魔法の使用等も必須となるだろう。適正等もあるらしいが、一応補助的役割で覚えているだけなのであまり深入りはしない事にしている。
そして話が変わるが僕は一人息子である為、家を継ぐ必要性が出てきていた。本来兄とか姉がいるのなら、余っ程不出来でない限りは歳が上の方が家を継ぐ事になるのだが、運が悪かったのか僕の家には兄や姉は居らず、子供は僕一人だけであった。
今の所、最大の難所と思うのがこの家を継ぐと言う事であった。今強大な敵を目の前にしているかの様な気分だ。
家を継いでしまえば、世界掌握の邪魔になる事は確定したも同然だ。
どうすれば良いのだろうか。しかし答えは呆気なく出てくるものだと、分かった。
なら、家族共全員殺せばいいじゃない。




