悪役幹部の会議って何かカッコイイ
奴らの名は分からなかった。誰一人としてその名を知る者は存在しない。
いや、分からないと言うよりかは、誰も奴らの名を知らないと言った方が正しいのかもしれない。
正に影と闇の中だけに潜む悪魔だ。
決して表舞台には姿を見せず、いつの時も裏の世界から闇の中から暗躍し、命を刈り取るその時にのみその素顔を晒す。
そして奴らの標的にされた者は、例えそれがどれ程の実力者であったとしても息の根を確実に止められてしまう。
奴らに狙われた者はじわじわと、まるで底が見えない崖の端に追い詰められていくかの様な、ゆっくりと相手を殺しに来る。
無論、誰が奴らの標的になるのかも分からない。
人としての道を外れた救いようのない外道を狙う時もあれば、ただ真っ当に静かに平和に暮らしていた者が狙われる時もある。
敵を狩り尽くし、血と肉の一片すらも食らう様な奴らを人々は姿も見ていないのに、密かに奴らを知る者は、奴らの事をこう呼んでいた。
『十位使悪魔』
「奴らは『十位使悪魔』と呼ばれている。もしかしたら、奴らが……」
「ぷっ!隊長、あれって未解決殺人事件が発生した時に独り歩きした都市伝説じゃないですか」
「さ、流石に……隊長でもそんな都市伝説に興味あるんですね、ハハ…」
「都市…伝説……あんな、の。本当……?」
見事な程までに、誰も信じてくれない。
しかし隊長である彼女にとって、信じてもらえない事は重々承知の上での事であった。
信じようとしない彼らに怒りを向ける事も、何か咎める様な事を言う事もなく、ただ素直に彼らの言葉を受け止めた。
そもそもの話、都市伝説事態が信じてもらてる様な出来事ではない。
全てがオカルトチックな話であり、俄にも信じられない様な事が殆どなので、正常な彼らにとっては信じられないのが普通な話だった。
大体最初から信じてもらえないと、彼女は感じていたので彼女は話を終わらせようとする。
「まぁ、一応頭の片隅には入れておきます。一応僕もそれについてはある程度存じているので」
「え?『レイヤ』アンタ知ってるの?」
「一応、奴らの内の数人だけの情報なら少しだけ聞いた事がある。話した方が良いか?」
『レイヤ』それがこの場に座る唯一の男である彼に与えられていた名前であった。
彼もある程度ではあるが、巷では『十位使悪魔』とも呼ばれている狂人集団についての情報を持っていた。
しかし、どれも不鮮明であり確実性は皆無に等しい情報ばかりであった。
元を辿れば、下らない噂が独り歩きしてどんどん広がっていったのと同じ事。
誰かに話すのは気が引けていた事であった。
しかし、今の隊長の話を聞いていたら黙っている事も自然に出来なくなってしまっていた。
レイヤと言う名を持つ男は彼女らの了承を得て、自らが知る情報についての話を始める。
隊長である彼女や他の仲間である者達も、自らの話に耳を貸す方向でいる。
ここで自らが知る情報を話さないのは間違いだろう。
「現在、僕が聞いた構成員についての情報は3つ。まず1人目…噂では『高速戦闘兵』とも呼ばれている。聞いた限りだと、動くスピードが速すぎて見えないらしい……2人目は『首領の右腕』どうやら、情報では魔族らしい。3人目は『進化古代兵器』どうも過去の大戦の遺物らしいんだ………これぐらいだよ、僕が持ってるのはほんのこれぐらいなんだ……すまない」
「うぅ~ん、やっぱり情報が少ないな。まぁ都市伝説だからな……」
「椿、隊長、Sすまない…」
「まぁ、独り歩きした都市伝説的噂をここまで集められたのは普通に凄いよ、お疲れ様」
「やっぱ、情報収集はお前に任せて正解だよ。これなら、敵の基地にガサ入れ出来るかもしれねぇからな!」
しかし、所詮は単なる小さな噂に過ぎない。
今話した情報だってこの先、強く役に立つのかと聞かれれば彼は首を横に振るだろう。
都市伝説なんて、やはりはオカルトチックな話。
今現在、この王都を騒がせ続けている連続殺人事件。
犯人も動機も全てにおいて不明な事件。
レイヤは難問にぶつかった様にして、机に突っ伏した。
難題が多すぎて頭が重くなりそうだった。
しかし、仮にもレイヤは『王都特務捜査隊』と言う名前だけカッコイイ様な隊に自分が副隊長として任命されている。
王都の国民に不安を植え付けない為にも、早急にこの事件を解決しなければならなかった。
だが、解決口は一向に見えてこない。考える程、余計に新たな苦難が増すだけだった。
「取り敢えず、警備の増強だな。アタシらも協力しよう」
「椿、助かるよ………ん!?魔力通信?」
この世界には魔力を介して、遠くの人間と会話を行う事の出来る『魔力通信』と言うモノが存在している。
言わば、電話の様な役割を持つ機能であり魔力を持つ者であれば誰であっても簡単に使用出来る基礎中の基礎の魔法だ。
「こちら特務捜査隊副隊長のレイヤ、何があった?」
「レイヤ殿……新たな死者が出ました。死者数は5人、全員王都の貴族です……」
「何だと、容疑者は!?」
「分かりません、ただ現場に一枚の紙が……」
「分かった、すぐ向かう。証拠になりそうな物は絶対に動かすな!…………すまん、少し出てくる」
「ちょ、アタシも行くって!」
「置いて…か、ない……で」
「隊長を置いて行くんじゃないよ!」
緊急の事態に、多少なりとも焦りを見せながらもレイヤは椅子にかけてあったジャケットを強引に掴むと同時に羽織った。
そしてそのまま、扉を蹴破る勢いで開けるとそのまま外に仲間達と共に直行して行ったのだった。




