仲間の顔は出さない方がミステリアスに見える
「うーん、悪くないな…」
口の中に食事を運びながら、ショウマは薄い表情でそう答えた。
その表情にあまり気持ちは篭っておらず、ただ場を凌ぐ為に言っている様な感じが否めなかった。
しかし、別に食べられない程の味と言う訳ではなく王都に運ばれてきた良質な素材を使って調理している事が彼の舌が理解していた。
学校の食堂で出る食べ物なんて大体口に合わないと思っていたが、意外な事に味は悪くない。
まぁ、それなりに高い学費とか将来性も込めてそれなりに待遇は約束されているし当然か。
「あれスズキ君、オクノ君。何読んでるの?」
僕はいつも大体、学校での唯一の友達枠的な存在であるスズキ君とオクノ君といつも一緒に昼ご飯を食べている。
日陰者同士、一緒に仲良くしていられるのは非常に喜ばしい事だ。
平穏な学校生活を過ごす上での気休めには最適な事だ。
そして、僕がお昼ご飯を食べている時。スズキ君とオクノ君は隣でご飯を食べながら、学校で誰でも読む事の出来る王都の情報が纏められた新聞を読んでいた。
何を読んでいるのか気になったショウマは、2人が目を見開いて読んでいる新聞を覗き込む様にして、確認する。
「ショウマ君、知らないの?今王都を騒がせている連続殺人事件!」
「えぇい、鬱陶しい事を。誰かワシの近衛兵を呼ばんかぁ!」
「ったく、何でそのテンションなのよ」
ショウマの友達の1人であるオクノ君はこの様に少し変な性格をしている。
たまに一人称が「ワシ」になったり、まるで戦国自体風の将軍の様な喋り方やそれっぽい発言をする事がある。
何でこうなったのかは知らない。と言うか知りたくもない。
如何にもおじさんっぽい雰囲気を出している高校生だ。
それだけは理解出来る。
「え、何それ?殺人事件なんて起きてるの?」
仮にも、この一連の事において、殺人事件をやっているのは全てMasterMindであるショウマとその愉快な仲間達が引き起こしている事件だ。
しかし、一般高校生を演じるショウマは敢えて何も知らない様な口調でスズキ君に対して無知な感じで言った。
本音を言うと、全てを知ってはいるが決してその情報を口に出す事はない。
掌握者たる彼は絶対に、真実を口に出す事はないのだ。
「何で最近の事も知らないんだよ、このバカが」
(何だコイツ、串刺しにしてやろうか?)
唐突な暴言に、思わず串刺しにしたくなったが今は学校内なので控える事にしよう。
これは所謂、友達イジリと言うモノだろうからね。
「ほら、見ろよ」
そう言いながら、スズキ君はショウマに向けて読んでいた新聞を手渡した。
ショウマは自分の事が記事になっている事に、少しだけ喜びを感じながら、その新聞の内容を確認する事にした。
「えぇっと、なになに?」
『王都で再び死亡者が発見』
ふむふむ
『数は現在で40人を突破』
誰だよこんなに殺したの。僕でも15ぐらいだぞ。
『被害者は一般市民、貴族、騎士、聖職者』
無差別に殺したのは間違いだっただろうか。
『一説では無差別殺人を引き起こす狂人集団『十位使悪魔』の行いではないかと王都特務捜査隊隊長が公言』
『王都特務捜査隊』そう言えば、そんな組織もあったな。
まず、この王都は勿論の事ではあるが騎士や警備兵達が王都と言う国そのものを守っている。
この王都を守る者達の総称を皆は『王都防衛隊』と呼んでいる。
王都を守る者全ては、その様な名前で呼ばれている。
そしてそこから派生して、先程新聞にも書かれていた『王都特務捜査隊』や『王都第拾位使』が存在していると言う訳だ。
って、そんな事はどうでもいい。王都を守ってる人の事よりも気にするべき所がある。
(何だよ十位使悪魔って、カッコ悪ぃわ)
もう少しネーミングどうにかならなかったのだろうか。
僕が考えた『CRISIS』も大概かもしれないが、十位使悪魔は明らかに僕が自力で考えた『CRISIS』には劣っている。
顔に泥を塗られた気分だ。
それに何で10人なんだよ。確かに後2人いるけど、進行上の都合でまだ2人出てきてないけど。
まぁ、まだ2人の他にも後何人かいるんだけどね。
あ、一応言っておくけどそんな何百人単位で構成員がいる訳じゃないからね?
そんなに多かったら統率するの面倒臭いし、そこまで拡張する気もない。
そして名前と顔を覚えるのと考えるのが面倒。
他にいる事は認めるが、そんなに多い訳では無いと言う事は覚えておいてもらいたい。
全く、異世界の人ってネーミングセンス無いのかな。
十位使悪魔って普通に考えてカッコイイとは思えないんだけど。
僕達の組織には『CRISIS』ってちゃんとした名前があるんだよ。
それに、しれっと『狂人集団』と書いてあるし、失礼な奴らだよ全く。
確かに狂人じみた…と言うか狂人も確かに存在しているが、僕達がやっている事は狂人的な行動ではなくれっきとした掌握であり救出だ。
それを狂人だの、反逆者だの好き勝手に新聞の記事には書かれている。
人の事を悪く言いやがって。僕は他者を救出するべき存在だと言うのに。
これは少しばかりではあるが腹の立つ事だ。
「ごめん2人共、少しお手洗いに」
そう言うと、ショウマは食べ終えた食事の食器を返すと2人を置いて、座っていた椅子から立ち上がり、その場から1人去っていった。
2人にはお手洗いに行くと言ったが、実際は全く違う。
ショウマは1人、校舎の外に出て行くと同時に室内で剣の練習等が出来る、所謂体育館の裏に来ていた。
普通なら、こう言う場所では告白等が行われるかもしれないが万年彼女ゼロの僕には有り得ない話なので、知った事ではない。
ショウマは周囲に誰もいない事を、そして気配を察知しなかった事を確認すると同時に、中指と人差し指を耳に当てて、魔力通信を行った。
「こちらMasterMind。応答しろ『Observer』」
「ん、MasterMindか?どうした、俺に用でも?」
「今日の王都の新聞見た?」
「ああ、とっくに読んださ。それと、アンタの言いたい事も分かる」
「恐らくだが、この情報を握っているのは王都特務捜査隊だ。調査を頼めるか?」
「言われなくとも、俺は仕事は早く済ませる人間なのでね。任せておけ…」
そう言い終わると同時に、通信は完全に途絶えた。
機密情報の捜索や奥の深い情報操作、ハッキング技術に関して、Observerの右に出る者はいない。
奴に任せておけば、数十分もすれば指定した敵の情報を全て引き出してくれるだろう。
優秀な配下を持てて、僕は幸せ者だ。
さて、一段落終わった事だ。戻るとしよう。
そう心の中で呟いたショウマは、まるで何事も無かったかの様にして、教室へと1人帰っていったのだった。




