実力者は大体すぐに暗い部屋で集まって会合を始める
「今日は招集に答えてくれた事に感謝するわ、皆……それで、分かっているわよね?」
硬派で凛とした表情。突き通すかの様な美しい瞳と表情。
プラチナゴールドのロングヘアは、椅子に座り込む女性の姿をより美しく、そして神秘的且つ神々しさを放っていた。
そして、燭台の光がうっすらと光るこの場にはその神秘的な力と異端と呼ばれる程の実力を持つ者達が一同に集まっていた。
「少しばかりだが、奴さんも殺りすぎた様だな…」
『第拾位』
【白夜を駆ける狼:霧矢椿】
「このままでは、一般市民への被害が拡大する一方だ。何かしら止める案を出さなければね…」
『第玖位』
【拒絶する者:レイヤ】
「うふふ……少し悪い子が増えたみたいだね~」
『第捌位』
【慈愛の炎使い:リアン=スティアナ・ジュール】
「………………」
『第漆位』
【影使い:本名不明】
「……静かですね…」
『第陸位』
【狂躁静理の引き手:ノワール・エンリエッタ=カルラリスト】
「案件を聞こう、これ以上泥を塗られるのは御免だ」
『第伍位』
【双風靡く銀閃:レイア=イツカリオデ・マクナイト】
「緊急を要する事ですからね、慎重に対応しましょう」
『第肆位』
【迅雷の英霊:ディクロス・ヴァンパッテン】
「それで?アタシらはどう動けばいいんだ?さっさと本拠点を探し当てて潰せば良いのでは?」
『第参位』
【水鏡を宿し剣客:櫻花雅】
「さて、これで皆揃った様ね…」
『第弐位』
【幻想探求者:シンカ・シラヌイ】
「よし、天使達よ。集まってくれた事に感謝する」
『第壱位』
【再臨しす天使:アストレア=エニシュ・ブラックバーン】
この10人こそが、この王都の中でも指折りの特に高い実力を持つ集団を集めた特殊部隊『王都第拾位使』のメンバーだった。
今回、彼女ら彼らが集まっていた理由は間違いなく最近世間を騒がせている奴らについての事だった。
「皆も知ってるわよね?今、この王都で連続殺人を起こしていると言われている謎の組織『十位使悪魔』流石に犠牲者の数が多いわ」
手元の資料を読みながら、アストレアは例の事件についての詳細を説明する。
恐らく皆は知っているであろう事だが、念の為に概要について説明する事とした。
「この数週間で、王都での死者の数は病死等を除いても、既に60を超えている。これはハッキリ言って異常よ…しかも全員他殺された様な跡がある」
「もし仮に全員他殺だったとしても、これら一連の事件が、あの『十位使悪魔』の仕業だと言い切れるんですか?」
現在、この一連の事件の犯行を行っている可能性があるのは、やはりあの狂人集団である『十位使悪魔』の可能性が高いと言える。
しかし、元を辿れば『十位使悪魔』は架空上の存在、存在自体が都市伝説の様なモノである為確証は存在していなかった。
誰かが突拍子も無しに作った噂
誰かに向けた注意喚起の為に生まれた存在
嘘が独り歩きして広がった存在
等の可能性だって捨てきれなかった。
この王都第拾位使の中ではオカルトチックな話をあまり信じないレイヤは、アストレアの言葉に疑問を述べた。
「確かに、レイヤ君の考えも否定出来ない。アレは元を辿ればただの都市伝説の様な存在……でも、今の所この事件に繋がりそうな手掛かりがそれしかないから……」
現在、一連の連続殺人事件の手掛かりは皆無に等しく、これと言った証拠や情報は存在していない。
犯人も動機も分からず、今の所は王都の中でも高い実力と知能を持ち合わせる彼女らであっても、原因を突き止める事は出来ていなかった。
その結果実際の事実ではなく、都市伝説と言うオカルトチックな答えが今の結論となっていた。
「一応聞き込みは行っていますが、やはり目撃者は今の所は0人。それに目撃も何も、全員殺されてしまっているので……」
「うーん、やっぱりそうなのよね…」
椿の言葉にアストレアは顎に手を当て、考え込む。
『十位使悪魔』の目撃者は現在の所、誰もいない。
と言うのも、『十位使悪魔』を目撃してしまえば最後、問答無用で口封じの如く存在を消される事となってしまうので、目撃談も何も存在していないのだ。
「これは地道に捜査を進めるしかありませんね…」
「けどよディクロス、地道に進めるって言ってもよ…現在進行形で犠牲者は増えてんだぜ?」
「これ以上、我々の名に傷を付けられるのはお断りだ!総隊長、早急に攻勢に出るべきです!」
「レイア、気持ちは痛い程分かるけど…目撃談も無しに攻勢に出るのは愚策よ?」
「し、しかし……!」
皆の意見はバラバラだった。
地道に進めようとする者、早急に攻勢へと出ようとする者。
一切口を開こうとしない者、この場に座る十人の意見は様々であった。
「どうする、アストレア?この際、帝国に援軍を要請する?」
「て、帝国に援軍なんて要請したら……」
「お、恐らくだけど王都の人間1人1人を拷問にかけて口を割らせようとしてくると思う……却下で……」
攻勢に出るか、捜査を続けるかについての意見が纏まる事はなかったが、満場一致で帝国に援軍を要請する事については反対となった。
「取り敢えず、王都の警備を強化。国民には夜間の不要外出は控える様に知らせます。それと、夜遅くまで営業している酒場や娼館は早い内に店を閉める様に、とディクロスお願い出来ますか?」
「はい、お任せください…」
そう言うと、ディクロスはその場から立ち上がり皆に一礼すると、この会議室から1人足早に去っていった。
ディクロスは、この10人の中でも特に国民からは高い信用を得ている聖人の様な存在だ。
国民は皆、ディクロスの事を強く尊敬しておりこの王都にはなくてはならない様な存在でもある。
国民を納得させるには、影響力の強い人間を使うのが一番合理的な方法だ。
ディクロスもその事を承知しており、支持を得ている自分が国民を納得させる事についても何も疑念を抱いてはいなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして数日後、ショウマはいつもの様にスズキ君とオクノ君と一緒に新聞を読んでいた。
スズキ君とオクノ君は目を見開きながら、新聞を読んでいた。
「ショウマ君、聞きましたか?夜間外出は極力禁止だって」
「え、何でなの?」
「この前話した連続殺人事件、あれの影響らしいよ」
「えぇい!まぁだ犯人は捕まらんのか!?ワシが捕まえてやるぅ!」
全ては僕達が起こした事だが、知らないフリをしておこう。
って言うか、僕はそんなに殺した覚えは無いんだけど。
新聞には、犠牲者の数は100近くになってるらしいけど、僕は多くて20か30ぐらいだったと思う。
多分、内の50か60はジャックが殺ったんだろうけど…。
殺しすぎかもしれないが、奴は制御が効かなくなると命令や指示関係なしに無差別攻撃を行う可能性があるので、仕方ない。
制御不能になって殺しまくりな殺人マシーンになるよりかは、まだ制御出来ていて殺している方が幾分かはマシな方だ。
「早く犯人が捕まるといいんだけど…」
「物騒だねぇ……」
「本当だよ……」
全ては自分達が引き起こした事、しかしそれを誰かが知る事は決してない。
自己顕示欲は強い方だと僕は思っているが、それが表に出る事は有り得ない。
この『CRISIS』と言う存在が、表舞台に現れて世に侵略を開始するのはまだ先の話なのだ。
今はまだ、今はまだ戦いと侵略を開始する時ではない。
機は熟してはいない。
その時まで、僕は我慢する事にするよ。




