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骨休めに人殺し

 


 夜の街、既に世界は夜と言う名の空間に包まれていた。




 夜間の外出を行う者はそう多くはない。




 今、この夜の街を練り歩くのは宴会を開いて飲み歩いているだらしない姿をした者や男を誘う娼婦達だけだった。





 王都と聞けば、名ばかりは良い感じに聞こえてくるが、実際の所は目を逸らしたくなる様な闇があったり治安が良くない場所も存在している。





 実を言うと、この王都と言う国の中、その国土の広さはかなりのモノとなっている。




 その広さはとても、と言う言葉のみでは表現出来ない程の大きさだ。




 徒歩での走破を行うのは不可能、と言い切れる程の広さと言った所だ。





 光がある所に闇がある、




 その言葉の通りこの王都にも汚れた側面は存在していた。




 子供や穢らわしい事を嫌う存在はこの裏の様な世界を知る事は決してない。





 無論、それは今目の前で起きている事についても誰かが知る由もない。





「ハァ………ハァ…」



「上出来じゃないか、Berserker」



 薄暗い路地裏、誰として人が通る事はなく鬱蒼としており陰湿な雰囲気を醸し出している。




 嫌な雰囲気と同時に、その場所には血の匂いが漂っていた。




 鉄臭く、生臭い。



 ずっと嗅いでいれば鼻が曲がりそうな匂いだ。




 しかしこの場に居座る2人にとっては鼻が曲がる様な事はなかった。



 そう、この『MasterMind』と『Berserker』にとっては、その血の匂いは恐るるに足らなかった。



 寧ろ、Berserkerはその血の匂いを嗅いで荒い息を口から漏らしている。




 鋭く尖った犬歯を顕にしながら、右手と左手の両手にサブマシンガンを強く握り締めながら、地面に無数の薬莢を転がしながら。




 そして、耳を引き裂く銃声が夜の街に鳴り響く事はない。




 銃声を消してしまう、ミディア作成のサイレンサーにより銃声は夜の街には響かなかったのだ。




「フゥゥ……フゥゥ……」



「どうした、息が荒いぞ?」



 そう言いながら、MasterMindはBerserkerの背後に立つと同時に彼女の肩に指をしならせながら手を伸ばした。


 


 MasterMindは背後から彼女に近付くと、彼女の横顔を覗き込む。




 彼女が見せる表情は、明らかに照れているかの様な恥ずかしがっているかの様な表情だった。



 頬を赤らめ、口からは僅かに物欲しそうな感じで涎を垂らし、心臓の鼓動はまるで異性から告白された時の様に素早くなっている。




 そして股間部からは僅かに無色の液体が太腿を伝っていやらしく垂れていた。



「まさか……お前はそう言う事で興奮するタイプだったのか…」



「兄貴、人殺すの……楽しいんだよ。楽しいし気持ちいい!……何か、体も気持ちよくなっちまってるし…」



「いいんだ、お前はそれでいい」



「兄貴…」



 そう告げながら、MasterMindはBerserkerの肩を潰れない程度に強く掴む。




 それと同時に彼女の獣の様な耳へと口を近付ける。



 そしてMasterMindは小声で、彼女にしか聞こえない程度の小さな声で呟いた。



「殺せ、自らの邪魔する者、気に入らない者、憎み嫌う者、軽蔑と差別の対象となる者、僕の計画の邪魔になる者全てを殺せ。理解出来るな…?」




 邪魔になる者が真っ先に切り捨てるべき腫瘍だ。




 少しでも不要と判断すれば、それが元仲間であろうと関係なしだ。



 不要だから、邪魔だから必要性はない。




 興奮が冷めあがらず口を開こうとしないBerserkerに対して、MasterMindはもう一度問う。




 今度は彼女の肩ではなく、彼女の腰周りを優しく撫で回すかの様にして変にいやらしい手つきで触る。



「…もう一度問おう、理解出来たか?」



「あぁ……オレでも、理解出来る!兄貴の邪魔する奴は皆敵だ、全員ぶっ殺しちまえばいい!」



「上出来、流石だな。それじゃ本拠地に移動するぞ…」




 言わば、骨休めに人殺しと言った所だ。



 こうでもしなければ、退屈で仕方が無い。思わず隠していた憤怒が爆発してしまうかの様な勢いだ。




 だからこうやってたまにジャックを連れ出して夜の街に赴いていると言う訳だ。




 ジャックは世の中では稀な他者を傷付けて痛め付ける事で性的興奮や性を実感すると言うかなりイカれている思考を持っている。




 別に僕はこの異端とも呼べる性癖に対して、何かと理由を付けて咎めるつもりは一切ない。




 寧ろ、この一種の才能とも呼べる力を彼女にはもっと伸ばして欲しいと僕は思っている。


 



 この尖りに尖り過ぎた力は、僕にとってはあまりにも欲し過ぎる才能だ。




 この鋭利な刃物とも呼べる様な力は必須とも呼べる程の力を秘めているだろう。




「取り敢えず、今日は全員に招集をかけてある。行くぞ……」



「了解、兄貴……」




 たまにする暇潰し、生産性の無さそうな人間共の皆殺し。


 どうせ、人なんて他に幾らでも存在しているから数十匹程度狩り尽した所でなんの問題も起こらない。





 下等生物が死んだ所で、命が消えてしまった所で誰も悲しまないのだ。




 他者も、そして自分のすらもその程度の価値しかないと彼は感じていた。



 そう思いながら、MasterMindとBerserkerはその場から動き出した。




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