お嬢様キャラって主人公とくっ付く事多いよね
「ミア様、おはようございます!」
「あら、おはよう」
「おはようございます!今日もお美しいですね!」
「はい、どうもありがとう」
「お美しきミア様!良ければこの私と一緒に!」
「御検討させて頂きますね」
うーん、何だろう。
ここに来てまたしてもテンプレ展開に思いっきり激突した様な気がする。
この異世界系の学校にありがちな事、物凄く名家のお嬢様キャラ。
目の前に煌びやかなオーラ?を醸し出しながら歩く1人の女性。
それがこの異世界学校における『お嬢様ヒロイン』なのだろう。
『ミア・シュプラウト』
それが確か、彼女の名前だったと思う。
そして今の今まで同じクラスだった事に気付かなかった。
何て鈍感でお馬鹿なんだろうか。仮にも主人公っぽい奴と一緒にいたんだよ。
◇◇
そして、この学校には所謂『お嬢様ヒロイン』又は『王女様ヒロイン』と言う存在がいる。
これは最早、異世界の学校ともなれば当たり前とも言える様な存在だ。
何処かの名門のお嬢様もしくは国の王女様的な存在で神々しく凄まじい雰囲気を出しているのが大きな特徴だ。
大概は何故かは分からないが、そんなに目立たなくて後に最強と呼ばれる様な主人公っぽい奴と急に変な程に絡み始めて、その後仲良くなって最終回ぐらいで告白するのがよくある話だ。
何故、こうなるのか。
都合と言うヤツだ、理解してほしい。
基本的には絶対に日陰者な主人公と一緒なクラスにいて、絶大な人気と憧れを向けられているのが定例と言った所だろう。
大体は、触れる事すらも禁忌とされていると言うのにバナナの皮で転んだ拍子とか偶然空から降ってくる等の事情で胸を揉まれたり、パンツを見られたりすると言うのがお約束。
そして、バラされて周囲から色々と言われる。
ここまでがまぁテンプレだろう。
他のパターン等も存在しているが、今回もそう言った展開は無しと言う事にしておこう。
残念な事に、僕はバナナの皮で滑るつもりはないし上から降ってきても受け止める気は一切ない。
そもそもピンポイントでバナナの皮がある事なんて稀だろ普通。
だが、お約束はお約束と言った所だろう。
この王都の名門貴族『シュプラウト』家の長女でもあるミア。
同じく名門貴族である『シラヌイ』家の長男であり、主人公っぽさがあまりにも強い人物でもあるガイア。
あの2人は最早、お約束なのか運命的に惹かれあっているのかは分からないが朝から一緒に並んで登校している。
え、何?
可愛い幼馴染と一緒に朝から学校に登校?
ナメてんかこの野郎。僕なんて幼馴染どころか一緒に帰ったり登校する友達もいねぇんだぞこの野郎。
誰が主役が覚えときやがれクソが。
◇◇
だが、情けなく僻んでいても仕方の無い話だ。
それにこっちにはヴェイザーと言う一般的に見れば物凄く可愛い年上の女の子がいる。
甘く見てんじゃねぇぞ。
こっちには年上のお姉さんがいるんだ。
もういいよ別に、僕は1人で行くから。
六歩ぐらい後ろからそぉーっと静かに主人公っぽいシンリの姿を見つめておいてやる。
「うぅ~」
シンリとミアが微笑ましげな表情で話しながら共に歩いている姿は周りから見れば、平和で眩しい様な風景だ。
しかし後ろに隠れる様にしながら、シンリの事を見つめる1人の少女がいた。
「あれ?シャルティ・ディアじゃないの、何してんの?」
ふと興味が湧いたので、僕は気さくな感じで彼女に話しかける事にした。
言っておくが、日陰者とは言っても別に人と一切喋れないと言う訳では無い。
初対面の人でも、話そうと思えば話す事は出来る。
そこまでコミュ障と言う訳でも無い。
「あ、ショウマ君………見ての通りですよ…」
そう言いながら、彼女は目を向ける先をじっと見つめる。
やはり目線の先にはシンリと並んで歩くミアの姿があった。
女の嫉妬ってヤツなのだろうか。
「あれは、シンリ・シラヌイとミア・シュプラウトが一緒に歩いている。だけど君は一緒じゃない……クラスだといつも一緒なのに?」
「私は主様の従者ですから……主様とお付き合いなんて出来ません」
「え?他に狙ってる人でもいるの?」
「それは、いっぱいいますよ!なんてったって主様は多くの女性を虜に出来る優しさと性格、それで…年上から愛されやすいと言う特徴があるので……」
何だよコイツ、ハーレム野郎かよ。
一気に冷めたわ。
主人公っぽいヤツだと思って、少しは関心持ってたけど今のでやる気失せたわ。
こちとらハーレムしたくても出来ねぇんだよ。
したいと言う願望はあるけど、やったら負けみたいに思っちゃってる節もあるので。
「例えばどんな人がシンリ・シラヌイに惚れてるの?」
「結構多いから、一部だけにしますね……まず中堅だけど今後王都に大きな発展を齎す事間違い無しの数少ない獣人貴族『クジョウ』家の長女「クジョウ・シズル」同じく名門貴族『櫻花』家の当主「櫻花雅」更に軍事についても強い権力を持っている『マクナイト』家の当主「レイア=イツカリオデ・マクナイト」等……私が霞んでしまいそうです……」
「そ、そうか……それじゃ、僕はもう行くね」
(クジョウ、櫻花、マクナイト……)
そして正直これ以上、この女の話に付き合うのは面倒臭い。
勝手に自分がベラベラと喋ってるだけだし、個人的に聞いていて退屈な話だ。
最初に話しかけたのは紛れもまく僕ではあるがこんな下らない話に付き合わされる筋合いは無い。
他人の男の好きな人についてなんて、聞いていて何の得も無い話に過ぎなかった。
他人の恋愛事情なんて、僕からすれば知ったこっちゃない話なのでここは素直に逃げる事にしよう。
さっさと話を切り捨てて逃げるに限る。
「じゃ、じゃあまた教室で…」
「あ、ショウマ君……」
何とか表情筋で崩さずに、にこやかな表情のまま撤退する事が出来た。
内心はバカバカしくて、怒りと軽蔑が湧き上がっていたが何とか苦笑い風の表情を崩さないまま乗り切る事が出来た。
しかし下らないと貶していたとは言え、僅かにではあるが興味深い情報は入手する事が出来た。
下衆の分際でもそれなりには役に立つかもしれない。
面白い奴だな、気に入ったよ。殺すのは最後にしよう。
(こちらMasterMind。応答しろ、Scout)
(総帥殿、何か?)
(王都の貴族についての情報をキャッチした。クジョウ、櫻花、マクナイト家の情報について詳しく調べてくれ)
(了解、すぐに調べてくるよ)
(あぁ、頼む)
偵察する様にとディープに魔力通信を用いて指示を出し、ショウマは何事も無かったかの様にして教室へと向かおうとした。
「………うぉ!?」
「うわぁ!」
それはたまたま曲がり角を曲がった時の出来事だった。
普通にただ道を歩いていただけだったので、気が付けなかった。
流石に未来予知は出来ない。
曲がり角を曲がった時、不意に体が後ろの方向に倒れてしまった。
咄嗟の事態にショウマは対応する事が出来ず、為す術なく後ろの方向に転んでしまったのだ。
次の瞬間、視界が激しく揺れると同時に臀部に鈍い痛みが走った。
恐らく尻もちを着いたのだろう。
痛てて、と反射的に呟きながらショウマは体を起こす。
そして上の空になっていた目線を元に戻すと……。
「あ、あの!大丈夫……ですか?」
女神?
と思える程に愛らしい生き物がそこに立っていた。




