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態々組織名公開する意味ってある?

 


「うぉ……これは……!」



 目の前に広がる惨状に、レイヤは思わず息を飲んだ。




 自らの目の前に広がるのは正に阿鼻叫喚の地獄の様な場所だった。





 夜間の王都、しかも昼間は普通に人がごった返す様な程に通る大きな道に惨状が広がっていた。

 


「ヤバ、気分悪くなりそう…」



 椿もこの惨状に思わず目を逸らしたくなり、冷や汗を額から流す。




 まるで血の海だった。報告を受けて、すぐに遺体が見つかった所辺りに全員で来たが、レイヤは惨状を見て目を覆いたくなった。





 広がるのは、まるで大量の水が零れたかの様にして広がる血の海、体に何十回もまるで槍で突かれたかの様にして無数の穴を開けられた人の遺体。




 そしてまだ現場に残る鉄臭い血の匂い。血はまだ生温かく、鼻が曲がりそうな嫌になる匂いだった。





 どの死体も原型を留めておらず、体もぐちゃぐちゃ。誰だったかを判別するのが難しいと思える程だった。



「クソ!また関係ない奴らが死にやがった!」



 Sは怒りのあまり、声を荒らげた。



 彼女も王都を守る騎士の1人である為、無関係で罪のない人間が殺されていく様を見ているのは腹が立っていた。




 そして、副隊長であるレイヤは目を背ける事なく骸となった人々の遺体に近付くと同時に、その遺体に触れる。



「これは……魔法による攻撃?それとも、槍か何かで刺されたのか?」



 被害者の遺体には、無数の穴が開けられていた。まるで蜂の巣の様な何かで貫かれたかの様な穴が開けられていたのだ。




 どれも痛ましく、苦痛であった事に違いはなさそうであった。




 死んだ人間の表情も一部の人間は苦痛に歪んだかの様な表情を見せていた。





 明らかに恐怖と痛みを感じて死んでいった人間の表情とそっくりだった。



 どれも見慣れているつもりだったが、いつ見ても気分がよくならないのは確かだった。



「何で殺られたんだ?」



「不明です。我々が駆け付けた時には既に……」



 遅かった、時すでに遅し、と言う訳か。




 やはり敵の方が一枚上手と言う事だった。




 自分達が動く時には、敵は既に誰かの命を奪い取っている。



 まるで神速の如くのスピードで、いつまで経っても敵が背中を見せる事はない。




 レイヤは、自らの不甲斐なさに思わず歯噛みする。その心中には、明らかに怒りが存在していた。



 


 だが1人で怒っていた所で、何も変わらないのもまた事実。



「そう言えば、証拠品の紙はあるか?」



「こちらです」



 先に現場に駆け付けていた兵士が見つけていたと言う文章が記された一枚の紙。




 兵士の人間曰く何か記されていたと言っていたが、まだ内容は確認していない。



 レイヤは、兵士の人間から現場に残された文章の記された紙を受け取るとその内容を見る事にした。



「………ん?これ……」



 紙にはこう書かれていた。ありのままに読み上げる事にする。





 ―――何か書いてあると思った?





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 うん、何か書いてあると思ったのだろうか。





 残念ながら、それは大きな間違いであるだろう。



 



 こう言うのは大体の場合、組織の名前とかカッコつけた様な変な言葉を並べている事が殆どだ。





 そして組織系にありがちなのは、僕が作った様な組織の偽物が勝手に暴れ回って、偽物構成員が組織の名を語ったり、それっぽい貼り紙とかを巻いたり配ったりするのがお約束だ。




 異世界で犯罪組織を作ると、何で狙ったかの様にして偽物が出てくるのだろうか。





 ――――嫉妬?妬み?


 


 まぁこっちから知った事ではない。完全にどうでも良い話に過ぎない。




 今までこの『CRISIS』の偽物が出てきたはなかったし、誰かにパクられた訳でも無い。




 寧ろ僕がパクっているまであるぐらいだ。




 別に正体は今だけは明かす気は一切ない。




 世界が僕達『CRISIS』を知るのはもう少し後の話だ。





 だから別に、




 我々はCRISIS、だとか我が名はMasterMind、だとか一々厨二病っぽくカッコつけて言う必要性は全くないし。





 何なら、人殺しの現場にCRISISの名を書く必要性もないだろう。




 自ら正体明かしにいくのも流石に今は気が引ける。




 だって普通に考えて人前で組織名大々的に公開するのは好きじゃない。





 承認欲求があるとは言っても、身を滅ぼす程に公開する気にはなれない。




 第一僕達は闇の中に潜む誰も知らぬ様な組織だ。そもそもの話、存在を公にする事自体が間違っているだろうと僕は考えている。




 なので別に何も書いていない。書く必要もない。




 それだけの事だ。



 ◇◇



 そして今、僕達は王都から抜け出して王都外部の平原に皆で来ている。


 


 徒歩での移動となると、かなりの時間を要するが所謂『転移魔法』ってヤツで10秒も掛からずにこの王都外部へと移動する事が出来た。






 え?態々こんな夜中に王都の外に出て何してんのか、だって。




 見りゃ分かるよ。




 ◇◇




「くぅぅぅぅぅ!ドリフトォォォォ!」



 派手でけたたましい音を響かせながら、ショウマはハンドルを強く切る。



 車体は激しくドリフトし、大きな音を響かせながら前へと突き進む。




 そして、それに答える様にしてショウマはアクセルを全開にして踏み込んだ。



「うっひゃぁ!まさか、車の運転も出来るなんて!」




 この時のショウマの目は強く輝いていた。前の世界では見る事が出来ない程に、恐ろしい程に強く輝いていた。




 誰しも、カッコイイ車を乗り回してみたいと言う願望を一度は抱いた事があるかもしれない。





 なので現在進行形で僕は今、夜中の平原で車を乗り回しています。

 



 激しいエンジン音を響かせながら、ショウマはまたしてもハンドルを切る。



「ミディアに頼んでおいて正解だった!」



「イヤッホォォォォイイ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎ショウマ!お前運転上手いじゃねぇか!」



 思いっきりハンドルを切るショウマの横にはヴェイザーが助手席からショウマの事を見つめて叫ぶ。



 車内では、大音量の和風ロックがけたたましく流れ、窓を全開に開けてある事で外にも盛大な音量の和風ロックが流れていた。





 何をしているかだって?カーチェイスだよカーチェイス。






 こうやって暇な時は、皆でそれぞれの車やバイクを乗り回して、夜中誰もいない平原の上を駆け回っている訳だ。




 因みに皆が乗っている車やバイクは、



 ショウマとヴェイザー→黒塗りの大型違法改造車『ブラックロック』




 紫苑→大型バイク『紫電』




 雪貞→四輪駆動軍用車『ミューレスリック』




 ニクス→変形機構を用いて自ら戦車形態に変形




 ジャックとディープ→サイドカー付きアメリカンバイク『スクリームジェット』




 ミディア→ブースター装備型改造スーパーカー『ブリッツ』




「おい、ディープ!もっともっと飛ばしてくれぇ!」



「了解ィィ!もっと飛ばすぞォォォ!」



「ハッハァ!最高の気分だぜ!あたしこう言うのやってみたかったんだ!」



「よっ……っとぉ!中々に面白いな……これは!」



(駆け回る事を楽しく思うビープ音)



「ほれほれ!ワタシを抜く事が出来るかなぁ!?」



 皆、最大限に楽しんでいる様だ。



 そしてもう一度言っておくが、基本的に僕達のチームは硬派なチームではない。




 こう言う闇の組織的なチームって何かとお堅かったり、変に統率力があったりするが僕達のチーム『CRISIS』はお堅い訳でも無いし、統率力に至っては皆無と言っても良いかもしれない。





 皆、普通にベタベタと仲良くしている。




 別に恋愛禁止と言うルールも無い、僕とヴェイザーだってたまに隠れてイチャつく事だってある。





 それに皆が一同に集まる事だって稀だし、誰かが誰かを強く尊敬していると言う訳でも無い。



 あくまで、組織のリーダーとして見てくれているだけであってそれ以外に惚れている部分等はない。





 この『CRISIS』の黒幕たる僕ではあるが、やってる事なんて大層な事でもない。


 


 大体の事はヴェイザーや雪貞に任せてあるし、掌握するとか言っておいて、そんなにそれっぽい事はやってないと言う矛盾した様な感じになっている。




 ◇◇




 だが、今はそんな事はどうでも良い!





 今はただ只管になってアクセルを踏むのみだ。



「くぅぅぅぅ!さいっこぉぉぉぉぉ!!!」



 全身に無尽蔵のアドレナリンが駆け巡り、極度の興奮にショウマ達は陥っていた。




 前世では絶対に体験出来ない、夢の様な経験。まだ免許も取ってないのに車の高速運転。




 他の皆も、同じだ。そもそも異世界って車とかバイクの様な乗り物は存在していないのが普通だ。



 初めて乗る感覚、今までは味わった事のない駆け抜ける様なスピード感。





 ショウマ以外の皆はこの最高のスピード感に浸り続けていた。



「アハハハ!ひっさしぶりだよ、こう言う爽快感!」



「ンッはー!ショウマ、これ最高だよ!今度は私にも運転させてくれ!」



 最高のドライブをキメたショウマは、徐々にスピードを落とし一度車を平原の上に停止させた。



「よっと、お…今日は星が綺麗だな……」



 ショウマが車をストップさせたのを見て、雪貞も同じ様に四輪駆動車のブレーキを踏んで、車を停止させる。




 それを見て、平原の上を走っていた乗り物達は次々と動きを停止させた。



「くっはー!やっぱ最高!ディープ、今度は後ろにオレを乗せてくれよ!」



「ハハ!それは実に面白い事になりそうだ!」



 ジャックはサイドカーから降りると体を伸ばし、ディープは腰に手を当てて喜んでいる様な仕草を見せている。



(とっても楽しかった事を話すビープ音)



 この中で唯一、乗り物に乗るのではなく自らが戦車に変形して走り回っていたニクスも変形機構を解除して、いつもの少しだけ愛らしいフォルムに戻る。



「今度はもっとギアを上げていくとするか、疾走感がヤバイしな!」



 紫苑のバイクの速度は、この中でも群を抜いて速い速度だった。




 正に閃光の如くのスピードで、無数に広がる平原の上を駆け抜ける彼女のバイクは圧巻と美しさの塊であった。



 今度後ろに乗せてもらおうかな?




「あっははは!諸君見ていたか!このワタシの華麗なるドライビングを!」



 恐らくだが、皆普通に楽しんでいるが中でも特に楽しんでいるのは間違いなく彼女であるだろう。




 少なからず、改造を施したブースターを全開まで引き上げて超速で運転していて運転中明らかな程までにハイになっているので、このカーチェイスを一番楽しんでいるのは恐らく彼女だろう。





 楽しむ事は僕達にとって、とても重要な事だ。




 僕達は何をするにも、まずは楽しくそして面白く物事を実行する事をモットーとしている。





 何事も楽しむ僕らではあるが、ミディアは恐らくこの事を普通に楽しむのではなく、全力で楽しんでいるだろう。




 表情、目の活気共にいつもの若干暗い感じとは全く異なっている。




 外出を拒む事の多い彼女でも、カーチェイスすると言い出したら速攻で出てくるぐらいだ。





 相当楽しみにしてるんだろうね、うん。




「さて、そろそろ終わりの時間か……」



 忘れている内に時間は進み、夜は更に深くなっていく。




 明日も普通に学校があるショウマはそろそろ寮に帰って明日に向けて寝る必要があった。



「はぁ、明日学校だし。僕もう帰るね、皆お疲れ~」



「送ってやろうか、ショウマ?」



「うん、頼みます」



 そう言うと、ヴェイザーはショウマの傍に近付くと彼の肩に手を置く。



 ◇◇



 そして、気が付いた時ショウマとヴェイザーはもうそこにはいなかった。



 2人は転移魔法を使用して、一気に王都の中にまで戻って行ったのだ。




 首領であるショウマと指揮官であるヴェイザーが、この場を去ったのを見て、他の構成員達も元の場所に戻る事にした。



「それじゃ、お開きにするか」



「なぁなぁ、今度は他の奴らも誘おうぜ!」



「あ、ジャック。それいいな!」




 他愛ない様な会話をそれぞれ交わしながらCRISISの面々は、闇の中へと消えていったのだった…。


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